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Cursed Blood  作者: Shin
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初めての新世界

その日の晩のこと。

「調味料がもうない。貯蔵庫にあると思って放っていたが、まさかのゼロだったぞ」

「速攻手ぶらで戻ってきたと思ったらそういうことね。ごめんなさい、ここ最近どことも繋ぎにくかったから足りてないの。この定域でとれないもの」

「これじゃ満足できる料理は作れん。今日は極薄味で我慢してもらうが、何とかならんのか」

「まあならなくはないけど・・・フィーネ、香辛料が取れる定域で接続が良くなりそうな所はあるかしら?」

「うーん、そんなのあったっけ?・・・あっ、“レイトス”は?前に胡椒買いに行ったとこ!あしたにはよくなると思うよ?」

「そう、それは良かったわ。じゃあ明日そこに調味料揃えに行きましょうか」

「そんなコンビニ感覚で行けるもんなのか?一応違う世界なんだろう?」

「コンビニは言い過ぎよ。ただ、接続状況さえよければ割と簡単なのは本当よ。私達みたいにかなり小さい定域なら、の話だけどね。まあ明日になったら行くから、そのつもりでいて。フィーネ、ちゃんと明日の準備をして寝るのよ?毎回寝坊するんだから」

「うん!明日はちゃんとおきる!」

「とりあえず飯は簡単なものを作ってくる」

「お願いするわ」



 さて翌日。

「フィーネ起きなさい!今日は出かけるって昨日言ったでしょう!」

 遠くで聞こえるコーディリアの声。

「~~~~…」

そして死にかけのフィーネの声。は聞こえない。

・・・朝から煩い。

「・・・ごめんなさい、騒がしくしちゃって」

「全くだ。まあその様子だともう一戦というところか?」

 部屋から連行されてきたフィーネは、器用にも歩きながら寝ている。どんだけ朝弱いんだよ。

「あはは・・・。まあこちらの準備が終わったら声をかけるから、それまで準備ができたら休んでて頂戴」

「わかった。思う存分暴れるといい」

「他人事だと思って・・・。もう、フィーネ!!」

「ふぁいっっ?!」

 うん、自室で休むか。



「・・・準備は整ったわ」

「ようやく整ったか」

 睨むんじゃない。

「フィーネ、繋いで」

「うん!」

 門の前に移動してフィーネが手を門にかざすと例の巨大な門が開いた。

「この先に行けばレイトスよ。ジャンプは二回目だから大丈夫ね?」

 強制ジャンプを一回というならな・

「じゃあ行きましょうか」



―大草原。清々しいまでの大草原。

 ・・・以上。

「何もないじゃねえか」

「人ごみのど真ん中にあんな門が突然開いたら大騒ぎになるでしょう。一応秘密の存在なんだし」

「ここがどこかはわかるのか?」

「端っこのほうだよ。ずっとあの方向にいけば市場にでるよ!」

「フィーネは記憶力が良いわね。ありがとう。いい?フィーネ。今回も自分が吸血鬼だって言ったり牙見せたりしちゃダメ。大人は秘密は隠すものよ。貴方もこのことは黙っておいてね?」

この幼さで大人も何もないだろうに。

「了解。しかし思ったより涼しいな。香辛料が採れるっていうから熱帯のイメージだったんだが」

「比較的安全でもあるのよ。ここの人は気分転換にたまにこの丘に来るらしいわ」

「平和で何よりだ」

「そんなこと思ってなさそうな顔ね」

「どんな顔だよ」

「なんかね、どうでもいいやーって顔してるよ?」

フィーネにまで言われてしまった。まあ実際どうでもいいがな。


そうして歩くこと・・・どれくらいか。

時計が無いからわからん。

「みえたよー!」

「・・・これは、すごいな」

かなりの数の人。店。漂ってくる香ばしい匂い。

「ここなら良いものが買えるでしょう?」

「だろうな。正直楽しみだ」

服装や町並みからして中世の下町といった所か。

「姿形は人なんだな」

「この 定域は一応人中心の定域よ。さっきも言ったけど、魔物も少ないし出るのも人里離れたところだけね」

「さて、目的の香辛料はっと・・・お、あれなんかいいんじゃないか?」

「いいにおいだね!」

白や赤、黒の粉末状のものだ。食欲をそそる匂いも良い。

「そうね。買うものは見つかったから、あとはお金を手に入れる手段を探しましょうか」

・・・は?

「お前今金持ってねえのかよ」

「お前って言わないでよ雇い主に。私達が全ての定域の通貨を持っているわけないでしょう」

「通貨の交換は・・・無理か」

「そ。知らない世界の通貨なんて交換できないでしょ」

「香辛料のために働く日が来るとはな・・・」

「つべこべ言わずに働いてもらうわよ。召使なんだから」

「ねえねえ、お仕事あったよ?」

『用心棒探してます』

「・・・あー、魔法とか隠さなくていいのか?」

「自己強化系なら問題ないわ。というかフィーネは必要ないのよ。あ、貴方は戦えないから雑用ね?」

 俺の扱いひどいな。言ってないけど戦えるよ。言わないけど。

「フィーネがんばる!」

「お前力強いもんな。素手でなんとかなりそうだな」

「いままでそうだったよ?」

 してんのかよ。皮肉のつもりだったんだが。

「まとめ買いするから、しばらく滞在して宿泊代を稼ぎながら香辛料のお金を貯めるつもりよ」

「了解しましたよっと。なら次は宿探しだな」

「それは私に任せて頂戴。二人は早速今日の分を働いてきてもらっていいかしら?」

「わかった!いってくるね、リア!」

「ええ、頑張ってらっしゃい。それとフィーネ」

「な、なにかな?」

「牙をしまいなさい。さっきからこっそり吸おうとしてたのばれてないと思ってる?」

「吸わせてよう・・・」

「・・・血を吸わなくてもその人はいなくならないわ。だから我慢して頂戴ね」

「・・・うん」

 あ、これ面倒なやつだ。ノータッチでいこう。

「じゃああの広場の像の前で、日が赤くなったら集合ね」

「宿探し頼んだぞ」

「任せなさいって」



「よっ、兄ちゃんが申し込んでくれた奴だな!兄妹で働くたぁ良いこった、嬢ちゃん、兄ちゃんの活躍をしっかり見とけよ!」

 さて、用心棒(荷物運びの護衛)に申し込んだわけだが。

「ちがうよ!戦うのはフィーネだよ!お兄ちゃんが運ぶのを手伝うの!」

「はっはっは!いくら何でも嬢ちゃんにゃ早すぎるぜ!」

「あー、それ本当だ。そいつの言う通りにしとけ。あと妹じゃない」

「んなわけあるかよ?なら嬢ちゃん、俺と腕相撲して勝ったら仕事を任せてやらあ!」

「親方、女の子相手に本気出さないでくださいよー?」

「するわけねえだろ?」

「・・・フィーネ、腕は折るなよ?」

「わかった、きをつけるね!」

「それじゃあいきますぜ。・・・はじめっ!」

バキィィッッ!!

「え?」

「あっ」

「お、親方!?大丈夫ですかい!?」

「つ、机ごと・・・?」

「えっと、ごめんね、お兄ちゃん、もしかしてフィーネやっちゃった?」

「いやまあ、腕は折ってないけどさ・・・」

 台にしていた木の机が木端微塵になっていた。

「えと、これでいいよな。それじゃ仕事はもらっていくぞ。この紙だよな?」

「あ、ああ・・・」

「フィーネ、行くぞ」

「うん」

 呆然とする親方さんを残し、指定場所へと向かった。



「簡単だったね!」

「まあ何もなかったからな」

 ひたすら荷物運びしただけだった。  

「こんだけあれば今日一日は泊まれるだろ」

 近道して集合場所へ向かおうと路地裏に入った時。

「仕事帰りかぁ?お二人さんよお?」


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