朝と萌芽
「ねむ…」
差し込む朝日で目を覚ました。
朝日というにはやや高過ぎる気がしなくもないが。
作戦会議の後、仮眠をとることにしたものの少々寝過ぎてしまったようだ。
前日早く寝たフィーネが腹を空かせているはず、と未だ眠っている身体を起こす。
習慣化した召使いとしての仕事の中で、最も優先度が高いのが飯作り。
食事は大切だ。
「ふぁ、おにぃひゃん、おふぁひょう!」
「食ってから話せ」
なんか前見たことあるな。
今日はサンドウィッチか。
ってことは、と思い奥を見ると。
「おはよう。よく眠れたようで何よりだわ」
予想通りリアがいた。
フィーネの飯は彼女が作ったらしい。
相変わらず早起きだな。
「仕事してもらってすまんな。寝過ごした」
「いいのよ、いつもしてもらってるし」
「助かる。リアは食ったのか?」
「?!」
何気なく放った言葉だったが、そこは流石年頃の少女といったところか、見逃せなかったようだ。
フィーネは律儀にも急いで咀嚼し飲み込むと、勢いそのままに言った。
「お兄ちゃん今リアのことリアって言った!何で?!何があったの?!もしかして昨日の?!」
呼び名くらいで…とも思うが多分名前を1番重く考えているのは自分なので言わない。
リアを見ると、「私は知らないわ。自力でなんとかして頂戴」と言われた。
目が言っていた。
実際、返答することなくさっさと調理場に引っ込んでしまった。
面倒事を押し付けられたようだ。
「まあちょっとは仲良くなったってことだ」
「んふふ~。お兄ちゃん照れなくてもいいのに。リア可愛いもんね?」
何が言いたい。
いや伝わるけどなら、
フィーネは珍しくニマニマとこちらを覗き込む。
そこらへんリアと似てしまっているのだろうか。
当の本人は逃げたままだが。
「ちっ、何もねぇって。そういうつもりは全く無い。ほら早く食え。作戦伝えるから」
「仕方ないからそういうことにしておいてあげるね!」
にやけ顔のまま、またパンを頬張り始めた。
一体どこからそんな知識を得ているのやら。
眉間に皺を寄せているとリアが料理片手に戻ってきた。
「はい、朝昼ごはん。どこかの定域ではブランチって言う見たいね」
「ん」
料理を受け取る。
ブランチ、かつての定域での言葉だったか。
フィーネと同じサンドウィッチを手に取りながら、席に着くリアに声を掛ける。
「取り敢えずは防衛装置のチェックってことでいいんだな?」
リアの前に同じものがある当たり、まだ食べてなかったのだろう。
手をサンドウィッチに伸ばしながら答える。
「そうね。いつ来るか分からないとはいえ、こちらが起きている時間、つまりここが昼間のときには来ないと思うわ。その間に終わらせてしまいましょう」
事情を知らないフィーネは頭上にクエスチョンマークを浮かべている。
元々そのつもりだったので、ついでに説明を始める。
「もうすぐ管理局がここに攻めてくると思う。そのための防衛手段の確認ってことだ。フィーネも一緒に戦う必要がある。ちゃんと伝える作戦を覚えておけよ」
フィーネはびっくりした後、心底嫌そうな顔をした。
命のかかった戦闘が好きではないのは分かっていたが、流石に戦力1/3は痛い。
できるだけ安全な所に配置ところだが、果たしてそんな所はあるのか。
「ともかく、今日の昼間はチェックに付き合え。何が何処にあるのかくらいは把握しとけ」
「はぁい」
仕方ないと分かっているのか、渋々頷いた。
仕掛けが多い分、チェックだけでも長引きそうだ。