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Cursed Blood  作者: Shin
14/21

コーディリアアフター

「ところで」

先の一件が落ち着いた頃。

夜ではあったが、フィーネ以外は眠れずにコーヒーを飲んでいた。

「さっきずっとお前お前って呼んでたけど、ちゃんと呼んでくれないかしら?」

どうやら上から言われるのが嫌らしい。

「コーディリア、なんて長いんだよ。またお嬢様、とでも呼ぼうか?」

「やめて気持ち悪い。…私の事はリア、でいいわ」

へえ。

彼女なりの感謝、ということなのだろうか。

ちっとも格下からの呼び名ではない、なんてことは無粋なので黙っておく。

「有難く、そう呼ばせてもらおう、リア」

「ええ、それでいいわ」

そう言うと、満足そうにコーヒーを啜る。

「で、貴方の名前、いい加減教えてくれないかしら?」

まあそうなるよな。

名前は言えないとはぐらかしてきたが、今伝えないのは折角の信頼に傷がつく。

「と言っても、仕方ないから、と教える訳にはいかないってのが事実なんだよ。だから、―――仮の名、でどうだ?」

これにもリスクはあるが。

「名前を言えないのには事情がある。そして仮の名であっても基本使わないで欲しい」

「どういうこと?たかが名前でしょう?」

言霊使いにとっての"名前"がどれ程重要か。

名付ける、というだけで支配・被支配の対象となる。

それを知っておけ、というのは無理な話だが。

でも、それを軽々しく伝えていいものか。

思案していると、リアの不満そうな顔が目に入った。

―――そしてそれが、意外な程に嫌だった。

少し彼女に入れ込みすぎかもしれない。

そう思う時には、もう口を開いていた。

「言霊使いの名前ってのは重い意味がある。それは本人への強制力になりうるものだ。名付けられたものであっても同じ。だから教えなかったんだ。まだ信頼してない相手に、いざという時に強制されるのはごめんだからな」

恐らくある程度は理解出来たであろう、リアは少し翳った声で言う。

「強制力…。仮の名でもやめた方が良いかしら?」

俯く顔が少し寂しげに見える。

見えるだけかもしれないが。

「影響はあるが、わかった上で使ってくれれば問題無い。外では控えて欲しいがな」

「本当?それは良かった。じゃあ名前を考えないと。ふふ、同じくらいの年の人に名付けるなんて変な感じね」

笑いながら、リアはあれこれ思案を始めた。

まあリアのことだ、悪用するような真似はないだろう。

敵対したらとか考えても仕方ない。

これで良い、そう理性に言い聞かせる。

今を乗り切るのには必要なことだ。

「じゃあ、エリクなんてどうかしら?」

頭を整理していると、パッと閃いたようにリアが話す。

「エリク…まあいいんじゃないか。呼びやすくて」

「良かった!これで決まりね!これからもよろしくね、エリク?」

花でも舞ってそうな笑顔だな。

お互い打ち明けた途端これだ。

本当はかなり甘えたがりなのだろう。

今まではその相手がいなかっただけで。

「ああ、宜しく。まずはこの戦局を乗り越えてから、だな」

夜も夜だが、眠気はあまりない。

朝日に迎えられるまで、作戦会議は続いたのだった。

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