第一章1 無色の青春
「あなたの青春は何色だろうか。」
この窓の外に広がる空のような文字通り青色の青春だろうか、または、校庭で汗を流す爽やかなオレンジ、それとも、燃えるような恋愛の赤色だろうか。
俺はそんな青春の物語の主人公ではないし、なりたくもない。
俺――夏秋冬真白の青春は、何も染めず、何も染められない無色がいい。
ただガラス玉のように無機質な位置から、他人の青春を覗く傍観者でありたい。
そう心のなかで嘯きながら、親指と人差し指を組み合わせ、小さな四角い枠を作っていた。
現在、その中心に収まっているのは、教壇で教科書を開くクラス委員長、三角千春だ。
「……『いづれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひたまひけるなかに』……」
教師に指名され、『若紫』の一節を朗読する彼女の声は、一点の濁りもない。
知的な眼鏡から覗く凛とした瞳。白い肌に艶やかな黒髪。
彼女のまるで聖女のような純白は、この熱病のような青春の色を中和してくれる。これは恋なんていう低俗なものではない。ただ、彼女という完成された「純白」を、遠くから静かに眺めていたいだけなのだ。
ふと、隣の席からの視線を感じ、俺は慌てて即席で作った指のファインダーを崩した。
一ヶ月前に転校してきた、春ヶ原沙紀。
彼女は俺の動作を、月明かりが照らす夜桜のような毒を孕んだ「紫色」の瞳で見つめていた。
ドクン、と嫌な音で心臓が跳ねる。




