8 女騎士レオナ
俺たちは溶岩湖から中央に続く足場へと向かった。
ん? あの女騎士、見覚えがあるぞ――。
「レオナだ!」
モンテマに登場するキャラクターで、熱血脳筋の美少女騎士である。
ゲーム本編では騎士団のかたわら、冒険者もやっていたから、今回ここにいるのは依頼か何かなんだろう。
「ルシア、あのリザードマンたちを蹴散らしてくれ」
ここは範囲攻撃を持つ彼女に一気にやってもらおう。
「そこにいる冒険者たち! できるだけ離れてくれ! でかいのがいくぞ!」
と、レオナたちに警告する。
「……!?」
驚いたようにこちらを振り返った彼女たちは、すぐにうなずいて後退した。
「いけ、ルシア」
「了解だ――!」
ごうっ!
ルシアがドラゴンブレスを放つ。
一撃。
それで事足りた。
神獣のブレスは数十の【ラヴァリザード】をまとめて消し去ったのだった。
「す……すごい……」
レオナたちは、あんぐりと口を開けて俺たちを見ている。
俺はルシアとフィーネを伴い、彼らのいる足場までやって来た。
「大丈夫か?」
声をかけると、レオナはハッと我に返った。
「え、ええ……助かったわ! 君たちは?」
彼女は明るく笑った。
ゲーム同様に快活で姉御肌な雰囲気だ。
「俺はアルク。こっちはルシアとフィーネ。ただのEランク冒険者さ」
俺がそう言うと、レオナは目を丸くした。
「Eランクですって!? 【ラヴァリザード】数十体を一瞬で倒すようなパーティなのに――」
「ふふん」
ルシアがドヤ顔になった。
「私の見せ場がなかった……」
フィーネがぽつりとつぶやいた。
「見せ場がなかった」
なんで、わざわざ俺を見てもう一回言うんだ。
「次はお前にも活躍してもらうよ、フィーネ」
「ならよし」
あ、機嫌直った。
けっこう分かりやすいな、フィーネも。
「とにかく恩に着るわ。あたしは王立騎士団所属のレオナよ。臨時で冒険者もやっていて、彼らはそのパーティメンバーなの」
メンバーたちも口々に礼を言った。
「アルク殿、ルシア殿、フィーネ殿。本当に命拾いをした。ありがとう」
と、レオナも深々と礼をする。
「俺たち、このダンジョンを攻略に来たんだ」
「へえ、じゃあ一緒に行かない?」
と、レオナ。
「もちろん、報酬は働きに応じて、ということで」
「ああ、人数が多い方が安心だしな。お前たちもそれでいいか?」
と、ルシア、フィーネに呼びかける。
「我は構わんぞ」
「主の決めたことなら」
二人は快諾してくれた。
こうして、俺たちはレオナたちパーティと合流し、【炎熱の洞窟】の最深部を目指すことになった。
レオナは道中、やたらと俺に話しかけてきた。
「アルクくんはテイマーなのね。じゃあ、二人はモンスターが【人化】した存在ってこと……?」
「まあ、そんな感じで」
「へえ……【人化】を使えるのは、かなり高レベルのモンスターだけだというけど」
レオナがチラリと二人を見た。
「そんなハイレベルなモンスターを二人も【テイム】しているなんて、すごいじゃない」
「その、俺のスキルはちょっと特殊で……なんでも【テイム】できるわけじゃないんだけど」
俺は苦笑交じりに説明する。
「あの二人は……そう、相性がよかったっていうか。そんな感じだ」
「相性……へえ」
レオナはさらに食いついてくる。
「ねえ、君は人間の仲間はいないの? もしいないなら、あたしが冒険者をやるときに一緒に組まない? 君みたいな強い人がいると心強いわ」
な、なんか、顔近いんだが――。
もともと距離感が近いタイプなのか、それとも俺にそれだけ興味があるのか。
こんな美人にグイグイ来られると、俺としては対応に困ってしまう。
前世では非モテだったから、こういうときどういう顔をすればいいのか、分からないんだよな――。
「主、その女、馴れ馴れしいぞ」
ルシアが俺の袖を引っ張りながら不機嫌そうな顔をした。
「主の隣は仲間である私が立つべきだろう。その女は別パーティの余所者じゃないか」
フィーネもちょっと不満気だ。
なんだなんだ?
「まさか二人ともヤキモチか?」
「は、はあ!?」
「な、なぜ私が――」
ルシアは露骨にうろたえ、フィーネは頬を赤く染めてそっぽを向いた。
それ、あからさまなヤキモチの反応に見えるんだが――。
「ふふっ」
レオナがおかしそうに噴き出した。
「ふんっ」
それを見て、ルシアとフィーネはますます不機嫌そうな顔をする。
――そんなやり取りをしつつ、俺たちは道中で何度かモンスターを撃退しつつ、洞窟の最深部にたどり着いた。
これまでの通路よりもずっと広いドーム状の空間だ。
そして、その中央には――。
グルオオオオオオオオオッ!
黒い鱗を備えた巨大なドラゴンが体を伏せて身構えている。
全長は50メートルを超え、すさまじい威圧感はこれまでのモンスターとは次元が違う。
モンテマの序盤のボス敵、ノワールドラゴンだ!
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