表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/25

7 高難度ダンジョンに挑む

 ルシアに続き、フィーネもテイムした俺はギルドでちょっとした有名人になっていた。

「おい、見たか? あれが噂のテイマーだぜ」

「あんな美少女二人を連れやがって……」

「うらやましい……!」

「しかもFランクのくせに、とんでもない実力だってよ」

「おいおい、女も実力も兼ね備えてるってか? まったく、やってらんねー」

 ギルド内ではそんなヒソヒソ話が飛び交っている。


 羨望と嫉妬、やっかみ、そして敬意……様々な声にはポジティブなものもあれば、ネガティブなものもある。

 まあ、いちいち気にしても仕方がない。

 当面、俺の目標は生活基盤を作ること。

 俺自身と二人の神獣が幸せに暮らしていけるように。


「おはようございます、アルクさん」

 カウンターに行くと、セリアさんが挨拶してきた。

 なんとなく、俺は引き寄せられるように彼女のカウンターに移動する。

 別に受付嬢は担当制ではないので、どこのカウンターに行くのも自由なんだけど、セリアさんの視線から『私のところに来て』という圧を感じたのだ。

 そのセリアさんは、前にも増してキラキラした目で俺を見てくる。


「脈ありだな、主……」

 ルシアが耳打ちした。

「脈あり? そうかなぁ……」

「明らかにこの女の目は主に恋するそれではないか!」

 と、ルシアの声が大きくなる。

「えっ、恋する……?」

 セリアさんは頬をピンク色に染め、俺をチラチラと見た。

 えっ、本当に脈ありなのか……?

 セリアさん、美人だからなぁ。

 胸も大きいし。


「今いやらしい目をしたぞ、主」

 フィーネにツッコまれてしまった。

「主よ、いつまでもニヤニヤするな。早く次の依頼を選ぶのだ」

 ルシアはルシアで俺の服の袖を引っ張り、急かしてくる。

「ええと、じゃあお勧めの依頼はありますか?」

「その前に――一つ説明をさせてください」

 と、セリアさん。

「説明?」


「アルクさんとルシアさんの一週間の実績が目覚ましく、早くもランクアップが決まりました」

「えっ、冒険者ランクが上がるんですか?」

「お二人ともFからEに上がります。状況次第では、Dに上がるのもそれほど遠くないと思いますよ」

 言って、セリアさんはにっこり笑った。


「お二人とも昇格おめでとうございます」

「ありがとうございます!」

 言ってから、俺はハッと気づいた。

「あ、そうだ。彼女も冒険者登録したいんですけど――」

 フィーネに関しては、冒険者ギルドに来たこと自体が初めてだ。


「私も冒険者になるのか?」

「ああ、パーティの一員だろ」

 俺は彼女に説明した。

「主がなれと言うならなろう」

「じゃあ、なってくれ。一緒に冒険しよう」

 俺はにっこり笑った。

「一緒に――」

 フィーネがつぶやく。

「了解した」

 その口元にかすかな笑みが浮かんだ。




 フィーネは今日登録したばかりなのでFランクだ。

「三人になったし、俺とルシアはランクが上がったし、そろそろ本格的なダンジョンにも挑戦していきたいんです」

 俺はあらためてセリアさんに相談していた。

 神獣が二人もいれば、多少難易度が高くても問題ないだろう。


「ふむ、冒険者といえば、ダンジョン! 腕が鳴るな!」

 ルシアはやる気満々だ。

「主の命令とあらば」

 フィーネは対照的にクールな表情だった。

「そうですね……Eランク二人にFランクとはいえ、アルクさんたちのクエストの様子を見ていると、すでに上位の冒険者クラスの力があると思います。現状のランクで難度がある程度高いダンジョンをお望みであれば――たとえば、これはどうでしょう?」

 セリアさんが差し出したのは『炎熱の洞窟』の攻略依頼書だった。


「あー! 『炎熱の洞窟』か!」

 俺は思わず声を上げた。

 名前の通り、溶岩地帯が広がるダンジョンで、生半可な冒険者は返り討ちに遭うことから『初心者殺し』なんて呼ばれているらしい。

 モンテマでは、序盤の難所として有名なダンジョンだ。

「よし、目的地は決まった! 『炎熱洞窟』だ!」

 即決だった。




 俺たちは準備を整え、炎熱の洞窟へと向かった。

 岩肌は赤く変色し、洞窟の入り口から強烈な熱気が漂ってくる。

 うん、ゲームのビジュアル通りだ。

「それにしても……暑い」

 ゲームじゃ、そういう熱までは体感できないからな。

 こうしてダンジョンの前にいるだけで汗だくになる。

「私の力で涼むか?」

 言ってフィーネは【氷雪】のスキルを発動した。


「おお、涼しい!」

 俺は歓喜の声を上げた。

 まるでクーラーのようだ。

「ふん、この程度の暑さで。主はたるんでいるのではないか?」

 ルシアは平気な顔をしていた。

 まあ、お前ってドラゴンだもんな。

 フィーネに関しては【氷雪】の力を持っているから、そもそも熱への耐性があるんだろうか?


 ともあれ、俺たちはダンジョン内に進んだ。

 洞窟内部は、まさに灼熱地獄だった。

 壁からは常に熱波が噴き出し、あちこちにマグマだまりがあって、ごぽごぽ……と怖い水音を立てていた。

「とにかく進もう」

 俺は二人に言って、どんどん先へ進んでいく。

「主よ、迷いなく進んでいるが……道は合っているのか?」

「適当に進んでない?」

 疑わしそうにたずねるルシアとフィーネ。


「大丈夫だって。ゲーム……いや、えっと事前に調査したところによると、この先にはボス部屋があるはずだ」

 実際はゲーム知識によって道筋はだいたい分かっているんだけど、ゲームのことはまだ内緒だ。

 実際、このことを誰かに明かしていいのか、俺には分からない。

 最悪の場合、俺が転生のことをバラした結果、俺だけじゃなく周囲にまで被害が及ぶような『何か』が訪れるかもしれない――。




 俺たちはさらに進んだ。

 途中【ファイアオーガ】や【マグマゴーレム】といった炎属性の魔物に遭遇したけど、ルシアのブレスとフィーネの爪撃であっという間に蹴散らした。

「やっぱり、二人ともさすがだな」

 並のモンスターと神獣じゃ、勝負にもならない。

 しかも、こっちは二人だ。

 フィーネは足の傷が治ってなくて本調子とはいかないけど、それでも十分に強い。


「当然であろう」

「主の指示通りに動くだけ」

 二人とも頼もしいし、ダンジョン内はだいたいのルートが分かってるし、攻略が楽で助かる。

 と、思ったそのときだった。

「きゃあああああっ!」

 前方から、女の悲鳴が聞こえてきた。

「なんだ!?」

 俺たちは声のした方へ急いだ。

 開けた場所に出ると、そこは広大な溶岩湖が広がるエリアだった。


「あれは――」

 湖の中央に小さな足場があり、そこで数人の冒渉者が追い詰められているのが見えた。

 屈強そうな女騎士に魔法使いや僧侶らしき数人のパーティだ。

 彼女たちは、溶岩湖から現れた巨大なリザードマン――【ラヴァリザード】の群れに囲まれていた。


「くっ……このままでは……!」

 女騎士が必死に剣を振るっているが、多勢に無勢だ。

 仲間たちも魔法などで応戦しているが、じりじり追い詰められている。

 足場は狭く、落ちれば灼熱の溶岩。

 まさに絶体絶命だ――。

「まずいな……!」

「主よ、どうするのだ?」

「助けるぞ」

 ルシアの問いに俺は即答した。

【読んでくださった方へのお願い】

日間ランキングに入るためには初動の★の入り方が非常に重要になります……! そのため、面白かった、続きが読みたい、と感じた方はブックマークや★で応援いただけると嬉しいです……!


ページ下部にある『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』のところにある

☆☆☆☆☆をポチっと押すことで

★★★★★になり評価されます!


未評価の方もお気軽に、ぜひよろしくお願いします~!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチっと押して
★★★★★にしていただけると作者への応援となります!


執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!


▼書籍版2巻がKADOKAWAエンターブレイン様から6/30発売です! 全編書き下ろしとなっておりますので、ぜひ!(画像クリックで公式ページに飛べます)▼



ifc7gdbwfoad8i8e1wlug9akh561_vc1_1d1_1xq_1e3fq.jpg

▼なろう版『死亡ルート確定の悪役貴族』はこちら!▼



▼新作です! こちらもよろしくです~!▼

帝国最強の黒騎士皇子に転生 ~超絶の剣技とチート魔眼で無敵の存在になったので、僕を処刑した祖国を滅ぼします~


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ