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3 最初のクエスト(当然楽勝)

 食事を終えると、俺はルシアを連れて、町の中心部にある立派な建物にやって来た。

 冒険者ギルド。

 この世界の冒険者たちを束ねる国際的な組織。

 各国の主要都市にあるギルドはその支部である。


 建物の中に入ると、大勢の冒険者が行き来していて活気に満ちていた。

 俺たちがいるのは、それほど大きな都市じゃない。

 それでも人の数は多く、この世界においていかに冒険者という職業が隆盛を極めているのかを示していた。

 実際、特別な知識や資格、出自がなくても、冒険者なら身一つでなることができる。

 そして成功すれば一攫千金である。


 だから、この職業を志す人間はものすごく多い。

 とはいえ、当然どんな世界でも『成功する』というのは甘いことじゃない。

 ほとんどの人間は鳴かず飛ばずで、そのうち挫折して業界を去っていく。

 また、危険な仕事であるがゆえに、死亡や再起不能の負傷をして、そのまま引退――というケースも少なくない。

 危険と栄光が表裏一体、光と影を内包した職業……それがこの世界における冒険者である――。


「――以上、アルクの記憶から抜粋、っと」

「何をブツブツ言っているんだ、主?」

 ルシアがキョトンとした顔で俺を見上げた。

「決意を新たにしただけさ」

 俺はニッと笑った。

 厳しい冒険者業界だけど、彼女の力があれば成り上がれる可能性は十分にある。

 あとは、やるだけだ――。

 俺は底辺生活から一獲千金の人生大逆転に向けて、野心を燃やしていた。

 と、


「おいおい、冒険者ギルドに随分と可愛らしいお嬢ちゃんがいるじゃねぇか」

「はははは、お父さんやお母さんとはぐれたのか、ええ?」

 ごろつきのような雰囲気の男たちがニヤニヤ笑って話しかけてくる。

 戦士系の冒険者たちのようだ。

 仕事柄、こういう荒くれものも多いようだ。

「まあ、アウトってほどじゃないな。社会人生活で理不尽なクレームに耐え続けた俺のメンタルを舐めるなよ」

 ニヤリと内心で笑う俺。

 一方のルシアは、


「おのれ、無礼者め――」

「いいよ、ルシア。行こう」

 俺は憤る彼女をなだめ、奴らを無視して受付に行った。

 わざわざ相手にする必要はないし、ギルドに来た早々にトラブルを起こしたくないからな。


「すみません、冒険者登録をお願いします」

 俺はカウンターに行き、用件を話した。

 受付嬢は栗色の髪をポニーテールにした朗らかな美人さんだ。

 制服の胸元が豊かに盛り上がっていて、一瞬見とれてしまった。

「エロ主め」

「い、いや、違う! 違うぞ、俺は名札を見ただけだ!」

 ジト目になったルシアに、俺は慌てて言い訳をする。

 ちなみに名札にはセリアと書かれていた。


「承りました。では、こちらの登録用紙に必要事項の記入をお願いします。登録はどなたが?」

「あ……俺と彼女の二人です」

「こちらの方も?」

 セリアさんが目を丸くする。

 まあ、見た目は完全に幼女だからな、ルシア。

 ただし、

「……なるほど、ただ者ではないのですね。失礼いたしました」

 お、セリアさんにはルシアの実力が分かったのかな。


「ふん、人間にしては中々良い目をしているな。褒めてつかわす」

 ルシアが尊大に言い放った。

「恐れ入ります」

「謙虚な態度もまたよし。気に入ったぞ、お前」

 ルシアはニコニコだ。

 と――、


「おいおいおい! そっちのガキも冒険者だと!」

「ここは子守り部屋じゃねーんだぞ、お前!」

「冒険者舐めてる、君たち? んん?」

 ごろつきたちが絡んできた。

 またか……。

 この世界のテイマーの扱いは、モンテマ以上にひどいらしい。

 俺は拳を握りしめた。

 正直腹が立つが、今は耐えるんだ。

 と、


「……っ!」

 隣でルシアが顔を真っ赤にして震えている。

 こいつもプライドが高いから、馬鹿にされて我慢ならないんだろう。

 俺がそっと頭を撫でてやると、少しだけ落ち着いたようだった。

 セリアさんに向き直り、冒険者登録を続ける。

 で、さっそく依頼を受けることにした。

 俺は最低のFランク冒険者からスタートなので、受けられる依頼は限られている。


 とりあえずセリアさんから勧められた『ゴブリン討伐』のクエストを受けることにした。

 場所はギルド周辺の森。

 ゴブリン自体は最弱クラスの魔物だけど、集団で行動する習性があり、数が集まるとそれなりの脅威になる。

 いくらFランク用の依頼とはいえ、油断は禁物だ。




 依頼書を受け取り、ギルドを出たところで、さっき俺を馬鹿にしたパーティがまたやって来た。

 これで三度目――。

「おい、テイマーの坊主。まさかゴブリン討伐に行く気じゃねえだろうな?」

「……そうだけど?」

「やめとけやめとけ。初心者とガキじゃ返り討ちに遭うだけだぞ?」

「そっちのお嬢ちゃんはゴブリン相手に色々といやらしい目にあっちまうかもよ? ん?」


「!」

 さすがにその一言は、俺の怒りの許容範囲を超えた。

 あるいは俺に対する侮蔑なら耐えられたかもしれない。

 けど、ルシアにまで――。


「これはアウトだろ……!」

 うん、無理だ。

「主、やっていいか?」

 ルシアが俺に言った。

「我はお前のしもべだ。お前の誇りと我の誇り、その二つを守るために戦う許可を」


「ああ、存分にやれ。ただし、殺したり後遺症が残るようなのはナシな」

「ふふ、了解だ。主らしい指示だな」

 ルシアがクスクスと笑う。

 同時に、その小さな体から――信じられないほどのプレッシャーが放たれた!


 ごおおおおおっ!


 ルシアのスキル【竜の威圧】だ。

「っ……!?」

 彼らは目を見開いたまま硬直する。

 威圧はほんの一瞬だけ。

 だが、効果は絶大だった。


 どさっ! どさどさっ!


 剣士パーティの全員が、まるで糸の切れた人形のようにその場にへたり込んだ。

 腰を抜かし、口から泡を吹いている。

「あわわわ……」

 よほど怖かったのか、真っ青な顔でおびえたように俺たちを見ていた。

「――もう俺たちに絡むなよ?」

 いちおう釘を刺し、俺とルシアはその場に去っていった。

「ひ、ひいいいいいい……」

 背後から、か細い悲鳴が聞こえてきた。




「ここがゴブリンの巣穴だ。穴の中のどこに潜んでいるか分からないから、油断しないようにしよう」

「ん? わざわざ探索する必要などあるまい?」

 ルシアが言った。

「えっ」

「こうすれば終わりだ」


 ごうっ!


 ふたたびルシアの全身から威圧感が放たれる。

 なるほど。

 スキル【竜の威圧】――。

 今度はさっきより出力が大きかったらしく、巣穴の中のゴブリンは精神を破壊され、一瞬で全滅した。

 労せずして依頼達成だ。


「そういえば、俺は【竜の威圧】を受けても平気なんだな」

 俺はルシアにたずねた。

「うむ。この技は我よりある程度下位の存在にしか通用せん。ランクの高い敵には効果がないし、主は我よりも上位存在だから影響は受けない」

「上位存在……」

「お前は我の主なのだぞ。この世界で最上位の存在と言ってもいい」

 ルシアはなぜかドヤ顔で胸を張った。




 その後、俺は即死したゴブリンからドロップアイテム――このゲームでは基本的にモンスターを倒すと魔石など各種アイテムがドロップする――を回収し、ギルドに戻った。


「セリアさん、依頼完了です」

 受付に行って、証拠となる魔石やゴブリンの素材の一部を差し出すと、セリアさんは呆然とした顔になった。

「えっ、ま、まだ一時間も経っていませんが――そ、その、すぐ確認します!」

 と、バックヤードに引っ込んでいく。

 しばらくして戻ってくると、

「確認終わりました。依頼達成、確かに! その……お疲れさまでした」


「明日また来ますので、よさそうな依頼を見繕っておいてください。難易度は高くてもいいので、なるべく実入りがよさそうなものを」

「は、はい……」

 まだ呆然としているセリアさん。

「じゃあ帰るか、ルシア」

「うむ」

 俺とルシアは歩き出した。


「Fランクの初心者が、一時間足らずでゴブリンを全滅させただと……!?」

「どう見ても強そうには見えないが……」

「さっき、Aランクの【豪打猛(ごうだもう)】がそいつらにシメられた、って聞いたぞ」

「あ、あの荒くれの【豪打猛】を……!?」

 どうやら俺たちに因縁をつけてきた連中はAランクパーティだったらしい

 冒険者たちの驚愕の声をBGMに、俺とルシアは悠然とギルドを後にしたのだった――。

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