22 本拠地突入
「――ここが、『黒の爪』の本拠地か」
ジュディスが広げた古い地図。
その一点を指さし、俺は言った。
場所は王都南方に存在する古代遺跡、その地下にあるようだ。
彼女が知らせてくれた貴重な情報だった。
とはいえ、彼女から情報がもれることは『黒の爪』も分かっているはず。
いつまでも、ここを本拠地にはしないだろう。
遠からず、別の本拠地を作って移動するか、あるいは――。
「俺たちを迎え撃つために待ち構えているか……」
「後者だと思う」
と、ジュディス。
「彼らは遺跡の中で『闇の獣』復活の儀式を行うと言っていた。それがいつなのかは分からなかったけど――おそらく、そう遠くないうちに」
「だが、復活に必要な宝具は私たちが守り抜いたんだ。儀式は行えまい」
と、カイル騎士団長。
「それは分からない。他にも手立てがあるのかもしれない。あるいは、宝具があれば復活が早まるけど、なくても儀式自体はできるとか、可能性はいくつか考えられる」
ジュディスが言った。
「どのみち『黒の爪』は壊滅させないといけないんだし、儀式が可能であろうとそうでなかろうと、最速で攻め入るのがいいと思う」
俺は自分の意見を言った。
「うむ。シンプルでよい。我も賛成だ」
ルシアがいつも通り尊大にうなずいた。
「異議なし」
「主に従いますわ」
「あたしも~」
フィーネ、リリナ、ライムも賛成してくれた。
「よし、決まりだな」
俺は立ち上がった。
「作戦はシンプルだ。『黒の爪』の本拠地を強襲し、組織を壊滅させる。仮に『闇の獣』復活の儀式が行われていた場合は、これを阻止する」
一気に決戦――という感じだ。
「今まで戦った感じだと、敵はそれぞれ『闇の獣』から力の一部を与えられているみたいだ。簡単な相手じゃないぞ」
「ふん、我ら神獣にとって敵ではないわ」
ルシアがいつも通りの尊大な態度で言い放った。
「私は指示通りに動くだけ」
クールに告げるフィーネ。
「わたくしが主とみなさんをお守りしますわ」
おっとり口調で微笑むリリナ。
「あたしも~。暴れちゃうよ♪」
快活に叫ぶライム。
「……かつて所属した組織だが、迷いはない。私は過去を断ち切るために戦う」
ジュディスは決意を秘めているようだ。
それぞれがそれぞれの思いを胸に――。
俺たちは『黒の爪』との決戦に赴く。
三日後、俺たちは『黒の爪』の本拠地とおぼしき古代遺跡の前に到着した。
遺跡の入り口は、巨大な一枚岩で塞がれていた。
ただ、ジュディスが隠し通路を知っていたおかげで、俺たちは容易に内部へ侵入することができた。
遺跡の中は、迷宮のように入り組んでいる。
が、これもジュディスの案内で順調に進む――。
「気を付けて。私の裏切りを察知した教団は、新たな罠を設けているかもしれない」
先頭を進むジュディスが、そう警告した。
「ここから先の道が、今までとは雰囲気が違う――」
その言葉通り、先へ進むといきなり通路の左右から毒矢が放たれた。
「これは――新規の罠!」
ジュディスが、そしてフィーネが高速で動き、矢を叩き落とす。
と――間髪入れず、今度は床が抜け落ちた。
「みなさん、わたくしの背に乗ってくださいませ」
リリナが瞬時に【フェニックス】に変身し、俺たちを背中に乗せて落下を防ぐ。
本来の【フェニックス】は体長数十メートルクラスだけど、今回は通路に合わせて小さめのサイズに変身してくれたらしい。
そんな器用な真似もできるんだ、リリナ――。
と、さらに進むと、今度はゴーレムやキメラの大群が襲い掛かってきた。
「これも以前とは違う――」
と、ジュディス。
「ふん、倒すまでだ」
ルシアが前に出て【火炎ブレス】を放った。
ごうっ!
さすがにその威力は激烈で、モンスターの大群が一瞬で消し炭になる。
いくら新規で罠やモンスターを配置したところで、しょせん神獣たちの敵じゃない。
俺たちは次々と行く手を塞ぐ罠とモンスターを突破していき、ついに最深部にたどり着いた。
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