21 覚醒の時へ
「なんだ、これ……!?」
分かる……分かるぞ。
俺の中に新たな力が芽生えるのが。
俺のスキルには……まだ先がある。
まるで、いやきっとこれは――。
『闇の獣』と戦うために、俺の中で目覚めた新たな力……!
そいつが今、『形』になろうとしている。
「ルシア、リリナ、ライム――俺に力を貸してくれ!」
俺は三人の神獣美少女たちに叫んだ。
「【神獣能力借用】!」
このスキルによって、俺は神獣の能力の一部を借り受け、自分の力として使うことができる。
まずは、ルシアの炎だ。
ごうっ!
俺が手をかざすと、火炎の渦が飛び出して黒装束たちを吹っ飛ばす。
と言っても、殺してしまうほどの威力じゃない。
気絶させる程度だ。
基本的にこのスキルで俺が使用できる神獣の力は、オリジナルのそれより弱体化している。
ただ、この場合はそれが功を奏するわけだ。
殺さない程度の威力で相手を制圧できる――。
さらに俺はライムの水流で残りの黒装束たちを打ち倒す。
ほどなくして、全員が地面に倒れた。
「こうもあっさりと――」
カインは驚いている。
「殺さずに済んだし、後は捕縛して口を割らせよう」
俺はカインに言った。
「……ああ、生け捕りにできれば、それが最上だ。よくやってくれた」
カインがうなずく。
それから、ふっと表情をやわらげ、
「見事な手並みだった」
短くそう告げた。
おっ、ちょっとは俺のことを認めてくれたのかな?
戦闘後――。
俺たちは謁見の間に戻り、捕らえた『黒の爪』の戦闘員たちからの尋問の結果について、王や宰相を交えて話していた。
ちなみに、先行したフィーネとジュディスは、彼らを宝物庫に入れないように奮闘してくれた。
ルシアたちと違い、二人はある程度手加減の効くバトルスタイルなので、全員を昏倒させ、無力化していた。
さすがだ。
おかげで彼らが狙っていた宝物庫のある宝具について奪われずに済んだのだ。
で、その宝具についてなんだけど――、
「自白魔法でなんとか情報を得られた」
カインが言った。
自白剤ならぬそんな魔法があるのか。
これはゲーム内には出てこなかったな。
「奴らの目的は、宝物庫にあった古代の宝具――『混沌の宝珠』を使い、古代に封印された存在を呼び覚ますことだという」
「古代に封印された存在……?」
「『闇の獣』だな」
ルシアが渋い顔をした。
「えっ、封印されてるのか?」
「そうだ。連中が『闇の獣』の力を使っているのは、おそらく封印状態からでも自らの力の一部を分け与える程度はできる、ということだろう」
「『闇の獣』は原初の獣とも呼ばれる、すべてを『無』に帰す存在です」
俺が補足説明した。
「うむ、この間の話にあった存在だな」
王がうなずく。
「その完全復活を『黒の爪』とやらが目論んでいる――」
「絶対に阻止しなければなりません」
俺は力を込めて言った。
「無論だ。宝物庫については今の三倍――いや五倍の警備を当て、さらに騎士団と魔法師団の精鋭を常駐させて、これの防備に当たるとしよう」
王は即断した。
「とはいえ、守ってばかりでは解決いたしませぬ」
カインが進言した。
「防備を厚くするのはもちろんですが、こちらからの攻勢も検討していただきたい。お命じいただけるなら、私が騎士団の部隊を率いて『黒の爪』と申す輩を殲滅してまいりましょう」
「まあ、待て。それは当然私も考えておる」
王がカインをなだめた。
「お前は昔から血気に逸りすぎだ。あのころから変わらぬな」
「あなたの聡明さも、あのころから変わりませぬ」
カインが微笑んだ。
俺たちには見せない優しい笑み。
ん? この二人って、もしかして幼なじみなのかな?
「あなたは知と仁でもって国を治め、私はそんなあなたの剣となり、この国の武として敵を討つ――昔からそうでしょう?」
「ならば、私はその知でもって判断しよう」
王はニヤリと笑った。
「この頼もしき神獣テイマーとともに、悪逆の徒『黒の爪』を討て」
「御意!」
カインが恭しく一礼した。
王は俺に視線を向け、
「カインとともに行ってくれるか?」
「もちろんです」
俺はうなずいた。
「頼りにしているぞ、アルク殿」
カインが俺を真剣なまなざしで見つめる。
「貴殿の手並み、見事であった。また力を貸してくれ」
「はい、ともに敵を打倒しましょう」
この国を――世界を守るために。
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