17 自由を取り戻せ
「失敗したものは始末する。組織のやり方だ」
「なんで、そんな他人事みたいに言うんだよ!」
「私は……いえ、組織の暗殺者は全員が『闇の獣』による呪術を施され、命令通りに動くしかない。始末されて死ぬか、呪術で殺されるか……私たちには最初から選択肢なんてない」
呪術――。
じゃあ、洗脳とか以前にジュディスには暗殺しか選ぶ道はなかった、っていうのか?
そんなことを聞いたら、なおさら彼女を殺させるわけにはいかない。
「リリナ、彼女には呪術がかけられているらしい。解除できないか?」
「お任せくださいませ、主」
リリナが進み出る。
「【祝福の風】」
ばさりと背中の翼をはばたかせると、爽やかな風が巻き起こった。
その風に触れたとたん、
ポウッ……。
ジュディスの額に黒い紋章が浮かび、さらにそれが霧散する。
「えっ……?」
彼女は驚いた顔だ。
「呪術が、一瞬で溶けた――」
おお、超有能ヒーラーじゃないか、リリナ!
さすがは神獣だ。
「癒しや回復なら、わたくしにお任せください、主」
リリナが微笑んだ。
「さあ、これでお前は組織におびえる必要はなくなったんだ。暗殺を強制されることもないだろう」
「……でも、私が多くの者を殺めてきたことは事実」
「それは操られ、強制されていたからだ」
俺はこんこんと彼女を諭した。
「それでも心が痛むなら――組織を打倒するために戦うことで、償えばいい」
「組織と、戦う……」
ジュディスがつぶやく。
「……分かった。では、これからはあなたに従う。我が主――」
主……?
「私を救ってくれたのだから、私はあなたに報いたい。あなたのしもべとして働こう」
ジュディスはそう言って、はにかんだように微笑んだ。
暗殺者としての冷徹さと可憐な笑顔のギャップ――これは反則級の可愛さだ。
「じゃあ、よろしくな、ジュディス」
俺はにっこりと笑った。
「さっそくだけど、『黒の爪』について知ってることを教えてくれ」
「ああ。すべてを話そう」
――こうして、俺は新たな仲間と敵に関する重要な情報を手に入れた。
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