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15 黒の爪

「主よ、最近妙な噂を耳にするのだが」

 その日、冒険者の仕事を終えて、定宿に戻る途中、ルシアが言った。

「妙な噂?」

「各地で強力なモンスター……特に神獣やそれに準ずる存在が狙われているらしい」

「それって――」

 フィーネやリリナ、ライムのことを思い返す。

「他にも狙われている神獣たちが……」

「ここまで来れば、間違いなく意図的なものだろう。敵は――『闇の獣』は我ら神獣を狙い、本格的な攻撃に移りつつある」

「『闇の獣』って一体だけなのかな……」

 つぶやく俺にフィーネが言った。

「私を襲ってきたのは一体だった」

「わたくしもそうですわ。一体だけです……ただ、その一体がとても強かった」

 とリリナも言った。

「やっぱり、強いんだな……敵は」

 普通の相手なら、神獣四人をそろえていれば無敵だけれど、『闇の獣』に関しては気持ちを引き締めてかからなければならない。

 とはいえ、フィーネたちはいずれも一対一で敗れている。

「四人がそろえば大丈夫だよ。それに俺がいれば、みんなにバフ効果がつく」

 そう、俺の神獣テイマーとしての力――発動条件とか効果がはっきりとしないものの、俺が居ることでみんながパワーアップすることは確かなようだ。

 それらの力をすべて束ね、『闇の獣』を討つ――。

「あたしを襲った連中は、少し違うの」

 ライムが言った。

「敵はモンスターだけじゃなかった。それを操る人間たちの集団がいたのよ」

「人間たちの集団……?」

 例えば秘密結社みたいなもの……だろうか?

「『黒の爪』。奴らはそう名乗ってた」

 ライムが告げた。

「太古の昔に世界を滅ぼそうとした『破壊獣』を崇拝する邪悪な教団――彼らの操る『闇の獣』が、あたしに状態異常の呪いをかけた……」

 破壊獣……それに黒の爪……か。

 モンテマには出てこなかった名前だ。

「我らも狙われるかもしれんな。我はまあ大丈夫だとして、主や他の三人は気を付けておけよ」

「君は『闇の獣』と直接戦ってないから分からないだろうけど、強いよ? 君も一対一なら勝てない」

「は、はあ? 我が負けるわけないであろう?」

「いえ、無理だと思いますわ」

「あたしもそう思う~」

「ち、ちょっと待て、みんなそろって! 我は遺憾であるぞ! 発言の撤回を要求する!」

 叫ぶルシア。

 けど、その様子は四人でじゃれあっているみたいで微笑ましい。

 ――と、そのときだった。

「見つけたぞ、神獣テイマー」

 部屋の影がぐにゃりと歪んだ。

「!?」

 その影の中から湧き出るように、一つのシルエットが出現した。

 体にぴったりフィットする黒装束。

 顔の下半分は黒い布で覆われていて、瞳は鋭い光を宿している。

 年齢は十七、八歳くらいだろうか。

 顔半分が覆われていても分かる端正な顔立ち――暗い雰囲気の美少女だ。

 こいつ……暗殺者か……!?

 雰囲気からして、そんな感じだ。

 俺は反射的に身構えた。

 とはいえ、相手がプロなら――戦闘の素人の俺じゃ一たまりもないだろう。

「みんな、奴が妙な動きをしたらすぐに抑えるんだ」

「言われずとも」

「当然」

「主をお守りしますわ」

「あたしにお任せ~」

 四人の神獣から返ってくる言葉は頼もしい。

 そうだ、こっちには神獣たちがいるんだ。

 暗殺者の一人や二人――。

「私は『黒の爪』よりの使者。ジュディス」

 彼女――ジュディスは感情のこもらない声で名乗った。

「アルク、あなたの神獣たちと共に、我らが組織に来てもらう」

「……断ると言ったら?」

「力ずくで連れていく」

 言うなりジュディスの姿が消えた。

「速い――!」

 俺には視認することさえできない超スピード。

 まさに神速だ。

 だけど、神速ならこっちにもいる!

「フィーネ!」

「主はやらせない!」

 ぎいんっ!

 鈍い金属音が響き、大きく跳び下がるジュディスが見えた。

 そして俺の前方にはいつの間にかフィーネが現れている。

 長く伸ばした爪を剣のように構えて。

 どうやら超速で突っこんできたジュディスのナイフの一撃を、フィーネが【爪撃】で防いでくれたらしい。

「助かったよ」

「……彼女はただの人間じゃない」

 フィーネの表情は険しい。

「えっ」

「私とそれほど変わらないほどの速度。たぶん――『闇の獣』の力を付与されてる」

「人間だと思って甘く見ないでね」

 ジュディスはナイフを構えなおした。

「君こそ神獣を甘く見ない方がいい」

 フィーネもまた構えなおす。

 そして、両者同時に――姿が消えた。

 またしても視認不能の神速で動き回っているのか!?

 ぎいんっ、ぎいんっ、ぎいんっ!

 姿が見えないまま、金属音だけが連続して響く。

 俺には何が何だか分からない超高速戦闘が繰り広げられているらしい。

 やがて、

「くっ!?」

 苦鳴を上げたのは、両者だった。

 フィーネは肩を、ジュディスは腕に傷を負い、血を滴らせる。

 あいつ、フィーネの足の負傷が癒えていないとはいえ、彼女とほぼ互角に渡り合うとは――。

「アルクさん、あたしが!」

 ライムが一歩前に出て、手をかざす。

「【瀑布の縛縄】!」

「っ……!?」

 ジュディスの足元から大量の水が噴き出し、瞬時に水のロープと化して彼女に巻き付く――。

「そんなもの!」

 が、ジュディスの姿は一瞬にして消えた。

 また超速移動か!

「【聖なる光】!」

 と、今度はリリナがスキルを発動した。

 その光がルシア、フィーネ、ライムの三人に降り注ぐ。

「おお、これは――」

「力がみなぎる……!」

「これならいけるね~!」

 三人が歓喜の声を上げた。

「ちいっ……」

 さすがにジュディスの表情が引きつる。

「安心しろ、殺しはせん」

 ルシアがニヤリとした。

 ごうっ!

 同時に【竜の威圧】が放たれる。

 ただでさえ圧倒的な威圧で敵をすくませる精神攻撃系のスキルが、リリナの【聖なる光】のブーストを受けているのだ。

「ぐううううっ……」

 ジュディスの顔が青ざめ、その動きが鈍る。

「もらった!」

 フィーネが神速で突進し、ジュディスの手からナイフを叩き落とす。

 スピードが鈍ったジュディスでは、さすがにフィーネの動きに付いていくことはできなかったようだ。

 そして仕上げは――、

「【瀑布の縛縄】!」

 ライムがふたたび水系の捕縛スキルを発動し、ジュディスを捕らえたのだった。

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