14 帰還
俺たちが帰還すると、町はお祭り騒ぎになった。
【リヴァイアサン】は邪悪な存在に操られていただけであり、本来は善良な神獣だと説明したのだ。
実際、もともと【リヴァイアサン】は海の神として崇められていた。
だから、事情を知って、彼らも納得してくれたようだった。
「この町の英雄だ!」
「アルク様が海を救ってくださったぞ!」
「ありがとう! 世界最強のテイマー!」
町の漁師たちから歓声が上がる。
俺はにこやかに手を振りながら領主の館に行った。
「アルク殿、本当にありがとうございました。して――そ、そちらが神獣ですか?」
俺が報告を済ませると、領主は戸惑ったようにライムを見た。
「いちおう【リヴァイアサン】形態に戻れば、証拠として見せられますが――体のサイズが大きいので」
俺は苦笑した。
実際、ライムが港で変身したら、港全体があふれかえってしまうだろう。
「いえ、王が認める最強テイマーのあなたが仰るなら、信じます」
領主がうなずいた。
「何よりも、あなたの目には曇りがない。人を守るため、まっすぐに己の為すべきことをする――まことの善人の目をしてらっしゃいます。そんなあなたの言葉なら、私は信じることができます」
「えっ? そ、そう? いや、なんか……照れますね」
「なんだ、主。えらく褒められているではないか」
ルシアが横から肘で俺をツンツンつついた。
「や、やめろよ、俺、本当に照れてるんだからな」
「確かに主はお人好しなところがある」
「善なる魂をお持ちだと思いますわ」
「あたしのことも救ってくれたしね~」
と、フィーネ、リリナ、ライムがそれぞれ言った。
そのライムは領主に向き直ると、
「【狂乱】にかかっていたとはいえ、あたしは多くの船を沈め、この町に多大な被害を出しました。その償いはこれから先、続けていくつもりです」
深々と一礼する。
「アルク殿からもお聞きしましたが、悪いのはあくまでもその【狂乱】とやらを仕掛けた敵でしょう。あなたはむしろ被害者だ」
領主が首を振った。
「償いは必要ありません。叶うなら、今まで通り――この町の漁師たちを見守っていただければ幸いです……いや、その前にあなたはアルク殿についていかれるのですな」
「俺たちは『闇の獣』を討ちます」
俺は領主に言った。
「ライムはその後で、己の務めをまた果たせばいいんじゃないかと……」
「ですな」
うなずく領主。
「――分かりました。アルクさんに仕え、その仕事が終わり次第、またマリーネルの近海で漁師たちを見守ることにします」
ライムはもう一度、深々と頭を下げた。
港町マリーネルを救った俺は、王城に戻ってきた。
王に報告すると、こちらでも最大級の賞賛を受けた。
「おお、よくやってくれた! さすがは噂に名高い神獣テイマーだ!」
「海域の調査に同行して、そのとき偶然【リヴァイアサン】に出くわしたので【テイム】した――という形にしてもらうよう、領主には頼んであります」
「根回しまでしてくれていたか……感謝するぞ、アルク」
王はニコニコ顔だった。
懸案が一つ片付いてホッとしているんだろう。
「お前には褒美を取らさねばならんな。望みのものがあれば申すがいい」
「いえ、今のところは特に――」
すでに冒険者の仕事でかなりの額を稼いでいるし、当面は特に欲しいものがなかった。
「むう……謙虚だのう。まあ、いい。何か思いついたら教えてくれ。私にできる限りのことはしよう」
「ありがとうございます」
俺は丁重に礼を言って退室した。
それから一か月ほど、平穏な時間が流れた――。
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