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第七章:王都行き

第七章:王都行き


草原を渡る風が、季節の変わり目を告げていた。


ケビ・ハウスの朝はいつも通りだった。パンを焼く香り、井戸の水を汲む音、寝坊するノアの叫び声。そしてそのすべての下に、今も静かに燃える不穏な火種――リア・グレイの“正体”がある。


事件から数日後、再び使者が現れた。


今度は本物だった。

重厚な緋の外套、銀糸の紋章、封印印の入った文書。


「ハンシ国王宮よりの命により、貴団に出頭を命ず。王都セイレムへ至り、リア・グレイ殿の証言及び、冤罪に関する資料を提出されたい」


文章は冷たく、義務を課すものでしかなかった。だがケビにはそれが――招待に見えた。


「ようやく、表舞台に出る時が来たんだな」


彼は静かに言った。

■ 計画と警戒


ネヘミヤは一人、宿の裏で風に髪をなびかせていた。


「王都ね。僕としては、あまり戻りたくない場所だけど……必要なら仕方ないか」


「危険か?」


「当たり前だろう。王都には“敵”がいる。表の法廷ではなく、裏の法廷で生きる人間たちが」


彼はケビにだけ、口調を変えて言った。


「君、覚悟はあるか? 真実は、必ずしも正義と一致しない」


ケビは目を細めた。


「それでも、やる。俺は“ここ”に来た意味を、形にしたい」

■ 新たな召喚:“真実を照らす者”


夜。


ケビは宿の地下室に降りた。

六連星のペンダントが淡く光を放つ。彼は静かに言葉を重ねる。


「名ではなく、役を呼ぶ。今この世界に必要なのは、“記録を暴き、嘘を壊す者”だ」


《パーティー召喚:特別指定》

条件:役割指定“真実を照らす者”

結果:ディル・コルニクス(元王国法廷書記官)を召喚


そこに現れたのは、白衣を着た老人だった。

長身で、細い指。目には文字列のような紋が走っている。


「……私に光を求めるとは、珍しい。だが承知した。真実には、必ず証拠が必要だ」


アリアは彼を見てつぶやいた。


「記録魔法師……旧王国で消された職だわ」

■ 王都へ


旅は10日を要した。

道中、王都へ向かう巡礼者、傭兵、旅商人たちとすれ違いながら、ケビたちは進んだ。


そして――ついにその姿を現した。


セイレム。


天空に浮かぶ白亜の塔。巨大な外壁。

光と魔法が編み込まれた防御結界が、都市全体を覆っている。


だが、煌びやかさの下に、黒い影が揺れていた。

政争、粛清、隠された罪――

それらが牙をむくことを、彼らはまだ知らなかった。

■ 章末・決意


セイレム外郭都市の宿にて。

夜、ケビは仲間たちの前で言った。


「ここで証明する。俺たちのやり方で、真実を通す。……そのために、この世界に来たんだと思う」


ロウは黙って剣を研ぎ、アリアは魔法陣を書き直す。ノアはいつも通り笑っていた。


ネヘミヤは少し離れて、闇を見ていた。


「……本当に、面白くなってきた」

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