第二章:風と光と誓い
第二章:風と光と誓い
陽が昇りきる少し前。
草原は風に揺れ、緑の海のように波打っていた。
ケビは一人、その中央に立っていた。
彼の手には六連星のペンダント。風が鎧の縁を鳴らし、剣の鞘に朝露が滲んでいた。
転生から三日。幾度かの戦闘と、老戦士の指導によって、彼はレベル3に達していた。
そして、今日はそのスキルを初めて使う日だった。
《スキル:レベル指定パーティー召喚》
使用条件:LV3以上
指定:レベル3の仲間3名を召喚。名前自由設定可。
「……名前か」
ケビは静かに目を閉じた。
「アリア」
「ロウ」
「ノア」
三つの名を、風に溶けるように呼ぶ。
すると、草原に光の円が浮かんだ。
魔法陣も詠唱もない。だが、そこに立ち現れた三人は、明らかにこの世界の者ではなかった。
◆アリア:銀髪の魔法使い。静かな瞳を持ち、足元に小さな氷の蝶を浮かべている。
◆ロウ:大柄な戦士。鉄の斧を担ぎ、身体中に古傷が走る。
◆ノア:短剣を二本持つ盗賊風の少年。笑っているが、その目は何も見逃さない冷たさを宿している。
「……召喚、完了だな」
アリアが一言だけ言った。
「俺が隊長になる。いいか?」
「文句はない」ロウがうなずいた。
「楽しそうなら何でも」ノアが笑った。
こうして、ケビの最初の仲間たちが揃った。
同日・草原西端の町「ラガン」
町は石と木で造られた防壁に囲まれていた。東門の前には旅人や商人の列ができ、衛兵が一人一人の素性を確かめていた。
「名前と目的は?」
「ケビ。ギルドに登録したい」
簡潔に答えると、衛兵は頷き、通行証を渡した。
中に入ると、活気ある通りが広がっていた。市場の呼び声、馬車の軋む音、鍛冶場の打撃音が交差し、ここがただの田舎町ではないことを物語っていた。
ギルドの建物は、町の中央にあった。二階建ての石造りで、扉には剣と羽根の紋章。扉を押し開けると、中には冒険者たちが談笑し、クエスト板に群がっていた。
受付に立つ女が、目を細めてケビたちを見た。
「初登録? パーティーで?」
「俺が代表だ。ケビ。メンバーはアリア、ロウ、ノア」
「了解。登録料は金貨1枚。提出物は身分の証明と、初期能力の開示ね」
金貨は魔法袋から取り出した――気づかれぬよう、枚数が誤魔化されているとは思っていない。
ケビはスキルの一部だけを申告した。
名前:ケビ
レベル:3
職能:剣士
特記:特殊召喚スキル所持(詳細秘匿)
受付嬢は眉をひそめたが、すぐにスタンプを押した。
「ようこそ、冒険者ギルド・ラガン支部へ。最初の仕事は『南の丘の草狼討伐』が妥当ね。準備が整い次第、掲示板から選んで」
ケビは静かに頭を下げた。
ギルドホールを出ると、仲間たちが並んで待っていた。
草原に吹く風が、今度は味方のように背を押していた。
「始めようか。俺たちの冒険を」




