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第十章:資格屋の灯

第十章:資格屋の灯


セイレムの空に、白い雲が流れていた。


王都内、五つの区域――西商区、東工区、南住区、北医区、中央文区。

それぞれに、同じ看板を掲げた建物が一斉に開かれた。


その名は《カイ学館》――


黒曜の看板に銀で刻まれた十文字の印。

宿を建て、戦場に立った男が、次に拓いたのは**“学びの砦”**だった。

■ 講座一覧


掲示板には静かに、こう記されていた。

《カイ学館 認定講座 一覧》(初級〜中級)


簿記(帳簿・資金管理・税の基礎)


不動産(登記・評価・取引契約法)


福祉基礎(補助法・共助活動・制度理解)


食品料理免許/栄養士基礎(衛生・調理・栄養設計)


秘書検定《男性限定》(報告・礼儀・忠誠・補佐術)


危険物取扱(火薬・魔素爆薬・封印処理)


介護職員養成(生活補助・精神支援・施設実務)


義肢製造免許(金属・木材・魔導義肢設計基礎)


精密部品製作免許(時計・測定器・魔導計測器)


■ 教育方針


授業料:銀貨30〜50枚/月(所得に応じて分割可能)


試験は実技重視・資格証は王都ギルド登録と連携


講師はケビの信用スキルにより召喚・またはスカウト


授業は週3日、全20週制


学館ごとに専門分野を分担(例:北医区=福祉・介護・義肢)


■ 利益の行方


運営利益は、講師および支援スタッフの報酬を差し引いたのち、

「天照大御神」への寄進として、神殿に届けられる。


ジュ宗教に敬意を表しながらも、これはあくまでケビ個人の信仰と意思によるもの。


彼は語った。


「知は武器になる。

だが、それを握らない選択肢もある。

誰かが“選べる”ようにするのが、俺のやりたいことだ」


王都の人々は最初こそ疑った。

だが、学館に通う者たちの目の変化――それがすべてを変えていった。

■ サジとケビの対話(マンション管理室)


夕方、帳簿を確認しながらサジがつぶやいた。


「利益は順調です。ただ、何も残さず神へ寄進というのは……非効率かと」


「俺のやり方だ。金を握っても、誇れないなら無意味だ」


「……ですが、あなたには王都という戦場がある。

この“資格屋”は、剣では勝てない相手を黙らせる道になります」


「知ってる。だからこそ、俺は剣を抜かずに攻める」


サジは静かに微笑んだ。


「了解しました。“宿の亭主”として、全力で支援いたします」

■ 街の空気が変わる


半年後。

資格屋で学んだ者たちが、小さな会計所を開き、魔導時計の修理工房を始め、栄養士として病院に入り、義肢職人が戦災者の足を作った。


一つの資格が、町の尊厳を作っていく。


王都は、戦いだけでは動かない。

だが、**希望を持った人間たちの“暮らし”**が連鎖すれば、やがて城壁を越える日が来る。


そしてその時――

ケビたちは、「知」と「意志」の連携で、この国の未来を選びに行くのだろう。

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