第九章:拠点昇格 ― 王都マンション起動
第九章:拠点昇格 ― 王都マンション起動
王都での法廷闘争の渦中、ケビの体内に“スキルの振動”が走った。
意識の奥、六連星のペンダントが微かに熱を帯びる。
彼は理解する。
これは――「宿召喚」の進化だ。
《スキル進化:宿召喚 → 拠点召喚・楷式五階建》
構造:5階建て/7部屋×階層=35部屋
各部屋設備:冷蔵庫・風呂・洗濯機完備
備考:TV/ネット等の娯楽機能なし
防衛機能:常駐護衛兵(スキル産出)2名
宿の亭主(管理者NPC)自動召喚
ケビは思った。
「これは、ただの宿じゃない。“拠点”そのものだ」
■ 王都内の土地交渉
だが王都で建物を立てるには、土地が要る。
ネヘミヤの伝手で、王都南区の商用区外れ、古い教会跡地を紹介される。
区長との面談の末、条件付きで借用が認められた。
契約:50年リース、月額金貨30枚
条件:犯罪者の出入りを禁ずる、周囲住民の苦情対応を管理者が担う
「問題ない。俺が責任を持つ」
ケビは即答した。
■ 建造:王都マンション“カイ・ハウス”
ペンダントをかざし、起動コードを唱える。
結界が展開し、空間が震え――
まばゆい光と共に、5階建ての中層集合住宅が出現した。
石造りと木材を組み合わせた建築。
各部屋に風呂、冷蔵庫、洗濯機が付き、必要最低限の快適さを持つが、娯楽は排除されている。
そこにあるのは、**「住む者の意志を鍛える空間」**だった。
■ 同時召喚:宿の亭主
玄関横の管理室から、スッと男が現れる。
スーツ姿。銀縁の眼鏡。背筋が伸びた完璧な姿勢。
その男は一礼して名乗った。
「拝命により参上。拠点管理主任、『サジ・ベルネッド』と申します」
ケビは聞き返した。
「君は……召喚されたNPCなのか?」
「はい。私はこの宿における全管理業務、居住者管理、防衛隊との連絡、行政との窓口などを一括して担当します。また、必要に応じて戦闘補助も行えます」
「……有能すぎるな」
「当然です。私は“亭主”ですから」
サジは微笑んだ。
■ 拠点の新機能
【宿泊】:一泊銀貨5枚(王都相場より20%安)
【長期契約】:1ヶ月銀貨100枚(洗濯/風呂共同管理)
【防衛】:常駐護衛2名+サジによる警戒魔術常時展開
【運営管理】:外部ギルドからの依頼仲介受付を可視化(通知板)
【住人制限】:信頼度S未満の者は宿泊不可
王都の冒険者たちにとって、それは革命だった。
これまで路地裏の安宿か、ぼったくり宿屋しかなかった彼らにとって、“カイ・ハウス”は新たな“聖域”となった。
ケビたちの新たな立場が、王都に確立された。
■ 夜。屋上にて
ケビは最上階の屋上から、王都の灯を見下ろしていた。
リアがそっと隣に立つ。
「本当に、ここまで来たのね」
「ああ。だが、まだ途中だ」
「これで、次は“攻める側”になれる?」
「……そのつもりだ」
王都の闇は深く、まだヴァルター=リヒトは沈黙を保っている。
だが――
今やケビたちは、戦える場所と仲間を手に入れた。