第16話-12 田舎に帰ろう-12 夕ご飯と流星群
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英子Side
「さて、夕ご飯作りますか」
「何か手伝う?」
「じゃあ、咲良ちゃんはホットプレートを洗ってくれる?もう一つ引っ張り出すからそれもね」
美亜ちゃんには野菜を切ってもらって、私はお肉の半分を漬けダレを準備して漬け込む。
漬けダレは麺つゆに砂糖、料理酒、みりん、おろしショウガ、おろしニンニクで、あればハチミツや豆板醤、コチュジャンを入れるのも美味しいよ。
作った漬けダレにお肉を漬け込んで冷蔵庫に夕ご飯の時間まで入れておいた。
他にサラダやお浸しを作って付け合わせも作っておいた。
後は……
「咲良ちゃん、芋餅作るよ」
「どうすんの?」
「今日買ったマッシュポテトの素にバターとお湯を入れて混ぜて、先ずはマッシュポテトを作ろう」
「うんしょ、練るだけ?」
「そうそう、マッシュポテトが出来たら片栗粉を入れて混ぜよう」
「おっし、混ぜ混ぜ混ぜ」
「それをまとめて棒状にしてね」
「よしよし、まとめたよ」
作った芋餅を適当な厚みで切ってホットプレートで焼けば完成。
軽く塩こしょうを混ぜて味を付けておいてもいいし、お餅と一緒で砂糖醤油などに付けて食べても美味しいよ。
「これ簡単だね。家で作ってみるわ」
「おやつやお昼にいいと思うよ」
「本当はじゃがいもを蒸したり茹でたりして潰すんだよね。それが手間かかるんだけど」
「うん、これなら料理初心者の私でも一人で出来そう」
こうやって簡単な料理から興味を持って作る気になってくれるのは嬉しいね。
夕ご飯も一通り準備もできたし、しばらくゆっくりしてよう。パパ達の方はどうかな
「パパ達、夕ご飯の準備が出来たけどまだ終わらないの?」
「もうちょっと待って。これで直樹のが墜ちるはずだから……よしっ、墜ちた」
「直くん、負けたの?」
「うん、バエルの接近戦の性能が良過ぎて回避出来なかった。後は運が悪くて誘爆しちゃったよ」
「残念だったね」
でも直くんの顔は残念そうじゃない感じ。でも接待プレイってわけでもないから、新しいデータシートのバランスが悪かったのが悪いって思ってるのかな。
それなら直くんのせいじゃないからね。
「MSの設定を再現したとは言えるけど、もうちょっと試してバランスを考えないとね」
「大変だね。パパ達ご飯の準備が出来たけどどうする?」
「すぐに片付けるからちょっと待ってて」
3人が片付け始め、そこに美亜ちゃんが手伝いに入った。
でも、ボードとユニット、サイコロを片付けるくらいだからすぐに終わるけどね。
それにしてもユニットに小さい絵を印刷してるけど、いつも綺麗に作ってるなぁ。山田さん、よくやるよ。
SLGの片付けも終わったので、咲良ちゃんとホットプレートをリビングのテーブルに置いて焼き肉の準備を始める。
漬けダレに漬けた各種お肉とそのままカットした各種お肉を冷蔵庫から取り出すと、それを秀くんが見て大喜びしていた。
その大喜びの秀くんにお肉の大皿を渡してどんどん持っていってもらった。
私と咲良ちゃんは野菜と芋餅の皿を持っていき、美亜ちゃんがお茶碗にご飯を盛り付けて持ってきてくれた。
みんなにご飯も行き渡り、ホットプレートもいい温度になってきたので……
「「「「「「いただきます!」」」」」」
先ずは秀くんが真っ先にお肉を焼いては食べ、「うま~い」って言っていた。その声につられみんながぱくぱく食べ始めた。
漬けダレのお肉も美味しいけど漬け込んでないお肉も美味しい。タレは市販のだけどね。
芋餅も一緒に焼いて、その出来栄えに咲良ちゃんも満足してるみたい。
「パパ、お肉いっぱいありがとね」
「三条さんと橋本さんが来るからね。それに大輝や直樹もいっぱい食うだろうしな。だから奮発したんだよ」
「だから楽出来ちゃったよ。ついでに咲良ちゃんに簡単な料理教えることが出来たし」
「そうか。京子さんも橋本さんのお母さんに教えて欲しいとか言われたらしいいからちょうどいいんじゃないか?
レシピはファイルにしてあるから渡してあげてもいいぞ」
「うん、ありがと。少しずつ教えたらあげるようにする。卒業するまでに一人暮らししても困らない程度なってもらうんだ」
焼肉とはいえみんな美味しそうに食べてくれてる。サラダやお浸しも美味しそうに食べてくれてるのは嬉しいよ。
文化祭の時もだけど、作った料理を喜んでくれたのを見るのは嬉しかった。
前は料理も食べてくれた人が喜んでくれるから将来料理関係も考えてたけど、私って誰かが喜んでくれることがしたいんだな、単純だけど。
さて、これから咲良ちゃんの料理教室のスケジュールを考えないと。
ニヤリと笑いつつ咲良ちゃんの方を見ながらそんなことを考えてると、私の視線に気付いたのか急に震えながらキョロキョロしてた。
無茶なスケジュールで教えたりはしないから大丈夫だよ?
お肉いっぱいの焼肉も直くんや大ちゃん、咲良ちゃんの胃袋にしっかり収まりみんな満足するほど食べた。
みんな美味しくて満足した顔をしてて、特に秀くんはお腹がはち切れそうなくらい食べて床に寝転んでいた。
今日のメインはこの後もっと暗くなってからなのでしばらくゆっくりお茶にする。
その間に直くんと大ちゃんが後片付けをしてくれた。大ちゃんはともかく直くんはパパみたいにいい旦那様になってくれること間違いなしだよ!
何も言わなくても手伝ってくれるし、家事は全て出来るもんね。パパみたいにいいお父さんにもなれるよ。
外がずいぶん暗くなったので外に出て天体観測に出かけることに。
この時期は一大天体ショーが観れる時期。年に何回かあるショーの内最大級の1つだったりする。
うちの家族はひいおじいちゃんのところに来てよく観てるんだよ。
「京子さん、今日は僕達も一緒に行こうか?」
「いいわね」
「私もついて行っていい?京子さんが来た時以来観てないんだよね」
「直おばさんも?じゃあみんなで行こう!」
家の前の道を歩いて行き、お寺や神社の方に上がらず川の上に掛かっている橋の上に到着。
この辺は家や街灯の明かりから離れていて暗くなっている上に、川の流れの上にいるから意外に涼しい。
今日も天気が良く雲一つない上に月もほとんど新月に近い状態で、天体観測にはすごくいいコンディション。
「咲良ちゃんには話していないけど、今日はペルセウス座流星群の観測をします。一番数が多いのは13日だけどまだまだ結構見れるからね」
「どのくらい観えるの?」
「結構観えるよ、1時間に少なくとも7、8個くらいは。今回のは明るい流れ星が観えるから」
「じゃあ、秀くん競争だ。どっちが多く観えるかな?」
「僕の方が経験者だから、いっぱい探すからね?」
咲良ちゃんは秀くんと競争しながら観るみたい。
大ちゃんは美亜ちゃんにどの辺りから流れ星が出現するのかを説明しながら一緒に観ていた。大ちゃん、美亜ちゃんの肩に手をかけるくらいすればいいのに。
パパとママは橋の欄干に腰掛けて寄り添って星空を眺めていた。もう、20年以上一緒に居るのだから自然な感じでイチャイチャしてる。
それを見ていた直おばさんが……
「京子さんを初めて連れてきた時のことを思い出すわ」
「あんな感じだったんですか?」
「そうそう。もうあんな夫婦同然って感じで流星群を観てたわよ。英子と直樹もそれほど変わらないけどね」
「えへへ」
みんなで夜空を見上げてると、回りを蛍が光りながら飛んでる。流れ星にプラスして蛍の光が夜空を彩り、ますます幻想的になった。
でも、今日はUFOは飛んではいなかったけどね。
「蛍が増えたね、京子さん」
「そうね。初めて来た時はそんなに飛んでなかったのにね」
「もう20年程経ったけど、水も空気も綺麗になってきたんだよ。
田んぼもあまり減ってないし、農薬も汚染しないような自然由来の物に変わってきたからね」
「私達の孫が英子くらいの歳になったらもっと蛍は増えるのかしら?」
「それはどうだろうね。幼虫の食料があるかどうかかな。この辺で生きられる数は決まってるから」
パパがせっかくのこのファンタジーな状況を科学的な解説で台無しにしてるんだけど。
確かにそうかもしれないけどさ。
私は直くんとくっついて流星群を眺めて、いくつも流れてくる流れ星に一緒に願い事を囁いた。その願い事はお互い一緒の内容だった……
パパ達の時はどうだったのかな?
でも、お願いすれば叶うわけじゃないから、私自身も直くんにもっと好きになってもらえるよう魅力的な女性になるよう頑張らないと。
咲良ちゃんは秀くんと流れ星の数で勝負してたけど、前に直くんに教えてもらってたのと経験者ということで10対3で秀くんが圧勝してる。
流星群って出現ポイントがあるから、そこを中心に観てると見付けやすかったりするんだけどね。
「ああ、秀くんに負けちゃった」
「勝った勝った!」
「3個とはいえよく観えた方だよね、さすが流星群。
しかし、こんなに流れ星が観えたりしたら昔の陰陽師達はどんだけ災いが起きるのかって思いそうだよね」
「え〜、毎年この時期観えるんだから、災いがいっぱい起きるって占ったらハズレが連発しちゃうよ?」
「確かに。他の流星群もあるしね」
平安時代では有名な陰陽師が流れ星とか天体観測して吉凶を占ってたって話だけど、人の人生に何の関係もないんだからいい加減な占いになっちゃうよね。
多分いくらかはたまたま当たったりそれらしい事が起きたんだろうけど、それだけで国の中枢に置かれるようになるとかってどうなんだろう?
「天体観測で占うのは洋の東西を問わず行われてたけど、そういうのは権力者都合のいいことを言ってすり寄った奴らがやったことだからね。当たるかっていったら疑問だけどね」
「でも、西洋でも東洋でも星を観て占うわけですけど、どこかで繋がってるんですかね?」
「それこそ権力者同士繋がってるから、政治に有効だと思えば自分の国でも使うだろうから中東の辺りから分かれて伝わったのかな。
それに、人間がアフリカから世界中に移動する間に日蝕や月蝕に遭った時の恐怖感が心の奥底に刻まれてたりしててそういうのを信じるのかもね」
う〜〜ん、ちょっと高尚な話になって来たかな?
パパはオカルト好きだけど考古学も好きだから絡めた話をするんだよね。そういうのも面白いけど。
「英子のお父さん、ギリシャ神話と日本の神話の似てるとことか秋田美人の話ってどう思います?」
「ギリシャ神話にそっくりな話があるからそういう宗教観みたいなのが人間の根底にあるのか、大昔に同じ話が伝わったのが日本神話に変化したかだよね。
秋田美人が白人の遺伝子を持ってるって話だから、実際にヨーロッパの方から渡って来た時にその話を持って来た人達がいたのかもしれないよね」
「オカルトも学問として考古学やなんかと絡めると面白そうですね」
「そうなんだよね。そうなれば興味が出て勉強する気にもなるでしょ?」
「そうですね。勉強する意欲が沸くかも」
パパも勉強のさせ方が上手いよね。好きなことから勉強に繋がる何かを見つけて興味を引くんだから。
興味を引けばそれだけで勉強する気になりやすいもんね。
その後も咲良ちゃんと天文学や神話、考古学とオカルトを絡めた話をして楽しんでた。ママと秀くんもそれを興味深そうに聞いてた。
大ちゃんと美亜ちゃんはそれに混ざらず、2人だけで流星群を観ながら時々話をしてた。いい感じの雰囲気なんだからここらではっきり告っちゃえばいいのに!
咲良ちゃんは期待してたかもしれないけど、ペルセウス座流星群の観測は蛍の光が消えていくと共に終わることになった……
### 続く ###




