第04話-1 ゴールデンウイーク 釣りに1
この物語は当然フィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
オカルトなどの内容についても、世間での通例の解釈でないこともありますのでご了承ください
高校に入学してしばらく経ったゴールデンウイーク。
今日はちょっと山の方に入った所にある清流の釣り堀に行く事に。うちの家族は年に何回か海や河の釣り堀に来てる。今回は河の方、もう何度も来てるおじいちゃんの馴染みの釣り堀で。
参加者は大輔おじいちゃん優子おばあちゃん、パパママ、私、大ちゃん、直くん、美亜ちゃん、直くんの弟 秀樹くん、この間友達になった咲良ちゃん。
咲良ちゃんはこっくりさんの時に仲良くなった、高校に入って初めて出来た友達。美亜ちゃんと大ちゃん、直くんとゴールデンウイークの予定を話してると近付いてきて話をしてたら参加することになった。
釣り好きなんだけど、受験でしばらく釣りに行ってないから行きたいって。
咲良ちゃんは釣りも好きなんだぁ。
ということでゴールデンウイークの初日になり、釣り堀に来ました。
受付の方に行くと、ここの社長さんが対応してくれた。
「いらっしゃい、正直くん、京子ちゃん、ついでに大輔も」
「俺はついでか、コノヤロー」
「ワハハハ、優子さんもいらっしゃい。英子ちゃんも大輝くん、直樹くんもお友達もよく来たな」
「「「「「よろしくお願いします」」」」」
ここの社長さんとおじいちゃんは幼馴染なんだって言ってた。だから時々口喧嘩してたりするの。おばあちゃんが本気じゃないから気にしなくていいからって言うけど、心配になることがあるよ。
私達は受付も終わり、竿も借りて釣り堀の方へ向った、パパとママ、おじいちゃんとおばあちゃんはフライフィッシングの方に行っていつものように勝負をしてる思う。いつもパパが勝つけど。
ここの釣り堀はニジマス以外にイワナやヤマメも放流されているの。
食べられるお魚だから嬉しい。お昼ご飯にパパが料理してくれるから楽しみ。
6人で釣り場に到着して釣りの準備を始めると、咲良ちゃんがこっちに来て内緒話を始めた。
「英子、大輝くんが好きな子って美亜なのかな?」
「よく分かったね。美亜ちゃんは分かってないけど」
「あれだけ美亜の面倒をみてれば分かるわよ」
そう釣り堀では今日も大ちゃんが甲斐甲斐しく美亜ちゃんのお世話をしてるもんね。美亜ちゃんは釣り慣れてないから、餌を付けたり大ちゃんが手伝ってる。
そんな様子を見れば分かっちゃうか。学校だとそんなことしないもんね。
「それより……宮崎くんの弟くん、秀樹くんだっけ?この子も可愛いわね」
「じゃあ、秀くんの面倒は咲良ちゃん、お願いね」
「え?いいの?ぐふふふ」
え?もしかしてヤバい人に任せちゃったかな?
秀くん、変な道に行かないでね。
とはいっても咲良ちゃんは釣り好きみたいだから、ちゃんと餌を付けたり投げ込みポイントを秀くんに教えてた。秀くんも「釣れた釣れた」って喜んでてだいぶ懐いてるみたい。
私は直くんと並んで釣ってる。大きいのが釣れた時はお互い網で掬ってあげてるよ。ニジマスが結構大きいのが釣れるんだよね。
『英子、前から思っとったんじゃがここにいるぞ。知っとるか?』
「うん、美亜ちゃんもいるって言ってた、子供の幽霊が。私も見たけどね」
『別段悪さはしてないようだからいいが、誰かを待ってるようかの』
「そうなんだ。それなら無理に成仏させなくてもいいでしょう?」
『その待ち人が早く来てくれればいいのだがな』
神ちゃんとここに居着いてる幽霊の話をしつつ、直くんと釣りを続けた。
みんな結構釣れたみたい。美亜ちゃんは釣れた魚を大ちゃんに外してもらってるのが見えたし、秀くんも大きいニジマスが連れた時にこっちに見せに来たし。
「咲良ちゃんはどうだったの?」
「釣りより秀樹を愛でるので忙しかったから」
「釣りをしたかったんじゃないの?おじいちゃんやパパに言えばフライの道具を使わせてもらえるよ?」
「じゃあ午後にお願いしようかな?それで秀樹くんにいいところを……」
「……ははは」
咲良ちゃん……秀くんはまだ小学生だからね。
午前中に結構釣れたので、それを使ってパパがお昼ご飯を作ってくれるんだ。ママと美亜ちゃんがお手伝いしてる。
おじいちゃんと大ちゃん、直くんは火起こしをしてる。それを咲良ちゃんが秀くんと見て楽しんでる。まあ、咲良ちゃんは秀くんを見て楽しんでるんだけど。
「ではでは〜、パパの3分割烹〜」
「英子、3分じゃあ出来ないぞ」
「えへへ、でもパパの料理は美味しいもん」
パパとちょっと小芝居をしてると、咲良ちゃんが美亜ちゃんに話しかけてた。咲良ちゃんはパパの料理は初めてだからね。
美亜ちゃんも最初はどうなのか疑ってたし。でも食べたらすぐに教わりたくなったんだよ。
「美亜、英子のパパの料理って美味しいの?」
「美味しいわよ。すごく特別な料理を作ってるわけじゃないけど美味しいの。それに料理の勉強になるし、私も教わったりしてる」
「へぇ、それは大ちゃんのためかな?」
「むぅ」
「ははは、他の人に話したりはしないよ、美亜」
何か話してたみたいだけど大したことではなさそうかな。
まぁいいや。今日のお昼は釣り堀での定番ホイル焼きにイワナと炊き込んだイワナ飯、今日は燻製も作ってるって。
他にBBQでお肉や野菜やおにぎりも焼いてるよ。サンドウイッチも作ってきてあるからね。こっちは私も手伝ってますよ。
「美味しいですね、ホイル焼き。これだけ美味しかったら教わりたくなるかも」
「ありがとうね、橋本さん。レシピがあるから家でも作れるよ」
「ありがとうございます。家で作って親に自慢してみようかと思います」
「コツは英子や大輝、直樹に聞くといい」
ホイル焼きにはニジマス以外に、キャベツや玉ねぎ、マッシュルームが入ってて、コンソメとバター、少量の調理酒で味付け。ホイルでくるんだら炭火の端の方でじっくり15分くらい焼いたら完成。味噌をちょっと入れても美味しいんだから。
咲良ちゃんが本当に美味しそうにパクパク食べてるよ。
お昼もデザートにパウンドケーキが出て終わり。紅茶、ティーバッグのだけど、を飲みながら午後の話をして、それぞれ別れて遊ぶことになった。
私は直くんと、美亜ちゃんは大ちゃんはそれぞれ一緒に散歩に、咲良ちゃんは秀くん一緒におじいちゃんに道具を借りてフライフィッシングをするんだって。
私と直くんは釣り堀の先の河の方へ歩いて行った。
釣り堀は家族連れや恋人同士、何かのイベントで来た人達で賑わってた。子供に釣り方を教えてるのを見ると、うちのパパが私達に教えてくれた小さい頃を思い出す。懐かしいな。
それから景色を見ながら直くんと釣り堀の端の方に来た。
そこには小さな花束が供えられ、子供が1人座っていた。昭和っぽい服装の子が。確実に幽霊だと思う。ただ、特別恨みとか後悔みたいな負の感情は感じられない。成仏していてもおかしくはない感じなんだけど。
「英子ちゃん、もしかして……いるの?」
「うん。でも、悪い子じゃないみたい。神ちゃんもそう言ってる」
『そうじゃ。そう遠くない時期に成仏してもおかしくはないのう』
「そろそろ成仏しそうだって」
そんな幽霊の話をしていたら直くんが部活の話をし始めた。
気になることがあるんだって。
「英子ちゃん、女バスでいじめられて体育館裏で泣いてるとか噂になってるけど……」
「ああ、それね。この間の練習試合で幽霊が付いて来たみたいで、新人チームに勝っちゃったからなんか居着いちゃった。
バスケをやってたみたいで、パス回しとかでどっちに回すかでもめるんだよ。で、体育館の中でやり合うわけにもいかないから体育館裏で話してるの。
先輩達は優しいよ」
「ならいいんだけど。何かあれば相談にのるからね?」
「直くん、ありがとね」
話をしてたら川の方で何か騒いでるのが聞こえた。川の方に行ってみる。
行ってみると子供が川に落ちて溺れていると両親が叫んでいた。
直くんが子供の方を見て走り出し、川に飛び込んだ……
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直樹Side
子供が溺れながら流されている位置を確認。僕は川に飛び込んだ。
そんなに大きい川じゃないから大丈夫だと思ったけど、流れは速いし複雑だ。なかなか子供に近付けない。近付いたと思ったら流れが変わって離れていってしまう。
こっちも服を着てるから泳ぎにくい。しかも深いところに来てしまったから足もつかない。体力のある内に捕まえて流れの緩やかな方に行かないと、僕も溺れてしまいそうだ。
何度か近付いた時にいけると思ったのにまた離れてしまった……
その時、僕の身体が急に加速し子供を捕まえられた。でも、子供が暴れて安定しない。これだと僕も溺れるかもしれない。
岸の方に向かおうと泳ぐけど、子供が暴れて上手く泳げない。
……ヤバい……息が……
意識が遠くなりかけた時、周りを見たら古臭い格好の小学生くらいの子供が見えた。さっき、英子ちゃんが言ってた幽霊?
なんとか捕まえられたのに岸にまでたどり着ける体力が……バスケやサッカーで鍛えたと思ったのに泳ぐのは違うのかな。意識が遠のいていく。
でも、身体は岸の方に移動していってるような……
幽霊が助けてくれてるのかな?
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### 続く ###