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第14話-10 女子バスケ部合宿奇譚10 2日目 夕ご飯の後に

 宿泊施設に遊びに来た子達を夕ご飯に誘う。

 豚肉はまだ余裕があるし、レタスなどの野菜類はいっぱいもらってるからこっちも余裕がある。

 そしたら、「他の部員も食材やガスコンロや鍋を持ってくるから混ぜて」となった。場所も広いしいいんじゃない?


 夏だけどあまり冷たい物を食べるよりしゃぶしゃぶで適度に温かい物の方が胃に優しいと思う。それに豚肉は疲労回復にいいし、レタスは免疫力の向上や美肌効果があるとかで、私達女子バスケ部員には丁度いいでしょう。

 冷房をしっかり効かせた部屋で食べるなら、少々鍋が熱かろうが気にならないよね。

 作るのは、鍋だし食材を切っておけば後は自分でどうにか出来るのがしゃぶしゃぶなど鍋の便利なところ。鍋奉行をかって出てくれる人もいるから私の手間はそんなにかからないから。




 準備もそれほど手間はかからないから、今日は温泉に浸かることにする。

 夕ご飯の準備をする調理班が先にお風呂に入って、残りの部員や練習試合相手の子達が入ることになった。

 残ってる人は大広間でまたバルーンアートを作ってる。そして、それが動く様子を眺めて喜んでる。


 夕ご飯のしゃぶしゃぶは豚肉とレタスがメインなので、レタスを大量にちぎり、ネギやキノコ等を大皿に乗せて、豚肉はしゃぶしゃぶ向けにスライスしたものをそのままパックで渡してく。

 豚肉は先生がかなり大量に買ってきてくれてるし、地元である練習試合相手が珍しい猪肉や鹿肉をしゃぶしゃぶ用にスライスした物を持ってきてくれた。

 鍋には昆布などで出汁は取らず、面倒なので白だしを使った出汁を入れることにした。お湯でもいいんだけどね。

 タレもスタンダードなポン酢やごまだれ以外に、白だしの天つゆ、ネギ塩だれ、ニンニク醤油なども家で準備して持ってきておいた。


 みんな温泉にゆっくり浸かり、人も食材も追加され、夕ご飯のしゃぶしゃぶをみんなで満喫する。

 肉だけじゃなく野菜も特にレタスはたっぷり食べられるので鍋はバランスがいい。冷房をしっかり効かせたけどちょっとまだ熱くて。みんな汗をかきながら食べまくった。

 普段家やお店でも出てこないようなタレにみんなが興奮してる。


「天つゆ美味しい。レタスにいい!」

「ねぎ塩ダレやニンニク醤油は猪肉や鹿肉にも合うよ」

「「「「美味しい」」」」


 やっぱりキャプテンを始めとしたうちの3年生は今日も泣いている。

 それを見た対戦相手の部員達はドン引きしてた。まぁ、前回どれだけ酷かったか分かってくれてば納得してくれると思うけどね。

 でも、涙を流すほどではなくても美味しいことはうちも対戦相手の部員も分かってはくれた。


 それにしても……「鍋」という食べ方に気付いていれば、前回もっとましな食事になったのにと3年が悔やんでいた。


「料理が出来る部員がいていいなぁ」

「そっちには出来る人いないの?」

「出来なくはないけど美味しくない。だから、カレー一択なんだよね。大体ルーの味が勝つから」

「うちも昨日はキーマカレーだったよ。ライスだけじゃなくてパスタやうどんが選べたけど」

「いいな、それ。でも、大変だったんじゃない?」

「うちのシェフはある程度作り置きして、足りなくなったらどんどん作ってたよ。麺類は多少冷めても問題ないからって」


 シェフって誰よ?まあ、いいけどね。


 そのままみんなで飲めや歌えのどんちゃん騒ぎ……お酒はないけど。

 みんな楽しそうに食べおしゃべりし、キャプテンは新作のバルーンアートを作っていた。

 あまりの賑やかさに女の子の幽霊も楽しそうにしていて、キャプテンのそばでバルーンアートで遊んでいるのが私と美亜ちゃんに視えた。

 おばあさんの幽霊もその光景を見て穏やかな顔をして微笑んでいた……




 夜も更け、練習試合の相手はみんな楽しんで帰っていった。

 心霊現象が起きる宿泊施設として有名なここで目に見えて何も起きなかったことが残念だったみたいだけど、大いに満足して帰って行った。

 おばあさんの幽霊が荒ぶってなかったからね。だから何も起きなかっただけなんだけどね。


 私は美亜ちゃんと咲良ちゃんと一緒にもう一度ゆっくり湯船に浸かりに行った。

 ゆっくり浸かって蕩けてるとキャプテンも入ってきて、隣に女の子の幽霊が現れ同じように湯船に浸かる(まねをしてた)。本当に懐いてるよ。

 美亜ちゃんとやっぱり微笑ましそうに視ていると、咲良ちゃんがそれに気付いたけど視えてはいなくて「どこどこ?」って聞いてきた。視えるのはやっぱりうらやましいみたい。


「キャプテン、あの件、先生の方はどうなりました?」

「先生が市役所の方に掛け合ったら許可してくれたってよ。バルーンアートやぬいぐるみを置いていくのはOKだ。

 まあ、バルーンアートはしぼんだら捨てることにはなるけどな」

「英子、良かったね」

「うん、でも、この先ここに来た人が同じようにしてくれるといいんだけどなぁ。

 ここに来る人にとっては怖がらせた方がいい人もいるんだろうし」

「その辺はおばあさんの幽霊に対応してもらうしかないかな」

「だよね~」




 お風呂から上がって大広間に戻ると、先生がみんなに吊し上げをくらっていた。


「ふざけんなぁ、肝試しなんか昨日これでもかって堪能したわ!」

「先生が準備するような子供騙しの幽霊なんざもう怖くもなんともねぇんだよぉ」

「心霊スポットのここに泊まってるだけでもう肝試しとして十分だよ……」


 なんでも、今日は宿題タイムはなしにして合宿の夜を楽しもうと言うことに。それで先生が肝試しを企画していたからだとか。

 それは吊し上げをくらうよね……

 昨日あれだけの心霊現象で怖い目に遭ったんだから、先生が演出するお化けなんか子供騙しにしか思えず、みんなうんざりだと思ってるようだった。


「肝試しなんかしないでまたバルーンアート作ってようぜ。その方が女の子の幽霊も喜ぶだろ?」

「持ってきたぬいぐるみを置いていってもいいですかね?」

「許可はもらってるからいいぞ。でも、あんまりボロボロなのは止めてな」

「大丈夫です!」

「あと、練習試合の相手の子も持ってきてくれるそうです」


 今日もキャプテンを筆頭にバルーンアートでいろんなのを作り、置いておくことにした。特にキャプテンはネットで検査して新しいバルーンアートを作っていた。

 その他もらったり眠れない時様に持ってきたぬいぐるみ置いて、女の子の幽霊が遊びに来るのを待っていた。


 しばらく待っていたけど、今日は照明が突然消えたり点滅したりはなかった。おばあさんの幽霊が怒ったりしてないから。

 でも、いくつも置いてあるバルーンアートやぬいぐるみなどが動き出す。女の子の幽霊がいじっているみたいだね。

 私と美亜には女の子の幽霊が楽しそうに遊んでいるのが視えた。来た時には寂しそうにしていたのが今は幸せそう。

 そんな大広間は、昨日と打って変わって部屋の雰囲気も和やかで幸せなものに変わっていった……


 あと持ってきておいたパウンドケーキを全部出して、みんなに紅茶やコーヒーを出す。みんなほのぼのとした顔になってパウンドケーキを食べつつお茶をしていた。

 これで今日はゆっくり穏やかな眠りにつけそうだ、キャプテン以外は。


### 続く ###


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