第14話-7 女子バスケ部合宿奇譚7 2日目 1年2年の練習試合
対戦相手がユニフォームに着替えてウォーミングアップを始めた。
私達はコートの外で基礎練習しながら身体を温めておく。
始めは1年2年のチームの試合。お互い試合経験を積ませるということで、1年は全員一度は出ることになってる。
スタメンは2年3人と私と美亜ちゃん。私がポイントガードで、美亜ちゃんがシューティングガード。2年の先輩がセンター、パワーフォワード、スモールフォワードに入る。
GW前の練習試合のスタメンと同じ。現状1年2年の最大戦力といった感じ。
ただ、当然このメンバーで序盤は様子を見ながら点差を付けすぎないよう離されないようにする。あまりにも点差を付けすぎたら相手がやる気を失うという事で、先ずは相手の実力を確認する。
「「「「「よろしくお願いします!」」」」」
お互い礼をして、今回は名前とポジションを伝えて始める。
それぞれポジションに着いてジャンプボールからスタート。
ジャンプボールに強い先輩が出たけど、相手の選手の方が身長もジャンプ力も上で負けてしまった。
相手のタップしたボールは私のマークしてる選手の方に転がっていき、私が止めに入ってみんなが戻る時間を稼ぐ。
この5人でのディフェンスはいつもトライアングルツー。先輩3人でゴール下をゾーンディフェンスして、私と美亜ちゃんが相手選手に付く事になる。
私はマークしてる選手と一緒に移動する。美亜ちゃんは3Pを狙ってる選手をメインにマークしてる。
相手チームがパスを回してるけどゴール下の方に入って行こうとしない。
ミドルレンジからのシュート主体のチームなのかな?ジャンプボールの選手以外あまり背が高くないし身体も大きくないし。
これならマンツーマンで勝負しよう。
先輩に合図を送って先輩が散り、相手選手に張り付いた。
既に私はボールを持った2年の選手に張り付きプレスをかけている。なかなかパスを回せない状態。
そこに更に他のフリーの選手に先輩がマークに付きパスコースがなくなる。
「くぅ、どうしよう……」
「自分で攻めないの?」
こっちの囁きに無理にシュートを打った。当然ゴールは入らずリングに当たって弾かれた。
先輩がそのリバウンドを取り、私も美亜ちゃんも走り出した。
美亜ちゃんに向けてロングパスが来てカウンターが成功する。そのままドリブルでゴール下に向かう。でも向こうのセンターがもうゴール下に戻っていた。
ゴール下に入ろうとした瞬間……後ろにいた私に美亜ちゃんがバックパスし、それを受け取った。
すぐに私の所にさっきマークしていた人がディフェンスに付いた。
「いっくよぉ、そぉれ」
その場でフェイドアウェイシュートを打って、そのボールがリングを通過した。
これで2ポイント先取した!
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キャプテンの佐藤です。
今服部達がかなり優勢な状態で勝ってます。そろそろメンバーチェンジして1年達を出さないと……
「そっちのポイントガードとシューティングガードの1年すごく上手いね」
「ああ、服部と三条ね。次期主力だよ。
この間の地区大会で優勝したあそこの学校もスカウトに動いたくらいだからな。あそこのキャプテンの鈴木が悔しがってたよ」
「え?あそこにスカウトされたら普通行くでしょ?全国だって何回か行ってるとこだし」
「だよな。でも家から近いからってうちに来たんだって」
「羨ましい」
服部達は別にバスケで将来やっていきたいってわけじゃないみたいだからうちに来たわけで本当にラッキーだ。
それに服部の両親の出身校ってのもあったんだろうな。
うちとしては全国狙ってるわけじゃないけど、鈴木のとこには一度は勝ちたい。私は無理だけど、服部達が主力になれば勝てると思ってる。
「練習試合だけど、今のメンバーであそこの1年2年のチームに勝ってるから来年以降楽しみなんだよな」
「自分で勝ちたいじゃないの?」
「無理だって。練習試合の時だって、この間の地区大会だって負けたんだから。
戦力的にまだ差がありすぎ。3年の戦力差が大きいからな」
「ふ〜ん。でも、まだ引退しないんでしょ?」
「そうだね。やっぱり自分で勝ちたいしね」
そう、自分で勝ちたい。私だけじゃない、3年みんなそう思ってる。
ウインターカップの予選が最後だからなんとか勝ちたい。服部達の力を借りてでも。
「いいな、それだけ目標があって。うちなんか3年はほぼ引退してるようなもんだよ。この練習試合が引退試合みたいなもんだし」
「その引退試合の相手がうちでよかったの?」
「いいのいいの。勝ち負け関係なく全力を出せればいいから」
「そう?じゃあ、こっちも全力で行きますか」
合宿に協力してくれたのはそういう意味があったのね。私達もお返しということで全力を出さないといけないな。
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第1クォーターが終わり程よい点差で終わった。
相手はゲームメイク出来る人がいないみたいで、ミドルレンジからのシュートを打つって戦法みたい。センターの人も3対1だと勝てないからってゴール下に入ってこないし。
これだとシュートが外れたらもうリバウンドをこっちに取られてしまうよ?
それでボールをこっちが押さえて結局得点されてる。
第2クオーター以降2年の先輩を1年のチェンジして、マンツーマンで抑え込むのをそのまま続けた。マンツーマンは相手が動けば自分も動かないといけないからスタミナの消費が大きくなるかもしれない。
相手の方がいくらかスタミナがあるみたいでよく動いてくれるから、うちの他のメンバーの動きが徐々に悪くなっていった。これはスタミナ不足のうちのメンバーを鍛えるにはいいかも。
でも、私と美亜ちゃんは全然問題ないけどね。
そんな状況なんで動きの悪くなった人のとこから攻められて、点を取られることが増えてきた。
私の方は美亜ちゃんを使って点を取るのは簡単だったけど、それじゃあ意味がないから他の1年を使って攻めるけど、ディフェンスに阻まれリバウンドも取られてなかなか点が取れなかった。
それでも時々私と美亜ちゃんで3Pシュートを決めて点差はあんまり変わってないけどね。
第4クォーターでは残ってる2年をお互い出して、インからもアウトからも攻め試合らしい試合になって終わった。
最後に全員集まってキャプテン同士の試合の感想が伝えられ、うちの1年はスタミナ不足、相手はゴール下に入れないのが問題と言われた。
その後はお互いに気になることの質問タイムとなり、私と美亜ちゃんに質問が集中した。中には「婚約者がいるって本当ですか?」って聞かれたけど、誰が言ったの?
「服部、三条!ちょっとこっちに来てくれ」
「はい、何ですか?」
何だろう?特に怒られるような事はしてないと思うんだけどな。
美亜ちゃんの方を見ると首を傾げてるので心当たりはなさそうかな。
「服部、三条。手を抜いてたりした?」
「へ?手を抜いてはいないですよ?調整はしてましたけど」
「調整?」
「はい。相手の戦力が分からなかったのでいつも通りのフォーメーションでディフェンスにしました。
でも、ミドルレンジでのシュートばかりだったのでマンツーマンのディフェンス重視で、第1クォーターである程度点を取ることにしました。ただ、取り過ぎない程度でですけど」
「取り過ぎない程度?」
「はい。第2クォーター以降点差がありすぎると相手がやる気をなくすかと思いまして。そうしないとその後の試合が面白くなくなるでしょ?
その後は試合経験の少ない1年や2年の先輩で点をとってもらうようにして、かといって負けたくもないので逆転される前に美亜ちゃんと私が3P狙ったって感じです」
「「……」」
何だろう?まずかったかな?私も首を傾げてみる。
「その2人、上手すぎるんじゃない?その子の狙い通りになってるじゃない。
うちでレギュラーと紅白戦すると結構点差が付いてすぐにやる気をなくすんだよね。だけど、今日は結構全力でやってるからおかしいなと。
その2人の話を聞いてたからもっと点差があってもおかしくないと思ったんだけど……そんなことしてたんだ」
「ダメでした?」
「うちとしては助かったけど。というか先輩である私達が考えてあげなきゃいけなかったかもしれないのに。私達もまだまだね」
「いやいや、こいつが凄すぎるだけだから。私も出来ないから」
「え~、だって、これってうちのパパが昔からやってたことですから、それを真似ただけですよ?」
うちはパパやママ、直くんの両親とバスケやフットサルをやってたから、パパ達のチームと子供だけの弱いチームとの対戦とかになると戦い方で調整してくれてたから。
流石に大会とかになると弱いところと当たってもそんなことはしないけど、練習試合しかも試合経験の少ない部員に経験を積ませるならこういう調整くらいは考えるようにしてる。
強豪校との練習試合ではそんなことは考えなかったけどね。
「もし、そんな調整が出来ないならレギュラーのオフェンスとディフェンスに分けてチームにして、そこに1年2年を加えて対戦するといいと思いますよ。
自分のとこのオフェンスやディフェンスの穴とかが見えてきますから」
「それもパパの教え?」
「そうですね」
「服部先輩ってのは凄かったんだなぁ」
### 続く ###




