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第09話-3 エレベーターの幽霊3

 ここに来た当初、藤井先輩も理事長さんの奥さんも顔色が悪そうだった。けど、神ちゃん曰く酷い霊障とかはなく全体的な雰囲気の変化による一時的なものだそうだって。

 今日、霊を呼び寄せる印を取り除けばその内落ち着くはず。

 理事長の奥さんが私の持ってきたお土産のパウンドケーキを食べて、いくらか顔色が良くなってるのを理事長さんが気付いた。


「ばあさん、顔色が良くなってるな。どうしたんだ?」

「こちらの子が持ってきたパウンドケーキを食べたら少し気分が良くなったのよ。紫乃ちゃんも食べてみて」

「そうなんですか?じゃあ紅茶のを……美味しい。服部さん、美味しいよ。それに確かに気分が少し良くなったかも」

「先輩、私も食べていいですか?」


 咲良ちゃんも抹茶や紅茶のパウンドケーキを摘み始めた。咲良ちゃんはまだここの影響を受けてないから特に変化はなさそうだけど。

 私達はよく食べてるので理事長さんとこのお菓子を摘んでる。いつも食べないお菓子だから美味しいね。




 休憩も終えてまた廊下を歩いて、例の霊を呼び寄せると言われてる印を探してく。藤井先輩も少し元気になったので手分けして探す。

 先ずは掲示板を見てみるけどそれらしいものは無し。

 直くんが注意深く探すと2枚重ねて貼り付けてる掲示物があった。ゴミの回収日の告知に重ねてある。

 その下になってる紙を取り出してみると……変な図形が描かれてた。


『それじゃな。その印がそうじゃ』

「みんな、これがそうだって。同じモノを見つけてね」

「「分かったよ」」


 各階の掲示板には同じように他の掲示物に重ねて貼り付けられてた。廊下も消火栓の扉の内側に貼り付けてあった。

 エレベーターの中は壁を保護するクッション材の裏に張り付けられていた。ご丁寧に3方向全部に。


 とりあえずこれで全部かなと思うけど、しばらく様子を見てもらおうかな。


「これで全部だと思うので、後は燃やして処理すれば終わりになりますよ」

「そうか。それは助かった。じゃあ、燃やしてしまおう」

「でも、誰がこんなに貼り付けただろうな?英子」

「さあ?このマンションに関係がある人がやってるはずだと思うけどね。大ちゃん」

「服部妹、三条、マンションに住んでる人は当然みな幽霊に影響を受けてるわけだよね?」

「その人の能力次第ですけど、自分で結界とか張れたり体質的に全然影響を受けない人なら大丈夫でしょうけど……」

「そんな人でもこんなに幽霊がいるのは嫌がると思いますよ。他人が受けた影響で物理的に自分も影響を受けることはあるし。ね、英子」

「二次被害って言うことか……」


 そう、例えば影響を受けた人が火事を起こしたり水漏れしちゃったり通り魔事件を起こしたりして、その被害を自分が受ける可能性がある。

 二次被害までは防げないかもしれない。結界ったって万能ではないから火事や水漏れまでは防げない。通り魔なんてそれこそどうなるか分かったものじゃない。


「そういうことです。自分が影響を受けたくなければ極力マンションの外にいると思いますよ」

「となると……ここに住んでいないけど関係がある人間か。居住者の知り合いか、普段から出入りするマンション関係者か」

「理事長さん、居住者の知り合いだと嫌がらせ目的の可能性が高いですけど、こんなに広範囲にする必要はないと思いますよ。知り合いの家だけにすればいいし」

「そうだよな、直樹。

 マンション全体にこんなことをしたって霊感がないと結果が分からない。自分のマンションに幽霊がいっぱい出るとか人に話したがらないだろうから、確認手段はあまりないしな」


 霊感がある人でもなければここの現状は分からない。今ここにいるメンバーでも私と美亜ちゃんしかいるのが視えてないから。

 そんな状況で確認する方法は……防犯カメラとかデジカメで撮ること。

 咲良ちゃんが時々スマホで撮ってるけど、そんなことをしてたら不審者って言われるよ、普通。


「君達に言う通りだな。マンション全体で嫌がらせを受けるようなトラブルは聞いてない。個人の家に嫌がらせするのに全体にこんなことをしてたら、不審者で見つかってもおかしくないしな。

 今住んでる人はほとんど持ち家だ。資産価値が下がったら売れなくなるから人に話すことはまずないだろうから、居住者から結果の確認は難しいと思う」

「幽霊の問題もたまたま視えた居住者の連絡と防犯カメラに映っていたことで分かったことですよね?」

「そうだね。と、なると……防犯カメラが見れる人が関係している可能性があるって事になるのかな?」

「可能性としてはそうですね。幽霊がよく視える人なんてそうそういませんからね」


 多分そうだと思うな。

 防犯カメラ以外でマンション内を頻繁に撮影している人なんて普通いない。何かの工事の調査の時くらいって理事長さんが言ってた。

 それ以外の人がいればそれはもう不審者でしょ?

 何のためにそんな事をしたのかは分からないけど、わざわざ何カ所にもあんな印を貼り付けているのは意図的に何かしたかったんだろうなぁ。

 何かしたかったのであればまたやっちゃう?


「これってやった人が意図的にやったのならまたやったりするかな?」

「どうかな?嫌がらせや幽霊を視ることならまたやるかもしれないね?」

「う~ん、印を剥がしたことを言わないで、幽霊が減っていなくなったりすれば、貼り付けた奴が確認に来るかも?」


 それなら……


「理事長さん、私達に頼んだことを知ってる人って多いんですか?」

「管理組合の理事と管理会社の担当さん、管理員さんくらいかな。10人いないくらい」

「じゃあ、はっきり分からなかったってフリをしてもらって、幽霊が減っていけばまた動き出すはず。

 同じ所に貼り付けるかは分からないけど、エレベーターの中はまた貼りそうだから証拠が残るんじゃないかな?」

「とりあえず、上手くいかなかったことにして時々防犯カメラを確認することにしよう。また、増えてくるか次第だがそのまま収まるならそれで良しとするか。

 呪術は犯罪として問えないからね」

「私も時々また貼り付けてないか確認します」

「よろしくね、紫乃ちゃん」


 幽霊を呼び寄せる印を貼り付けた人も理由は分からないけど、とりあえずこのまま幽霊の数が減ってその後どうなるかを見守ることになった。

 もしかしたらまたやるかもしれないし、その辺は神のみぞ知るって奴で放っておくしかないかな。

 何か問題があればまた見に行けばいいし。




 そして、幽霊を呼び寄せる印を取り除いて1週間程経ったけど、幽霊はめっきり減っていなくなり、幽霊が目撃されたり防犯カメラに映ったりはしていないそう。

 マンションの雰囲気もかなり元に戻ったらしく、元々のいい感じらしい。藤井先輩の顔色も日に日に戻っていってたし、理事長さんの奥さんも同じだったって。

 やっぱりあの印が原因で合ってたみたい。

 今のところまた元に戻るような状況にはなっていないから、何も起こらなければそのまま様子見をする。


 で、さらにしばらく経ったあるお休みの日、いつもの心霊映像を視聴する。パパがまた新作を借りてきた。

 美亜ちゃんの家の神社のバイトもないし、美亜ちゃんもうちに来て鑑賞会。パパが前日から準備しておいたお菓子を出してお茶にする。


 準備が整い、いつものようにテレビの前にみんな揃って「本当にあったかもしれない呪いのビデオ204」の鑑賞を始める。

 3本ほどビデオを観た後、人気があるのかシリーズになってる「監視カメラシリーズ」が流れ始めた……


「あっ!なんか見たことあるね、この場所」

「えっ?ほんとだ、見たことあるね。どこだっけ?」

「確かに見たことあるな、大輝、分かる?」

「藤井先輩の所だろ、幽霊を呼び寄せる印のとこ」

「「「ああ、そうだ、あのマンション」」」

「この間見せてもらった映像もあったぞ」


 へ?そう?そういえば観たことがあるような。

 確かに同じエレベーターや廊下の映像があった。でも何で?

 誰かが投稿したんだろうけど、防犯カメラの映像って勝手に持ち出していいの?


 映像の内容は、とあるマンションで幽霊が何箇所で何体も現れるというもの。事故物件でもなく元々墓場などの曰くのある場所の上に建てられたわけでもないマンションに何が起こっているのだろうかというものだった。

 ただ映像を送っただけなんだろう、妙な解説が入ってないみたいだ。

 幽霊が多数現れてるだけだから特に注目はされず、呪いのビデオの調査対象にはなっていなかった。なってたら制作会社の人が来てただろうけど。


 でも、誰がこの映像を呪いのビデオの所に送ったのだろう?問題になりそう。

 先輩にこのビデオの情報をメールで送っておいた。理事長さんに伝えてくれるでしょう。




 後日、理事長さんと「本当にあったかもしれない呪いのビデオ204」と防犯カメラの映像を確認することになった。確認した結果、同じ物だと判断された。

 流石に防犯カメラの映像が許可もなく外部に流れたということが問題となり、理事会で誰が防犯カメラの映像を呪いのビデオの所に送ったのか管理組合で調査するということになったらしい。

 そのついでに誰が幽霊を呼び寄せる印を貼り付けたのかも調査することになった。


 その結果、調査したら犯人は管理員だということが分かった。

 この人も心霊映像マニアで霊道を変更するマークというものをネットで見つけ、実際に効果があるのか試したかったらしい。ただ、それを自分の住んでいる所で試すのは怖かったらしく、働いているマンションで試したんだって。

 防犯カメラで確認も出来るし都合が良かったとか。

 その上、調子に乗ってしまい、上手く心霊映像が防犯カメラで撮れたから小遣い稼ぎのつもりで送ったらこうなった。

 当然、管理組合や派遣した管理会社で問題になるわけで、やっぱり辞めさせられた。


「……ということになった。迷惑かけたな、服部、三条」

「いえ、探偵ものみたいで楽しかったですよ。ね?美亜ちゃん」

「うん。でも、あんなもので幽霊が引き寄せられるなんて不思議ですよね」

「私は防犯カメラやスマホでだけど、実際に心霊映像が視えて楽しかったです」

「咲良ちゃんは遊びに来てただけだもんね」

「てへへへ」


 これでマンションの幽霊問題は解決。私としても上手くいって良かった。

 元々報酬をもらうつもりでやってることではないんだけど、気に入られたみたいで時々女バスにスポーツドリンクの粉末とかお菓子とか差し入れをもらえるようになった……


今回は心霊現象回です。

マンションは心霊現象のよくあるスポットの1つです。実際に起きてるかは別ですが。

事故物件だったり防犯カメラに映ってたりで幽霊が観れます、多分。

まあ、最近のは作り物っぽいのが多いですけどね。


霊を呼び寄せるとか心霊現象を起こす印なんてのも時々あるみたいで某呪いのビデオや怖い話とかに出てきたりします。

古い呪術にあるもので実際に起きるかは不明ですけど。


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