表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/127

第09話-2 エレベーターの幽霊2

 防犯カメラのモニタがある管理員室に入る。

 みんなこんな部屋に入ったことはないから、私達はキョロキョロと部屋の中を見てた。

 今日は日曜日なので管理員さんはお休みだとか。


 テレビの電源を入れたら、各防犯カメラの映像が映っていた。その中から先ずはエレベーターのカメラ映像だけを表示させて、録画された映像を流してくれた。

 理事長さんがメモを見ながら録画した時間に合わせてる。そして再生が始まった……


 テレビには、エレベーターの奥からガラス窓がある扉の方へ向いた防犯カメラの映像が映ってる。

 エレベーターが下から上に移動中、正面に見えるガラス窓の向こうの廊下に……いた、幽霊が。

 エレベーターに乗ろうとしてるかの如く、扉の前で待っていた。

 この映像では幽霊が待っていた階には止まらず、エレベーターには乗ってこなかった。でも、他の階にも幽霊が待っていた……


 理事長さんがまた別の時間のエレベーターの映像に切り替えた。

 今度は……エレベーターのカゴの扉と外の扉の間に挟まっていた。

 う〜〜ん、シュールだなぁ。そんな所に挟まらなくてもいいのに。


「確かに映ってるけど、これくらいなら放置でいいと思うくらいだよね」

「そうね。こういうのが何回防犯カメラに記録されてるかにもよるけどね」

「あ〜、そうだね。

 いつからでどのくらい残ってるんですか?」

「いつからっていうと2ヶ月くらい前からかね。変な人がいるという話になってね。防犯カメラを確認するとこういう映像がいっぱい出てきてね」

「ほう、すごいですね。心霊映像だらけ」


 予想以上にいっぱい映ってるね。これじゃあ心霊映像としてのありがたみが……

 普通に人がいますってくらい幽霊がいる。幽霊っぽい人ってわけじゃないよね?


「エレベーターの所だけではないんですよね?」

「そうなんだ。ただ、カメラ的に一番映ってるのが多いんでね。見てもらうにはちょうどいいと思ったんだよ。

 他にも各階の廊下の映像もいくつかある。このリストにどのカメラで何時頃映ってるかまとめてもらってる」

「おい、なんだよこの数。映りすぎってもんじゃないだろ。

 幽霊の方が多いくらいだから、人の方が幽霊かって感じだな」

「大輝、そうだね。何かっでここに集められてるとかじゃないとこんなには映らないだろね」

「他にもデジカメで撮ったり写真にもこんな感じだよ」


 うわあ〜、適当に撮ったんだろうけど、目の前に写ってるとか怖いだろうな。何枚か写真を見てみたけどほとんど何かしら写ってる、しかも違う幽霊が。

 もう、幽霊マンションで売った方がもの好きな人に売れそうな気がするよ。


「これなら幽霊マンションで売りに出した方がオカルト好きに売れそうだよね?」

「咲良ちゃん、私も思ったよ……言わなかったけど」

「へへへ」


 咲良ちゃんのような人には一定の需要があるだろうけど、今住んでる人が困るし耐性のない人は辛いよね。

 それに本当に引き寄せてる何かがあるなら、今後どんなのが来るか分からなくて危なすぎる。人によっては体調に影響が出るよ。藤井先輩にはもう少々出てるみたいだし。


 その後もしばらくリストを見ながら直くんが防犯カメラのレコーダーを操作して心霊映像を確認していく。

 理事長さんが直くんの素早い操作に感心しながら、建物のどの辺にあるカメラか教えてくれる。大ちゃんがそれを大体の立体図に起こしてくれた。

 そこからリストを見て映ってる数を確認して、偏って数が多い所がないか調べるけどエレベーターのカメラが一番多いみたい。動いてるからっていうのもあるのかもしれないけど。


 大体チェックしたから実際にマンションの中を歩いてみる。

 屋上から下へ移動中、理事長さんに事故物件とか孤独死とかあるのか聞いてみた。


「管理会社からの報告だと特にないね。廊下とかエレベーター内で突然死や事故死、自殺、殺人事件なんてのもね。

 そういうのは警察が関わるから誰も知らないってことはないと思うよ、こういうマンションだと」

「そうですか……それにしても多いよね、美亜ちゃん」

「すごいね。こんなにいるのって見たことない。もう10人くらい視てるもの。ゾンビ映画のゾンビの群れの中にいるみたい」

「美亜、どこ?どこにいるの?」

「そことかあそことか、理事長さんのすぐ目の前とか」

「ひぃぃ」


 視えない理事長さんにそんなことをいうと驚くよね。実際私もそう視えるんだけど。

 大ちゃんや直くんは視えないけどなんとなく分かるみたいで、そういうのは避けてるから急に進路が変わったりするとそこにいることが多い。


 歩いてると気になるとこはいくつかあるけど、ぱっと見何がおかしいということはない。美亜ちゃんもいくつか同じ所が気になってる。

 途中住んでる人に会うけど、藤井先輩が年配の人に随分可愛がられてる感じ。孫みたい。


「藤井先輩ってここに住んでる人に可愛がられてますね」

「そりゃあそうだよ、紫乃ちゃんはここのアイドルだったからね。

 10年前にここが出来て住み始めた頃、小さい子が紫乃ちゃんだけで私くらいの世代が孫のように可愛がってたから」

「アイドルとかやめてくださいよ。恥ずかしいです」

「ははは」




 一通りマンション内を歩いて回ったけど、私と美亜ちゃんは最後はげんなりしながら歩いてた。案内されている間に80人くらい幽霊を見た。

 う〜〜ん、やっぱり予想以上にいた。居過ぎ。お化け屋敷以上だよ。

 お化け屋敷は人間のキャスト以外に何人か幽霊が紛れてるけど、ここは紛れてないからなぁ。


 途中、照明がチカチカしてるところが数箇所かあった。理事長さんはLED照明に換えたんだけどなぁって言ってて、器具には問題ないけどチカチカするらしい。

 電気製品にも影響を与えるほど幽霊が集まって来てるみたい。あんまり良くない状況ね。


 行動的にはエレベーターに向かって廊下を歩き、エレベーターに乗って一番上の階まで行って屋上を目指すようだった。


 休憩ということで理事長さんの家にお呼ばれした。

 理事長の奥さんがお茶とお茶菓子を振る舞ってくれた。私はパパに手土産として持たせてくれた抹茶、紅茶のパウンドケーキを奥さんに渡した。


「それでどんな感じかな?」

「歩いてると80人くらい幽霊を見ました。気になる所も数箇所ありましたよ。ね、美亜ちゃん」

「うん、エレベーターの中と各階の廊下に何箇所か……

 多分何か引き寄せるような物があるんだと思う」

「だよね、美亜ちゃん。それがなくなれば多分しばらくすれば落ち着くと思いますよ」

『じゃな、アレは霊を呼び寄せる印が書かれてそうじゃな。

 前に問題がなく最近も変わったところがないのなら隠すように書かれとるんじゃろう。

 問答無用に呼んどるから、そのうち悪いものが来るかもしれん』


 そういうシロモノなの?どこから調べてくるんだろうね?


「どこかに隠すように印が書かれてるっぽいですよ。後で探しましょうか」

「そうか、助かるよ。ま、しばらくゆっくり休憩してからにしよう」


 それで終わるはずだけど、また誰かが書いたりしたら同じことが起きちゃう。時々誰かにチェックしてもらわないといけないね。

 でも、誰が書いたんだろう?

 今もこの部屋も通り抜けていく幽霊がいるんだよ?

 そのせいもあってだと思うけど奥さんの方が顔色が悪い。藤井先輩と同じ感じ。


「ねぇ、英子。そんなにいたの?」

「いたよ。今も部屋の中を通り抜けたりしてる。

 マンションの中を歩いてる時に大ちゃんや直くんが右に行ったり左に行ったりしてたでしょ?」

「え?そういえば……なんかふらふらしてたから具合が悪いのかと思ってたけど」

「あれね、ほとんど幽霊を避けてたんだよ、視えてないのに」

「はあ?ということは……本当にすごくいたってこと?

 でも、視えてないのに避けてる?大輝くんや宮崎くんはどういう感覚してんの?」


 不思議に思うよね。

 実際、大ちゃんも直くんも咲良ちゃんも視えないから本当に避けてるか本人達は分からないけどね。

 でも、視えてる私と美亜ちゃんにしても不思議だよ。


「それは分からないなぁ。2人ともいつの間にか身に付けてるからなぁ」

「うんうん、英子ちゃんを守るためにそばにいたら自然に身に付いたみたいだし」

「そうだな。俺達も視えてないから避けてる感覚もないけどな。英子曰く避けてるって言うだけで」

「大輝くんも宮崎くんもほんとに避けてるよ。最初の頃、なぜか幽霊を避けてて不思議に思ったから」

「「マジか」」


 現状の幽霊体験を話し、お茶とお茶菓子をいただきゆっくり休憩出来た。

 理事長さん達はお土産のパウンドケーキをお茶菓子に出して、美味しいって食べてくれてた。

 そのおかげか、理事長の奥さんの顔色が少し良くなったみたい。私も手伝ったからいくらか効果があったのかも。


### 続く ###


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ