第01話-3 こっくりさん3
「「ただいまぁ」」
「おかえりなさい。おやつあるからね、美亜ちゃんと食べなさいよ」
「は〜い」
スーパーで買い物をして家に帰り着いた。ママは仕事中だけどちょうど事務所から出てきてた。
美亜ちゃん、おやつがあるんだって。でも、太っちゃいそうだよね~
3階にある自分の部屋に上がって、美亜ちゃんと宿題と予習を始める。
私、ちゃんと勉強してるからね?成績も悪くないよ?
美亜ちゃんとお互いに教え合いながら宿題を終わらせた。
一段落して神ちゃんを呼び出す。
「神ちゃん、ちょっといい?」
『なんじゃ?』
自分の中に取り憑いてる神様を呼び出す。
自分の部屋なら神様といくら話しても問題なし。美亜ちゃんもうちの家族や直くんの家族、おじいちゃんの事務所で働いてる葛西さん(結婚してるけど仕事上旧姓を使用)も私に神様が取り憑いてるのを知ってる。
自分の部屋にいる限りは誰も私がおかしな独り言を言ってると思わない。
さっきのこっくりさんの話を神ちゃんに聞いてみる。
「ねぇ、さっき学校でこっくりさんしてたの見てるよね?」
『おお、見とったよ。大輝の好きな人を聞いた時におかしくなった事を聞きたいんじゃろ?』
「そうです、神様。やっぱり私のせいですよね?」
『そうじゃのう。確かに美亜ちゃんのせいなのは確かじゃ。
でも仕方ないことじゃろう?大輝の好きな人のことなんか聞きたくないじゃろう?』
「はい」
『そういうことじゃ。美亜ちゃんの霊感も多少相まって集まってきてた情報が一気に霧散して暴風になっただけよ』
「「情報?」」
神ちゃんが学校でのこっくりさんがどういうことになっていたのか解説してくれた。
こっくりさんは実は残留思念のアーカイブになった集合体から情報を引き出すやり方ということ。学校はたくさんの生徒や教師が毎日集まる場所だから、そういった人達の思念が学校に残って集まりやすい。
その思念には強い感情の情報がよく残る。恋愛感情、憎悪、悲しみ、嬉しさ等はその代表格。試験問題も生徒や教師の様々な感情が乗りやすく、アーカイブとして残るらしい。
ただ、個人情報は感情が乗らない分残りにくい。
そして……誰が始めたのか知らないけど、学校で「こっくりさん」という手段を使って学校に残ってる残留思念にアクセスするようになった……らしい。
学校程長時間大多数の人が集まる場所はそうない。感情の乗った情報が多数集まるし、好奇心の強い子供が多くてこっくりさんが自然と実行されやすい。
それが「こっくりさん」という現象。
でも、必ずしも正確にアクセス出来るわけじゃなくて、人の想い人とかは同姓同名の人がいるとどちらの情報を知ることが出来るか分からない。間違える可能性がある。
試験問題も欲しい時の試験問題とは限らない。毎年行われている試験は何年の試験問題かは不明なのだ。
そして、大ちゃんの好きな人について問いかけた時に教室が荒れた原因についても神ちゃんが説明してくれた。
やっぱり美亜ちゃんの拒否反応が原因。
激しく聴きたくないと思う人がこっくりさんをしている中にいると、集まっていた高密度の残留思念が拒否反応で一気に霧散して低密度になるため台風の如く荒れるそうだ。特に今回霊感の強い方の美亜ちゃんが参加したため密度の低下具合が極端に低くなって酷くなったんだって。
直接美亜ちゃんが直接何かをしてそうなったわけではないんだよ。
どうしてそうなったかは私も美亜ちゃんは納得してる。美亜ちゃんが大ちゃんの事を好きなのを知っているから。こっくりさんとはいえ、大ちゃんが誰を好きかなんて聞きたくはないよ。だから美亜ちゃんの拒否反応は分かる。
でも美亜ちゃんが大ちゃんを好きだって話を大ちゃんには話していないし話す気はない。不粋だもんね。
実は大ちゃんの想い人についても知っているから、そのうちくっつくと思っているのもある。美亜ちゃんがお姉ちゃんなってくれると嬉しいし。
という事で、美亜ちゃんと大ちゃんの2人がくっつくところを神ちゃんと一緒に楽しみに観ていることする。
実は一緒に少女マンガを読んで盛り上がるくらい、神ちゃんは結構人間くさいんだよ。
こっくりさんの話は終わって美亜ちゃんも落ち着いてくれた。
次の日の予習も終わって夕飯の準備をする時間になった。
ママはまだ仕事中だから食材をカットして準備をしておきましょうか。美亜ちゃんと一緒にキャベツやじゃがいも等を切ったり皮を剥いてバットに乗せて冷蔵庫に入れておく。
美亜ちゃんが手伝ってくれてるけど、手伝うだけで帰るわけじゃない。今日も一緒に夕飯を食べる。
美亜ちゃんのお父さんが自分の家の神社の仕事が忙しいから、独りで食事をしてると聞いてうちで食事していくことが多い。最初は美亜ちゃんも遠慮してたけどパパとママ、おじいちゃん達が説得してうちで夕飯を食べていくようになった。
パパも高校生の頃から両親が忙しくて帰ってくるのが遅かったからうちで食べていくようになってたんだって。だからパパはママと結婚する前からうちに入り浸ってたそう。普通は大して知らない男の子を娘に近付けないんだけどね。
「「ただいま〜」」
大ちゃんと直くんが帰ってきた。大ちゃんだ帰ってきたから美亜ちゃんがビクッと震えてる。緊張してるなぁ。
ちなみに直くんとこも忙しいからうちで食べていくよ。
「英子ちゃん、ただいま」
「直くん、おかえりなさい」
「直樹、英子、新婚夫婦みたいな雰囲気作るな!三条さんも困るだろ」
ぶぅ~、大ちゃんの意地悪。
「英子、教室で何かやったんだって?三条さんを巻き込んだんじゃないだろうな?」
「大ちゃん、信用してくれないの?たまたま起きちゃったんだよ。大ちゃんせいだよ」
「何だよ、それ?」
分からなくていいよ、大ちゃんは。
でも、何があったかは知ってるみたい。何だかんだいって私のことを心配してるし、美亜ちゃんのことも心配してくれてるんだよなぁ。
どっちかっていうと美亜ちゃんのことが心配なんだろうけど。
「おかえりなさい、大輝、直樹くん。これから夕飯作るから待っててね」
「ありがとうございます。大輝と宿題してますのでゆっくりで大丈夫ですよ」
「直樹くんは優しいわね。大輝なら早くっていうのに」
「言ったことねぇだろ」
「ふふふ」
ママが冷蔵庫に入れておいた食材で料理を作っていく。テキパキと作っているところを見ると、おばあちゃんが言っていた下手だったというのが信じられない。美亜ちゃんも今ママに料理を手伝いながら習ってる。いい、お嫁さんになりそうだよね、美亜ちゃん。
夕飯の準備が終わった頃……
「ただいま」
「正直くん、おかえりなさい」
パパも帰ってきてママとチュッチュッチュッチュッしながら部屋に着替えに行った。私と大ちゃんだけじゃないんだけどなぁ。
ダイニングでおじいちゃん達と一緒にパパ達が来るまで待ってから夕飯に……
「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」
後日……
こっくりさんで試験問題を手に入れたけテスト問題だけど結局役に立たなかった。
今回の小テストの問題ではなかったみたい。
「咲良ちゃん、小テストどうだった?」
「……問題が全然違ってた」
「ああ、やっぱり」
神ちゃんが言ってたみたいに今年の小テストの問題ではなかったみたい。
何年前のかな?
「何か知ってるの?」
「聞いたところによるといつの小テストの問題か分からない返事が来るんだって。だから、この間のこっくりさんのは去年とかその前のかもって」
「そうなの?細かく指定してれば良かったのかぁ」
「どうだろね?」
結局、手に入れた問題の情報しか勉強してなかった人達は……絶望してた。
普段から勉強してればいいのにね。
こっくりさんの設定について、他の話とは異なります。
学校に生徒たちの思念が残るというような作品が過去にあったので、それを派生させたような話にしてみました。
実際のこっくりさんは心霊現象ではないと言われたりしますが、物語の中では超常現象の方が面白いですよね。