第09話-1 エレベーターの幽霊1
この物語は当然フィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
オカルトなどの内容についても、世間での通例の解釈でないこともありますのでご了承ください
中間試験が順調に終わり、そろそろ梅雨になるかなってくらい曇りの日が多くなってきた。
だいぶジメジメ湿気っぽくって、髪が重い感じになって嫌だなぁと思う今日この頃。
中間試験最終日……
中間試験は私も美亜ちゃんも大ちゃんも直くんも皆問題なくいつも通り。多分全科目平均80点以上は取れてると思う。
ただ、私はいつもよりはいい点だったはず。と言うか勉強会で人に教える事でいい勉強が出来た結果なんだと思う。
そう思うと勉強会もやって良かったし、パパやママがなんで毎回のようにやってたのも頷けるよね。教えられるようになるためには自分もしっかり勉強しておかないといけないから。
試験も終わったから打ち上げに行こうと咲良達に言われたけど、部活の女子バスケ部の方があるから行けないと断った。その代わり、次の土曜日にならOKと話したらその日に決まった。
もうすぐ女子バスケの大会もあるから、部室の方へ美亜ちゃんと歩いて行く。
軽く今日の試験の答え合わせをしてると他の1年の部員も合流してくる。みんなと試験の結果の話をすると半分以上が良くなかったらしい。うなだれてた。
「バスケやってるからって勉強をいい加減にしていいわけじゃないよ?両方頑張らないとね?」
「服部さんの正論厳しいぃ。三条さんも試験の結果良さそうなんだよね?どう勉強してんの?」
「部活が終わって帰る途中スーパーで買い物して、家で夕ご飯の食材を切った後宿題と予習復習を美亜ちゃんとうちでやってるよ?」
「「「は?夕飯の準備もしてるの?」」」
「うん、私は小学校の高学年ぐらいからで、美亜ちゃんは中2からやってるよ。
時間がいくらでもあるわけじゃないから効率よくやるようにしてる」
「そうね。英子の家に行くようになってから一緒にやってるけど、だらだらやってる時間が無くなって集中してるから結構頭に入るよ?」
「集中力か……がんばろ?みんな」
「「うん」」
うなだれて元気ないのはあまり変わりはないけど、次に向けていくらかやる気が出たならいいけどね。
部室に着いて練習着に着替えようとしてたら、2年の先輩 藤井先輩が声をかけてきた。ちょっと顔色が悪そうだけど。
「服部、三条、部活終わったらちょっと体育館裏に来てくれない?」
「私達なんかやっちゃいました?」
「いや、特に問題は無いよ。
1年で目をかけられてるからもっと調子に乗っててもいいのに、どちらかというと大人し過ぎなくらいだけど。
悪いけどちょっと時間をちょうだい」
「「はい、いいですよ」」
特に何か注意されるわけではないけど、体育館裏とはちょっと怪しいかもしれない。
前回の練習試合で一緒に戦った先輩で、普段も優しいし指導もしてくれるいい先輩。
ただ、さっきも思ったけど何か顔色がちょっと悪いかな。何か悩み事があるとか?それについての相談なのかな?
それだと相談されても解決してあげられないかもだけど。
部活は久しぶりなので念入りにアップして基礎練だけで終了。試験期間中もランニングや柔軟などは欠かさずしてたから、身体は全然なまってはいないけど。
それと間もなく大会が始まるからスターティングメンバーとベンチ入メンバーが発表された。ベンチ入メンバーに私と美亜ちゃんも選ばれた。1年では2人だけだった。
嬉しいけど妬まれたりすると困るなぁ。美亜ちゃんもそんな顔してる。
それで今日は解散となった。部室は混み合ってるはずなので藤井先輩に連れられて体育館裏に移動した。
何の用なんだろう?
いつも体育館の幽霊さんとやり合う体育館裏に来たけど、ここはあまり人が来ない場所で静かだ。
いじめや内密の話をするにはいい場所。だから幽霊さんとここで話すことが多いんだよね。
で、藤井先輩が話を始めようとしたその瞬間……咲良ちゃんが現れた。
「おや、英子と美亜、先輩に体育館裏に連れてこられていじめられてたのかな?」
「咲良ちゃん、いじめられてないよ。何か用があるみたいだよ」
「そうなんだ。で、どんなご用で?」
咲良ちゃんの余計な茶々が入って話が進まない。
顔色も悪いようだから早めに終わらせた方がいいんじゃないかな?
「じゃあ、話をするか。
服部と三条は幽霊が視えるって本当?」
「一応視えますよ。ね、美亜ちゃん」
「はい、英子よりははっきり視えませんけど」
「そうか。なら頼みたい事があるんだ。
実は住んでるマンションに出るんだ……幽霊が」
「先輩!本当ですか?私視たいですよ」
「咲良ちゃん、落ち着いて……何か悪さしてるんですか?」
幽霊かぁ、基本的にどこにでもいるけどね。視える人には視えちゃうし。
何かしらの霊障を引き起こしてなければ放っておけばいいんだけど。
「聞いたところだと、防犯カメラに映ったり廊下にいるのが視えたり?」
「悪さしていないならそのまま放置でいいのでは?」
「数が多いのよ。マンションのエレベーターの各階にいたり、廊下をゾロゾロ歩いてたりするんだって」
「それだとマンション全体的に良くないかな」
「英子、普通におかしいよ。異常。何か仕掛けがあるんじゃない?」
「流石、英子と美亜。もう専門家だよね」
実際に何度か仕掛けがある異常現象を視たし、それを神ちゃんのアドバイスで解決した経験があるからね。他の人よりは経験がある分詳しいよ。
そんなにいっぱい幽霊がいる状況なんてないから、呼び寄せる何かがあるんだと思う。
「それを服部と三条で祓ってほしいってマンションの管理組合の人から頼んでくれってきたんだ。
頼めないか?」
「先輩、専門家じゃないんでお祓いは出来ませんけど、何か原因があって起きてるならそれを取り除けるかもしれません。それで良ければいいですよ?
でも、なんで私達がご指名何ですか?」
「分かった。とりあえず先ず視てもらってからって管理組合の人に話してみる。
服部と三条はうちの近所で有名だったぞ、祓い屋シスターズって」
「中学時代そう言われてたなぁ、そういえば。
じゃあ、次の日曜にお邪魔するってことで。美亜ちゃんもいい?」
「うん。特に予定もないしね」
「助かるよ、服部、三条」
中学時代以来久しぶりの幽霊退治。実際退治するわけじゃないけどね。
そこに幽霊が居なきゃいけない理由を取り除くだけで、祓って成仏させたりは出来ない。そんな能力はないし。
神ちゃんなら出来るかもしれないけど、今までそんなことはしてないんだよね。
「先輩、私も一緒について行っていいですか?」
「服部達がいいならいいと思うよ。他にも連れて来てもいいから、多過ぎなければ」
咲良ちゃん、あなたも好きねぇ。ほんと、オカルト好きだよね。
そんなに危ないことはないとは思うけど、大抵の女子はあまり関わりたくはないと思うんだけどなぁ。
そして、日曜日……
藤井先輩の住むマンションに来た……
どんよりとした曇り空でかなり薄暗く、昼間なのに外に面した廊下の照明が点いていた。その上、今にも雨が降り出しそうな感じ。
外からマンションを眺めてるけど、天気と建物の雰囲気が相まってホラー映画に出てきそう。小さい頃観た「仄暗い……」に出てくる団地のような危なさ。
イメージとしてはその後ろに落雷が見えそうなところなんだけど。
今日は私と美亜ちゃん、咲良ちゃんにプラスして、ボディガードとして直くんと大ちゃんが来てくれてる。合計5人。
このくらいかな、ゾロゾロ連れて歩いても不審で住んでる人に迷惑になるだろうし。
マンションのエントランスにまで来ると、藤井先輩ともう1人大人の男の人、おじいちゃんくらいの人が待っていた。
「藤井先輩、おはようございます」
「おはよう。よく来てくれた、服部、三条。
服部兄くんと宮崎くんはボディガードかな?後、橋本は暇つぶしだよな?」
「すみませ〜ん。オカルト好きなもんで。へへへ」
「すみません、理事長さん」
「いいよ、人数が多い方が怖くないだろ。
で、こちらのお嬢さんが噂の霊感少女さんかい?よろしくね」
このおじいちゃんが今回の依頼主代表ってことなのかな?
とりあえず最初に言っておくことを言ってしまおう。
「あの~、私達はお祓いが出来るようなプロではないので、原因が分かれば解決できるかもしれませんという程度です。
なので、解決しない場合もありますのでご了承ください。
ということで、どんな感じなんですか?」
「それは理解してるよ。学生の上にお金を払うわけじゃないからね。
とりあえず防犯カメラを見てもらおうか……」
### 続く ###