第08話-1 1学期中間試験勉強1
この物語は当然フィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
オカルトなどの内容についても、世間での通例の解釈でないこともありますのでご了承ください
文化祭の振替休日からしばらく経ったけど、そろそろ中間試験の時期……
私が子猫を保護して、うちで飼うことになってからもしばらく経った頃。
子猫の熱はその日の夜中にはかなり落ち着いて、次の日の朝には結構元気になってた。まだ、体力は戻ってないみたいだったからおとなしい。
もう1日様子を見ていると、学校から帰ってきた時には入れていたダンボール箱から逃げ出そうとするくらいに元気になっていた。
それでようやくお風呂で身体を洗うことが出来た。
初めてシャワーを浴びた時は硬直して動けなくなっておかしかったの。
診てもらった先生の見立てでは生後半年以上ということだけど、今ご飯はカリカリのドライフードを子猫用のミルクでふやかして食べさせてる。自分で食べれるようになったから良かった。
それ以外にチューブ入のアレを少し食べさせてみたけど、すごくまっしぐらに私の方に向かってくるようになった。それが可愛いよ。
健康診断もしてもらったけど、今のところ健康だって。猫のAIDSにも罹ってないって。
後はオスだから去勢するかどうかだけど、まだしばらく先だから考えておくように言われた。
猫のことは咲良ちゃん達にも伝わり、みんなが見たいっていうから撮った写真を毎日見せてる。
咲良達は猫カフェの猫を迎えたんだと思ってたみたいけど、地域猫でもない野良を引き取ったのには驚かれた。
見に行きたいとか言われたけど、もう少し落ち着いてからね。
そんな猫の騒動があった中、つい先日中間試験のスケジュールの発表があった。高校初定期試験だけど、中学時代もあったことだから特に慌てたりしてない。
ただ、1週間前には部活も中止となったから運動不足。放課後は買い物と夕飯の下準備が終わったらいつも通り勉強するだけだし。
しかし、咲良ちゃん達は「試験勉強どうしよう?」と慌ててるみたい。普段勉強してないの?
私も美亜ちゃんも普段から勉強しているから、特に慌てて試験前に勉強したりしない。事前に全体的に軽くおさらいするぐらいで、特別しっかり勉強しない。でも、獣医師になるなら、もっと成績を上げた方がいいかな?
大ちゃん達の方を見ると、委員長の河合くんから勉強を教えてくれって言われてるようだった。サッカー部だから仲いいもんね。
でも、メガネをかけて委員長の方が頭が良さそうなのに、大ちゃん達に教わろうとしてるなんて。
大ちゃんも直くんも断らないだろうな、面倒見いいし。
教えてもらえることになって喜んで小躍りしてる委員長を見て、回りの男子以外に咲良ちゃん達もいいなぁとか言ってる。
「「「「いいなぁ、私も教えてほしい」」」」
「英子、美亜、教えてちょうだいよ。」
「いいけど?うちでならいいけど、どう?
まだ休みの日は子猫の面倒を見ないといけないから出かけられないし」
「私も英子の手伝いをすることにしてるから」
「「「「「よろしくお願いします」」」」」
仕方ないなぁ。
家で教えられるなら問題ないよ。時間はあるし、クロの面倒を見ながらだけど。中学時代同様久しぶりに家で勉強会だね。
咲良ちゃん達、委員長、後は私と美亜ちゃん、大ちゃん、直くんで10人か。お昼ご飯も準備しないと。誰が作ろう?
「お昼はうちで作るから勉強道具だけでいいからね」
「いいの?教えてもらう方なのに。お昼は外で食べるとかコンビニで買っていくとかするけど」
「いいのいいの。うちはいつもそうだから。大ちゃんか直くんがメインで作ると思うよ」
「「「「「やった~」」」」」
うちはパパとママの頃からうちで試験勉強をする時、お昼ご飯はパパとママが作ってみんなに振る舞ってたらしいから今も同じようにしてる。
他にも準備する物があるけど、それはスーパーで買っていけばいいか。
委員長の方も大ちゃんから聞いてると思うから特に言わなくていいかな。
咲良ちゃん達が他の女子の羨ましがられてる。中学生の時もそうだったかな。うちで勉強したいって女子は多かったなぁ、大ちゃんと直くんの私服姿が見れるからって。
次の日曜日……中間試験の勉強の日。
うちで勉強するから勉強部屋の掃除をクロのかまって攻撃を回避しながら美亜ちゃんと軽くした。
勉強部屋は元々折り畳み式のローテーブルとテレビ、古いゲーム機があるくらい。映画とか心霊映像は家族みんなで観るから、1階のリビングの方に追加でスピーカーを付けたAV機器を置いてる。
ここのところ、クロの遊び場になってたからちょっと物が散らかってたりしてるんだよね。それを片付けたくらいで、ローテーブルを置いて準備は大体完了。
飲み物や摘むお菓子はキッチンの方に準備してある。
ピンポ〜〜ン
来たみたい。
咲良ちゃん達と委員長が玄関前にいた。
咲良ちゃん達女子は、咲良ちゃんが家を知っているからみんなを連れてきた。委員長の方は大ちゃんが住所だけ教えて自力でたどり着いたらしい。扱いが雑だなぁ。迎えに行ってあげればいいのに。
ちなみに委員長は手土産を持って来てくれた。親に持っていきなさいって渡されたらしい。
「英子、お父さん達は?」
「デートに出かけたよ。ショッピングモールに行って服を買ったり食事をしてくるって。夕方まで帰ってこないからみんな気楽にしてね」
「英子のとこって仲いいよね。そういうのいいね」
「高校時代からあんまり変わってないらしいけどね。その分、私達のことを構いすぎないからいいけど」
「まあ、大輝くんや宮崎くんが目を光らせてるからなんじゃない?」
「ははは。さあ、中に入って」
みんな家に入って2階に上がる。勉強部屋にみんなを通すとその広さに驚く。初めてきた人は大体驚くけどね。
「子供部屋1部屋でこんなに広いってすごくない?田舎の家の部屋くらい広いよね?」
「うん、20畳くらいあるかな。リビングの方が狭いくらい。
これと別に私と大ちゃんの部屋が別々に3階にあるよ」
「うわぁ、いいなぁ。うちなんか妹と同室だよ」
「こっちの部屋は?」
「パパの秘密基地かな」
「「「「「へ?」」」」」
ついでに言うと3階には直くん用の部屋もあったりする。直くんが泊まる時の部屋。
美亜ちゃんは泊まる時は私の部屋だけどね。
小学生になる前におじいちゃんが岡田家の建て替えをした。私達が大きくなってきたから狭くなったため。
その時に直くんや秀くんも遊べる子供の遊び場として最初は作ってくれた。中学生になってからは定期試験対策部屋になって、友達が来て勉強をする勉強部屋になった。
おじいちゃん的には最初からそう使うようにするつもりでいたみたい。
ちなみにおじいちゃんは家を建て替えたタイミングでおばあちゃんと二人で別にマンションを借りて住んでる。ここの1階には仕事の事務所としていつも来てるけど。
みんなが部屋に入ったところで抱えてたクロを離す。
おとなしくしてはいたけど、他の人が来て気になるのかそわそわしてたから我慢の限界かな。遊んでくれる人がいっぱい来たと思ってそう。
クロが床に降りてみんなの所を回っていく。そしたら咲良ちゃん達女子が歓声をあげた、可愛い可愛いって。まだ小さいから特に可愛いよね。
「服部さん、この子の名前は?」
「子猫の名前はね、『黒鉄』って言うの。まだ小さいからクロってみんな呼んでるけど。病気をしてたのを見つけて引き取ったから、ケガしたり病気にならないように頑丈そうな名前にしたの」
「クロちゃん、よろしくね」
もう元気にはなったけどまだ小さいから心配。だから名前に希望を込めた。
このまま元気になって、神ちゃんの使い魔になっちゃうのかな。
さて中間試験の勉強を始めよう。
大ちゃんと直くんが飲み物とお菓子、それと勉強会必須のラムネを持ってきたので、みんな勉強道具を出し準備する。
「ねぇ、このラムネは何?服部くん」
「それは脳みそへの燃料だ。脳みそはブドウ糖しか取り込まないんだよ。
それで、ラムネは80%がブドウ糖で出来てるから、勉強の時の脳みその燃料にちょうどいいからって父さんが持ってきてから常用してる」
「ヤバいドラッグか、それ」
「それでパパの友達は大学受験も乗り切ったらしいよ?」
「「「「「へぇ~、マジか」」」」
これでラムネの有用性を強引に納得させたので、適当に食べてもらう。
ちなみにこれであまり頭を使わないと身体に脂肪として溜まっちゃうので気を付けないといけないけど。
今日の勉強会の体制は、私と美亜ちゃん、大ちゃん、直くんが教える側、委員長、咲良ちゃん、他の女子達が教わる側で、群発頭痛の時の子、小林さんも来てる。
小林さんからはお父さんの経過は聞いてるので、近頃割と話すようになった。
成績については、委員長は大ちゃんが小テストとか中学時代の成績を聞き出したところによると、見た目成績は良さそうなのに平均点前後くらいでそれほど良くなかったらしい。
咲良ちゃん達も皆委員長に似たり寄ったり。咲良ちゃんが英語が苦手らしいく点数は今ひとつ。他の人も似たようなものだけど、英語はあまり好きではないらしい。今後英語は必要になってくると思うんだけどなぁ。
勉強を始めた最初は、大ちゃんや直くんに教えてもらってお近づきになろうってしてた女子で混雑してなかなか教えてもらえなかった。
「大ちゃんや直くんが人気なのは分かるけど、仲良くするために勉強会に来るのなら止めちゃうよ?」
「「「「「うっ、すみません」」」」」
だから、私や美亜ちゃんの方にも来るようになり、ちゃんと勉強を教えられるようになった。
委員長は事前に私達の得意教科を聞いておいて、教科によって担当を替えて教えてもらってた。委員長は私や美亜ちゃんとお近付きになりたいとかではなく、純粋に試験勉強のために来てた。
「やっぱ英語は難しいよぉ、英子や美亜はどうやって覚えてんの?」
「普通に?特別何かやってはないよ?ねぇ、美亜ちゃん」
「そうそう、普通に教科書や参考書で覚えてるけど……」
「そんなんで覚えられるの~?どうやって」
改めてどうやってかと聞かれると答えるのが難しい。普通にやってるだけだから。
「どうやってって……咲良ちゃんて英語嫌いだよね?だから覚えられないんじゃない?私達は特に嫌いということもないし」
「ああ、そういうのはあるかもね。でも、今更変えるのは難しくない?」
「そうでもないよ?パパとママの友達の山田さんの奥さんが同じように英語嫌いだったけど、今では英語を使うような仕事をしてるよ?パパの秘策で」
「どうすればそんな事になるんだよ、英子のパパに教えて欲しい」
山田さんの奥さん(旧姓 渡辺)は、うちのパパの指導のお陰で英語に目覚めたって。それが今やマンガやラノベの翻訳の仕事をしてるそうだよ。
「英語版のマンガを読んで覚えたらしいよ。英語版のコレクションもすごくてね、私も中学時代に借りて読んでたんだよね」
「そんな勉強法が?」
「日本語版と対比すれば覚えられるでしょ?」
「マンガが好きならいい方法だね。確かにやってみるのもいいか」
「うちにいくつかあるから試験が終わったら貸すよ。人気作だから知ってるやつ」
「読んでみる」
「「「「私も貸して」」」」
一応実績があるっぽい英語版マンガで英語に親しむ作戦をみんな実行する気になってくれた。
これで次の期末辺りで成果がいくらか出ればいいのになぁ。
この後ようやく勉強が軌道に乗り、みんなの勉強が進み始めた。
### 続く ###