第07話-1 デート1 前日
この物語は当然フィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
オカルトなどの内容についても、世間での通例の解釈でないこともありますのでご了承ください
文化祭2日目、ステージの出し物が終わりホームルームも終わって、今下校しようとしてたところ。
明日は振替休日なので咲良ちゃんが……
「どこかに出かけない?」
「直くんと出かけるんだよ。まだどこに行くかは決めてないけど」
「おや、それはお邪魔でしたな。休み明けに報告よろしくね」
「え〜、普通に出かけるだけだよ」
「いやいや、それデートだよね?」
「そうなの?」
いつも直くんと普通に出かけてるもんね。大ちゃんが一緒の時もあるけど。
明日は直くんとだけだけどまだどこに行くか決まってないよ。
「でも、どこに行くか決まってないからデートになるか分からないよ?」
「2人で出かけるならそれでデートでしょ?」
「そうなんだ。どこに行くのがいいと思う?咲良ちゃん」
「そうだね……映画や買い物、遊園地なんかよく行くよね。他にもいろいろあるよ。英子のお父さんは詳しいんじゃない?」
「多分、こういうことにはあまり干渉しないから自分で考えろっていうと思うよ」
絶対に教えてくれるわけじゃないけど、こういうのは自分で考えるのが楽しいだろうって言うだろうなぁ。
直くんと一緒に考えるのがいいからね。
「ふ〜〜ん、やっぱり、報告よろしくね。将来の私のデートの参考にするから」
「デートコースくらいは報告するよ。どうなるかは分からないけど」
「いいよ、それで」
でも……デートかぁ。そんな風に思って一緒に出かけたことないもんなぁ。
いつも買い物とか映画を観に一緒に行くけど、「デート」として行ったことはなかったもん。
どこに行こうかなぁ。
「美亜の方はどうするの?」
「今のところ予定は……」
「大ちゃんと出かけないの?多分、暇してるよ」
「え?」
「美亜、一緒にダンスも踊ったんだから誘って遊びに行ったらどうよ?」
「え〜?」
美亜ちゃんが顔を真っ赤にして驚いてるのを、私と咲良ちゃんが笑って見てた。美亜ちゃんは可愛いなぁ。
私と咲良ちゃんはくっつけようと思ってるんだけどね。
校門の所で咲良ちゃんと別れていつものコースで家に帰る。
スーパーに寄って、買い物ついでに店長さんに喫茶店の成功を報告し、お礼を言ってく。担任の先生からもよろしく言っておいてって言われてたし。
レジのおばちゃんも文化祭に来たみたいで、うちの喫茶店で食べて美味しかったわって言われた。
今日も夕飯の準備をしてから部屋に戻る。直くんと大ちゃんはまだ戻ってきてない。
美亜ちゃんと2人っきりだ。
「美亜ちゃんは大ちゃんのことは好きじゃないの?」
「え?」
「大ちゃんのこと、よく見てるじゃない?それにダンスも断らなかったし、好きなんじゃないかと思ってたんだけど」
「う〜〜、好きか嫌いかで言えば……好きだけど……」
「うちのママみたいに美亜ちゃんから告ったりしないの?」
「無理無理無理……無理です……」
え〜、大ちゃんは断らないよ、絶対に。それどころか喜んでくれるはず。
ダンスだって美亜ちゃん以外に誘おうとか思ってなかったんだけど。
大ちゃんの方ももっと分かりやすく誘えばいいんだけどね。
「大ちゃんが誘ったら一緒に出かける?そうならそう言うように仕向けたりもするよ?」
「え?それは嬉しいし、そうなら一緒に出かけるけど……なんで私と大輝くんをくっつけようとするの?」
そりゃあ大ちゃんが美亜ちゃんの事が好きだからなんだけど、直接聞いたわけじゃないよ?
うちのパパとママも、それに直くんも気付いてるんだよね。
だから応援してるし、ママとしては娘にしたいって野望もあるからなんだよね。
「う〜ん、それはね、美亜ちゃんがお姉ちゃんになってくれると嬉しいからかな。ママも娘になってほしいみたいだよ」
「へ?なんで?」
「いい子だからだよ!友達よりは家族の方がいつまでも関係が続くでしょ?」
「英子なら友達でも長く長く友達でいたいよ?」
「それはそれで嬉しいけどね」
そのまま大ちゃんとかうちのママとかの話をしながら、ママの仕事が終わる時間まで話してた。
ママがどう思ってるか話してると、美亜ちゃんが驚いて嬉しがっていた。早くにお母さんを亡くしたって聞いていたけど、お母さんに料理を教えてもらうのが夢だったみたい。くぅ~、可愛いなぁ。
そうしてたら大ちゃんと直くんが帰って来て、ママの方も仕事が終わったらしい。
私達も下に降りて、美亜ちゃんはママの手伝いに行った。
「直くん、大ちゃん、お帰り」
「英子ちゃん、ただいま。これお土産」
「英子、こっちもだ。こっちのは冷蔵庫に入れておいてくれ」
「ああっ!美亜ちゃんの好きなケーキじゃん。真琴おばちゃんのとこに行ったの?」
「ああ、試食の連絡が来たから直樹とサッカー部とバスケ部の奴らで行ったんだ」
ああ、私も行きたかったなぁ。どんなスイーツだったんだろ?
でも、お土産が美亜ちゃんの好きなケーキを買ってきたとはねぇ。点数を少しでも稼ぎたいんだよね。
直くんはいつものお店の大福や団子。私の好きな草餅があるよ。
ママと美亜ちゃんが夕飯を作っている頃にパパが帰ってきて、優子おばあちゃんもうちに来た。
これで夕飯の時間。
美亜ちゃんが楽しそうに盛りつけたおかずを持ってダイニングの方に来た。
今日のメインは肉豆腐で、副菜はポテサラ。簡単時短レシピで美亜ちゃんがメインで作ってたみたい。大ちゃんに美味しいって食べてもらいたいよね。
明日は振替休日だけど大ちゃんはどうするんだろう?
「直くん、明日はどこに行く?」
「先ずは映画を観に行こうか。今人気の作品をやってるから観に行こう?」
「いいよ」
人気作を今やってるんだ。あれかな。ちょうど観たかったんだよね。
流石、直くん。私の好みをよく知ってるよ。
「直樹、英子、映画か。楽しんで来いよ。僕達も文化祭の振替休日に初デートで映画を観にったよな。京子さん」
「懐かしいわね。告白した次の日に行ったわよね、正直くん」
「ねぇ、ママ達はどうやって付き合うようになったのかな?」
「そうね、22年前の文化祭2日目……」
教室で山田のおじさん達と遊んでたパパをママが連れ出したんだって。誰もいない特別教室の階段でママがパパに告ったんだって。
誰とも付き合っていなかったことは確認済みだったけど、断られないか心配で最初はお試しでということで付き合い始めたとか。
次の日の振替休日に映画を観に行って、食事をしながら話をして、家まで送ってくれたそう。
でも、それをおばあちゃんに見つかってて……
「その次の中間テストの勉強を一緒にすることになったんだが、京子さんの家でしなさいってことになって……」
「そうそう、初めて正直くんが家に来た時にはおじいちゃんが睨んでたものね、正直くん」
「普通、娘が男を連れてくればそうなるだろう。な、直樹」
「そう聞くけど、うちの母さんの所はそうならなかったらしいよ。喜ばれたって」
「その日におじいちゃんのパソコンがトラブって直せなかったのを正直くんがあっさり直して気に入られたのよ。料理も出来るって話したら料理を教えてもらいなさいって。それにまた連れてきなさいって言われたのよ」
「それからは毎日のように京子さんの家に来て夕飯を食べてたよ」
「「「「へぇ~」」」」
今もおじいちゃんとパパは仲いいもんね。よっぽど気に入られたんだ。
パパは確かにいい人なんだけど、それでもそんなに簡単に彼女のお父さんに気に入られるとか信じられない。
しかも夕飯という家族の団欒の中に入り込んでるなんて……
「パパ、そんなに毎日のようにママの家で御飯食べてて、英代おばあちゃんは怒らなかったの?」
「高2の時は独り暮らしだったのよ、正直くんは。英代さんは仕事に都合で転勤してて、真琴さんも一緒だったから」
「独り暮らしならパパの家で試験勉強すれば良かったんじゃないの?」
「そうだな。誰にも邪魔されずイチャつけたのに。その辺、父さんどうしてなんだ?」
「いきなり親もいない家に連れ込むとかダメだろ。やらしいことをしたいんじゃないかって思われるだろうが」
「確かに。正直さんはそんなことしませんよね。ははは」
パパだってその頃は男の子なんだから、キスやエッチなことをしたいとか思わなかったのかな?
「まだお試し期間だったし、自分の信念として不誠実なことはしたくなかったんだよ。
それでも大輔さんやうちの母さんは、学生の内に子供が出来てもいいとか言うんだぞ。高2の時、どれだけ苦悩をしたことか」
「向こうでおじいちゃんが『おいおい、そこまで言ってないぞ』とか言ってるよ」
「結局正直くんの家にはなかなか連れて行ってもらえなかったのよ。最初に行った時も30分ぐらいで帰ったし」
「それでも連れて行ったんですね。で、イチャイチャしたんですか?」
「そんなことしてないからね、三条さん。
猫カフェの帰りに寄っただけで、京子さんが僕の部屋でエロ本を探しただけだよ」
パパもやっぱり男の子だったんだ。ママを誰もいない家に連れ込んだなんて。もしかして……
でも、エロ本探しって……何か誤魔化してる?
私も直くんの家でも探したほうがいいのかな?
エロ本の話は見つからなかったということで、大ちゃんも直くんも「ああ、紙の本はないだろうな。電子版とかNASに保存してたんだろう?父さんならそうしてる」とか言ってた。
ママも「え?え?」とか言ってるけど、隠し場所が分からなかったんだろうな。
パパがこれ以上詮索されないように話を変えようとしてる。
### 続く ###