第06話-7 文化祭7 文化祭当日2 教室の出し物2
「メイドさん、注文いいかな?」
「は〜い。何になさいますか?っておじいちゃん達だ。パパとママは?」
「2人で回ってるよ。高校時代は出来なかったって言ってたしね。
オムライスとカレーを一つずつとサンドウィッチを2つね。お皿とスプーンを2つずつ追加してもらっていいかしら?」
「そうなんだ、信じられないけど。ご注文承りました。お皿とかもOKです。
ちょっと待っててね」
パパとママの方のおじいちゃんおばあちゃんが来たけど、家族が来るとやっぱり恥ずかしいね。
でも、パパとママが高校時代の文化祭で、一緒に回ってないなんてなんでなんだろう?あんなにラブラブしてるんだからあり得ないんだけど。
料理を出すのは大ちゃんにやってもらって、私は次のお客さんを案内することにした。でも、なんかチャラいというか問題を起こしそうな感じの人達だ。
いきなり私にちょっかいをかけようとしてきた。
「席に案内します。こちらへどうぞ」
「ねぇ、メイドさん。この後一緒に回らない。ねぇねぇ、いいでしょ〜」
「無理です。仕事中なんで。はい、メニューです。決まったら呼んでください」
「いいじゃん。他の人に働かせとけばさ」
「失礼します」
お客さんから離れようと向きを変えたら手首をつかまれた。
えっ?
「いいじゃん、ねぇ。遊ぼうよ」
「やめてください。先生、呼びますよ」
「へぇ~、先生が来る前に一緒に逃げればいいんだよ。ねぇ、行こうよ」
私が嫌がっているのに止めてくれない。
このまま一緒に行く気はないけど、ここで騒が起きるのも困るしな。最悪おじいちゃん達がいるから多分大丈夫だけど、嫌だなぁ。
「おい、出し物の邪魔をするなら出ていけ」
「そうだよ、スタッフに手を出すなら出ていってもらえるかな?」
「俺達は客だぞ。こっちの方が偉いんだ」
「今時まだそんなことを言ってんかよ」
「店もお客を選べる時代なんですよ。好ましくない客は退去させられるんですよ。知らないんですか?」
「なにぃ、俺の親父が誰だか知らないのか?」
大ちゃんと直くんが間に割って入って止めてくれた。
でも、なんかチャラい男達がベタなことをいい始めたけど、この人達大丈夫?
こんな公共の学校の教室で回りに生徒もいっぱいいるのに。みんなから下衆を見るような目で見てるけどね。
「それがどうかしたか?さっさと出ていってくれ」
「さあ、さっさと出ていってくださいね。先生がもうすぐ来ると思いますよ」
とか言ってたら逆上して偉そうにしてた人が突っかかって来た。
でも、大ちゃんと直くんが足を残して避けたので、その足に引っかかって転けた。
ドサッ
倒れた所にちょうど先生が入ってきた。
流石にみんなが見ていたので迷惑行為の証言はいっぱいあったし、おじいちゃん達も見ていたからすぐ取り押さえられた。
チャラい男達が連れいかれてる時に、教室内で歓声が上がった。
特に大ちゃんと直くんへの声援がすごかった。
美亜ちゃんもこちらに駆けてきて抱きついてきた。
そんなに危ないことはなかったよ?手首を掴まれただけだし。
「大丈夫だよ。いつもみたいに大ちゃんと直くんが助けてくれたから」
「それでも皆心配だったのよ」
「ごめんね。
でも、何かあれば神ちゃんが呪ってくれるしね。えへへ」
「もう」
「まだ始まったばかりだから喫茶店頑張ろ!」
私が元気に頑張ろうとしてるのがみんなに伝わって、徐々に雰囲気がもとに戻っていく。大ちゃんや直くん、美亜ちゃん目当てのお客さんだけじゃなくなってきて、料理が美味しいと口コミで流れたみたいでそっち目当てに来る人も増えてきた。
料理は頑張ったからね、なるべく簡単に美味しく出来るように。
メイドや執事、ギャルソン目当てに来るのよりは嬉しいよ。
あれからはちゃんとしたお客さんばかりで問題は起きなくて、料理を楽しんでくれた。
オムライスは時間で数食という感じで限定だったため数はそれほど出ていない。でも、カレーライスやサンドウィッチはかなり数が出てる。そのため、何度も私と美亜ちゃん、大ちゃん、直くんの1人か2人家庭科室の方に調理の手伝いに行ってた。
そうするとお客さんが減るからということで、委員長の河合くんが家庭科室の調理状況を教室のモニタに映すようにしてあった。
それが美亜ちゃんや大ちゃん達目当てのお客さんに受けて、お客さんの数が増えていったらしい。
大ちゃんや直くんがギャルソンや執事姿、美亜ちゃんがメイド服姿で調理してるのを見ながら、「料理男子、いいなぁ」「彼氏に作ってもらいたい」とか「メイドさんの料理食べてぇ」「注文すれば食えるだろ」とか話してたらしい。
う〜ん、河合くんここまでやるか。まあいいけど。
そんな感じで、私と美亜ちゃんがいる時にパパとママが来てくれた。午前中に来てくれて良かった。
「英子、美亜ちゃん来たよ」
「英子も美亜ちゃんもメイド服がよく似合ってるね。人気があるだろ、2人とも」
「美亜ちゃんは人気があるけど、私はみんなと変わらないよ」
「英子だって人気があるわよ、私以上に。それに調理シーンを映してるのを観て更に人気が上がってるわよ」
「あれかい?大輝と直樹が写ってるな。へぇ~、ライブクッキングみたいなことをしてるのか。面白いなぁ」
「格好いいわね、大輝も直樹くんも」
「だよね?ママ」
入口で話をしていると迷惑なので席に移動する。モニタもよく見える席に案内した。ここならよく見えるよ、大ちゃんと直くんが。
直くんのお父さんとお母さんももう来るらしくて4人席にしておいた。
パパとママは注文したサンドウィッチをお互いにあ~んしながら食べてる。
回りの男子や女子が「あの人がこの学校のレジェンド?」とかって話をしてる、そうは見えないよね。もういいおじさんだよ。
そうしてると直くんのお父さん達が来た。
「英子ちゃん、久しぶりだね。メイド服似合ってるよ」
「そうね。可愛いわよ。英子ちゃんがうちの直樹のお嫁さんになってくれるなんて嬉しいわ」
「えへへ」
「ちゃんと家事は鍛えてあるからね。いい嫁になるわよ、うちの英子は」
「直樹もちゃんと鍛えてるからな。昔の俺みたいに」
「ああ、助かってるよ。うちの家事をやってくれてるからな。本当は俺達がしなきゃとは思うんだけど」
回りがうちの両親と直くんの両親の話を聞いてざわつき始めた。
『服部さんが宮崎くんのお嫁さん?』『お互いの家公認かよ』『宮崎の奴うらやましいなぁ』とかよく聞こえないけど小声でひそひそ話してたり、スマホで他の人にこのことを伝えてたりするみたい。泣いてる人もいるんだけど、なんで?
クラスの一部とか女子バスケの部員は知ってるけど、他の人には話してないもんね。教室の中とはいえお互いの家族に認められてるって知られたらどうなるのか分からないけど、他の女子が諦めてくれるならいいかな。
そこからパパ達は久しぶりに会ったからいろいろお互いの話をしながら料理を食べていた。直くんのお父さんが「文化祭の喫茶店なのに美味いなぁ」とか褒めてくれて嬉しかったよ。
4人だけで話すことも多いだろうからとそこから離れ、仕事に戻った。
「「「服部さん、今の服部さんのお父さん達の話ってほんと?」」」
「うん、そうだよ。私が直くんのお嫁さんになるのは私達家族の中では決定事項なの」
「いつから?」
「生まれた時から?同じ年に生まれるから丁度いいとか言ってたらしいよ」
「「「いいなぁ。うちの親も格好いい子供がいる親と友達だったらなぁ」」」
いやいや、別に格好いいから決まったわけじゃないからね?もしかしたら直くんだって格好良くなかったりしたかもしれないんだよ?
それにお互い好きだから(まだ正式に付き合ってるって事にはなってないけど)直くんのお嫁さんにって思うけど、嫌いだったりしたら両親達もそんなこと言わないよ。
親だけの思惑でってことはないから。
そんな話をしてたら大ちゃんや直くんが戻ってきて、また女子のお客が増えて混雑してきた。
それにお昼半ばになって、食事目当てのお客さんで混み合ってきた頃合いに午後の接客班のメンバーが戻ってきて交代になった。
午後は女子の委員長の指揮の下、オムライスは少なめに、カレーライスやサンドウィッチは私達4人で直前までに多めに仕込んでおいた。後は残りの調理班のメンバーでなんとかなるでしょう。
さあ、部活の方に行きましょうか。
### 続く ###