第24話-5 1年の球技大会-5 1日目女子バスケ2
その後も4組の攻撃はマンツーマンで相手に当たり移動速度を鈍らせ速攻を潰し、ゴール下では私と美亜ちゃん以外でゾーンディフェンスし2人でボールを取りに行く作戦で相手の得点チャンスをかなり減らした。
流石にカウンターを狙われると完全に潰すのは無理だったけどね。
攻撃は相手チームが急いで戻る中ゆっくり攻め上がる。
相手は変わらずゾーンディフェンス。その外からセットシュートやジャンプシュートを打った。
当然リングに嫌われたりバックボードに当たり外れたボールは私と美亜ちゃんがリバウンドを取り、直接入れたりみんなに戻して再度シュートした。
時には私と美亜ちゃんで速攻を仕掛けて、攻撃に緩急を付けて相手に攻撃を読めないようにした。
「いつもいつも思ってたけど、そのスタミナはどうやって鍛えられるのよ!
トライアングル2で走り回って、リバウンドやフォローでも走り回って」
「あ〜〜、受験の運動不足の解消に美亜ちゃんとこの神社階段を走ってたら鍛えられただけだから」
「くそぉ、私が受験にかまけてた時にも身体を鍛えてたのかぁ。それをただ羨ましがるなんて恥ずかしいことを」
「いやいや、暇つぶしで鍛えただけだから」
そんなことを気にしても仕方ないのでは?自分もこんなことになってるとは思ってなかったしなぁ。
残り30秒ほど……
4組の思いの籠もった最期のカウンターを仕掛けてきた。平井さんがゴール下に入り込んできてレイアップシュートを打つ!
追いかけていた私がジャンプしてボールをはたき、バックボードにぶち当てた。
「服部さん、もう戻ってきたの?しかもブロックされたし」
「えへへ」
「速すぎだぁ」
バックボードに当たって跳ね返ったボールをうちのクラスのメンバーがキャッチ。そのままこちらもカウンター!
ボールはロングパスで一気に相手コートへ!
「三条さん、お願い!」
「分かったわ。みんな、行くよ!」
私もトップスピードで相手のゴールに向かって駆けた。平井さんも私を追いかけて戻ってきてる。
足の速さは私の方がやや遅いみたいでセンターライン辺りで追いつかれた。それでも走る!
ゴール前は最期だから4組の選手が全員全力でディフェンスしていて攻めきれずにいた。
走り込んできた私に美亜ちゃんが私にパスを回してきた。
「英子、お願い!」
「OK!」
ここでダンクでも決められれば格好いいんだけど、流石に無理!
3Pラインの内側のとこで止まりジャンプシュートの体勢に入る……
追い越して前に回り込んできた平井さんがジャンプシュートをブロックしようとしてきた。
「服部さん、止める!」
「平井さん、入れるよ!そおれ!!」
私は更に後ろに2歩下がり3Pラインを超え、そこで斜め後ろにジャンプするようにフェイダウェイシュートを打った。
平井さんのディフェンスをかわし、ボールが放物線を描くようにボールが飛んでいく……
直後試合終了のホイッスルが鳴った……
そして、リングの中心を通り抜けた……
ゴーーール
最終的にはそれなりの点差で私達3組が勝った。
予想以上にシュートが決まったし、攻撃のリズムを調整して体力も温存しみんなそれほど疲れていない。
逆に相手の選手は肩で息をしてる人が何人かいた。結構動いてたからね。
点数的には圧勝ではないけど、疲労具合からすると圧勝したみたいに見えてる。
「服部さん、三条さん、本当にどういう練習したのよ。体力的にはどっちもそれほど変わりないはずなのに、こっちの方がバテバテだし」
「普通にパスとドリブルの練習がほとんどだよね、美亜ちゃん」
「そうね、シュート練習もそんなにしてないし、試合形式での練習もほぼしてないし。
英子のゲームメイクで疲れないような試合運びにしてただけだから」
本当に基礎練習ばっかりだけど、ちゃんと楽しみながら考えながら練習してもらったんだよ。
それに、試合時間が短いけどみんな全力で動けるわけじゃないからね。その辺は上手い人が調整してあげないと。
「こっちは2人が前面に出てきて攻めてくると思ってたのに、シュートはほとんど2人以外。なんで?」
「上手い人だけで試合をしても面白くないでしょ?私達2人だけで攻めても勝てたかもしれないけどさ。
みんなで得点して楽しんでもらえるように上手い人がフォローするくらいがいいんだよ。当然勝てるように調整するけど」
「英子や宮崎くんのお父さんがそういう言ってた。
それに2人だけで攻めても攻撃が単調になって、ディフェンスがこっちに集中してきていずれ点が取りにくくなるから」
パパ達とバスケやフットサルをやり始めてからずっとそんな感じでゲームをしてるかな。パパや直くんのお父さんがいくら上手くても、私達子供に得点チャンスをいっぱい作ってくれた。
負けてもいいわけでもないから、今日の私達みたいにパパ達も得点してギリギリ負けないようにしてはいた。楽勝だと私達のやる気や試合への取り組み方が悪い方向にいくからって。
「服部さんや宮崎くんのお父さんっていい指導者なんだね。やっぱり全チーム優勝させたのは伊達じゃなかったのね。
ミニバスやってた時の監督とかはそんなことを言わなかったなぁ。勝つための得点力のある子にパスを集中させてたもん。
弱いチームには楽勝だったけど、それが通用しなくなるとあっさり負けてたから」
「そうなんだ?うちのパパ達はみんなで楽しむのが大切って思ってるだけだよ。
やっぱり嫌々だったり無理をさせるといいパフォーマンスが出ないからねって」
「うちのコーチとかやってくれないかなぁ?
そうすればみんな伸びると思うんだけど。それに合宿で先輩達みたいにひもじいことにならなくて済みそうだし。
ちょっと聞いてみてよ?」
パパと直くんのお父さんがコーチになってくれたら、みんなもう少し上手くなるのかな。そうすれば東山に勝って、あの体育館の幽霊も早く成仏してくれるのかもしれない。
けど、無理だよね。
パパは会社員だし直くんのお父さんは社長だしで平日は忙しいもんね。
休みの日にコーチをしてもらうのも悪いしね。せいぜいバスケをやる時にみんなで参加してもらうくらいかな。
「次の決勝頑張ってよね」
「うん、頑張るよ」
今回の試合中足をひねって捻挫した子がいたけど、それほど重症ではなかったみたい。明日の決勝は無理だけど。
ベンチメンバーも全員出場が球技大会のルールなんだけど、1人減ったから明日は予備要員の咲良ちゃんにも出てもらうことになりそう。
東山高校の文化祭で分かったけど実は上手かったから、女子バスケは優勝しちゃうかな?
応援に来てた直くんや大ちゃん達と合流する。咲良ちゃんはバレーの試合があるからもう体育館のコートに移動してる。
応援するために私達も移動しながら話してる。
「英子ちゃん、最後のプレーすごかったね。フェイダウェイを打つなんて」
「平井さんの方が身長が高いしジャンプ力があるからね。普通に打ったらブロックされそうだったからね」
「英子ちゃんはそういう時の判断力がいいよね。僕ならそのまま打ってたよ、勝ってたんだし」
「最期のプレーだしね、点を取って終わりたかっただけだよ。入らなくても仕方なかったし」
私と直くんは試合の感想を話してた。いつもだけど直くんは褒めてくれるから嬉しいな。だから次はもっとすごいプレーをしようと思うんだ。
美亜ちゃん達の方は、付き合ってるってことになってるから手を繋いで歩いてる。お互い他の人に告られないようシールドを展開してる感じだ。
でも、そんなことをしなくても本当に付き合えばいいだけなんだけどなぁ。
### 続く ###