第05話-2 GWの巫女のアルバイト2 お祓い編
お祓いの前に小林さんのお父さんの話を話を聞くと……
定期的に頭痛がするんだって。それも毎年、決まった時期に2週間ほど。
その決まった時期というのが娘さんの命日。それがもう10年ほど続いているそうです。左目の奥が強烈に痛むとかで、亡くなった娘さんに恨まれてるからだと小林さんのお父さんは思ってるみたい。
そんなに恨まれるような事をしたのかと聞けば、ちょっと目を離した際の事故だそうで、虐待とかひどい話ではなかった。
でも、頭痛のタイミングが娘さんの命日になっているから恨まれていると思い込んでる……
神ちゃんが見たところでは何かに憑かれてるとかないし、娘さんの霊が取り憑いていたりは絶対にない。霊とかによる霊障なんていうものではなかった。
だからお祓いでは治らないと思う。
「英子、どう?」
「幽霊とか呪いとかそういうものじゃないと思う。神ちゃんも何も言ってこないし」
「じゃあお祓いしても治りそうにないんだね?」
「うん」
それでもお祓いを希望しているし、それで気が晴れれば改善するかもしれない。事前にお祓いは万能ではないことは説明してあるしね。
お祓いを始める。
御神前で美亜ちゃんのお父さんが祝詞を奏上し、小林さんのお父さんも一緒に唱える。厳かに儀式が進む。
その後は美亜ちゃんと私で御神楽の奉奏。何度も練習した神楽を神前にて奉納する。
「「……きれい」」
咲良ちゃんと小林さんがそう呟いてるのが聞こえた。お父さんの方はそんな余裕はないみたい。
更に私が鈴祓いをする。
シャンシャン シャンシャン シャンシャン
お鈴を持って鳴らしお祓いをする。鈴の音が心身を清浄にする効果があるそうだ。以前のお祓いで穢れが消えていくのが見えたことがある。
でも今回は特にそんなことは起きなかったなぁ。
お祓いが終わった。
でも、直後にまた頭痛が小林さんのお父さんを襲い、市販の鎮痛剤を飲んでもらって、社務所の方で休んでいくことになりました。
私と美亜ちゃんは休憩ということで、咲良ちゃんと小林さんと一緒にカフェの方に移動。
職員用の休憩スペースに入り、お昼ご飯と飲み物を注文して食べながら話をする。
「ごめんね、小林さん。お祓いったって万能じゃないから」
「大丈夫。説明は受けてたし、お父さんももしかしたらってお祓いを受けたんだから」
「英子も美亜も悪いね。私が紹介したばっかりに」
「う〜ん、一応私も美亜ちゃんも小林さんのお父さんに悪い何かが憑いてたりっていうのは感じなかったんだよね。だから、霊障とかじゃなくて病気なんだと思うんだけどね」
神ちゃんもそう言ってるから、医学の領分だと思うんだよね。
本当に何かが憑いてるなら何かしら反応があるもん。
「でも、毎年同じ時期に起きる頭痛なんてあるのかな?それ以外の時は全然大丈夫なんだけど」
「どうなんだろ?美亜ちゃんのお父さんも聞いたことはないみたいだしね」
「うちのお父さんも神主で医者じゃないからね。でも、知り合いでそういう症状は聞いたことはないんだと思う」
「うちのママの方のおじいちゃんとパパの方のおばあちゃんも顔が広いから、そういう症状の病気がないか聞いてみる」
「服部さん、ありがとう。ダメでも気にしなくていいからね?」
確かに絶対にそんな症状の人の知り合いがいるわけじゃないから、期待させるのも悪いかな。
でも、何か情報があれば病院に行きやすいしね。娘さんに恨まれてるっていうのも精神的にきついし。
しばらく休憩して私と美亜ちゃんは社務所の方でお守りの授与のお仕事を再開した。
私達がお祓いの方に行ってたからこちらは少し人が減っていたらしく、戻って来た途端また人が増えてきた。
そのままお仕事をしていると小林さんのお父さんの頭痛が治まったらしく、お祓いの説明のためにまた席を離れた。
「小林さん、お祓いについてですがそれで頭痛は改善させてあげられないようです」
「そうですか……わらをも掴む思いで来たのですが、やはり無理ですか……」
「はい、これは霊障で頭痛がするのではないと思われます。うちの巫女達がそう言っていますので、多分間違いがないかと」
「はぁ?巫女さんが?」
「神主ですが私も霊能力があるというわけではありませんので……」
「それは分かります。神主さんだから霊能力があるなんと思ってはいません。でも、巫女さんの方がと言われたのが驚きで」
確かにそうでしょう。こんな自分の娘と同じくらいの子が「霊能力あります」とか言ったって信用されないでしょう。仕方ないよね。
私も美亜ちゃんも苦笑いして座ってる。
「それで娘の友達がここって指定してたんですね」
「そのようですね。それでその2人が医学的な病気ではないかという判定をしています」
「そうですか……じゃあ病院を回ってみる方がいいっていうことなんですね」
「私もこの子達も知り合いに同じような症状の人がいないか聞いてみますよ。力になりますのであまり気を落とさずに……」
小林さんのお父さんは気落ちしたまま帰って行きました。
小林さんにはさっきも言ったようにおじいちゃんやおばあちゃんの知り合いに同じような人がいないか聞くからと伝え、元気を出してもらえるように話をし連絡先を交換した。
知り合いになったんだからやっぱり力になりたい。
その後もバイトを続けてからみんなで家に帰る。お父さんが忙しいからGWだけど今日は美亜ちゃんもうちで夕飯を食べていくことになってる。
「「「「ただいま」」」」
「お帰りなさい。パパのおじいちゃんとおばあちゃんも来てるわよ。早く手を洗ってリビングに来なさいね」
「「「「は~い」」」」
もう美亜ちゃんもうちの子と同じ扱いになってる。
いつもは近所に住んでるママのおじいちゃん達が休みの日には夕飯を食べに来るけど、GWなのでパパの方の英代おばあちゃんと龍輝おじいちゃんも来てる。
忙しいことが多いみたいだからなかなか来れなくて、GWとか時々一緒に食事してるんだよね。
こういう時はパパがメインにママがサポートで料理を作ってる。この間の釣り堀とかイベントの時とか祝日なんかはいつもパパが食事担当。
ママの料理も美味しいけどパパの料理も美味しい。いつもママが作ってる家庭料理とはちょっと違う料理で楽しみ。それを横で美亜ちゃんが見て料理を学んでる。
みんなで料理を囲んで食べてる時に、小林さんのお父さんのことが気になって大輔おじいちゃんや英代おばあちゃん、龍輝おじいちゃんに聞いてみた。
「おじいちゃん、おばあちゃん、知り合いに毎年同じ頃にしばらくひどい頭痛が続くような症状のある人っていない?」
「おじいちゃんの知り合いにはいないかな」
「僕の方もそうだね。海外の人も含めて知らないね」
「ああ、それならいるわよ。よく知ってる人。毎年じゃないけどね」
「え?誰?誰?」
よく知ってる人っておばあちゃんの知り合いでよく知ってる人……誰?
「まーくんもよく知ってる人よ」
「まーくん言うな。あっ!瑛太伯父さんか。そういえばそんなこと言ってたな」
「瑛太伯父さん?」
「英子にとっては大伯父だな。母さんのお兄さん。僕の料理とかの師匠だな。
英子達は小さい時に会ったっきりだから覚えてないか」
覚えてないなぁ。大ちゃんも直くんもそうみたい。ママは何度か会ってるみたいなので知ってるみたい。
毎年誕生日やクリスマスにはプレゼントを贈ってくれる人なのは知ってる。東京で独り暮らしだとか。英代おばあちゃんがいつまでも結婚しないって言ってたのを聞いた気がする。
パパの師匠かぁ。私達は孫弟子になるんだね。
「確か4年に1回1ヶ月くらい9時から11時くらいまで結構強烈に右目の奥が痛くなるんだったっけ?」
「オリンピックかっ!」
「そうそう、私もそう言った。群発頭痛っていうんだけど結構長く患ってたけど、何年か前にようやくどうにか出来たらしいわよ」
「群発頭痛?」
早速小林さんに連絡してみた。
### 続く ###