第01話-1 こっくりさん1
この物語は当然フィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
オカルトなどの内容についても、世間での通例の解釈でないこともありますのでご了承ください。
拙い文章ですがお楽しみいただければ幸いです。
学校の廊下を親友の美亜ちゃんと2人並んで歩いてる。
今日は4月もそろそろ終わるゴールデンウィーク直前の放課後。次の土曜日にある練習試合についての打ち合わせがあり、今日の部活が終わった。元々それほど強くないし練習場所の割り当てが今日はないから。
両親が卒業し、家から近いこの高校に入学して2週間程経った。
部活も終わったし隣を歩く美亜ちゃんといつものように一緒に帰ろうと思っているところ。
「美亜ちゃん、ゴールデンウィークは何か予定がある?」
「特にないよ。うちの神社のバイトを1日頼まれてるだけ。英子は?」
「その日は私も頼まれてる。その日以外なんだけどパパとおじいちゃんが釣りに行かないかって。大ちゃんと直くんも行くし、パパがお昼作ってくれるんだって」
「英子のお父さんが作ってくれるの?それは行きたい。でも……」
パパの料理って美味しいもんね。
前に一緒にキャンプに行って胃袋つかまれたからね。ママやおじいちゃん達も同じで胃袋をつかまれて家族になったって話だし。
「釣りは大ちゃんが教えてくれるから大丈夫」
「英子はもう。そう言われたら断れないの知ってて言ってるよね」
「へへへ」
私は服部 英子。高校生になったばかりの女子高生。普通の家の子。
隣にいるのは同じ中学だった親友の三条 美亜ちゃん。神社の娘で時々神社の手伝いをして、私も美亜ちゃんのお父さんに頼まれて時々一緒にバイトをしてる。
同じ女子バスケ部に入部してて、今日の部活が終わって教室に戻ってるところ。次の土曜日、近くの強豪校との練習試合でレギュラーと新人でそれぞれ試合をするから、今メンバーの発表と作戦の打ち合わせをしてきた。
レギュラーは3年生メインでもう大体決まってたけど、新人戦は私と美亜ちゃんが出ることになったんだけどね。
そしてもうすぐゴールデンウィークだし、一緒に遊びたいなぁと思ってたけど予定が一つ今決まった。
今年は3連休2回。もう1日くらい一緒に買い物にでも行きたいね。
そんな話をしながら教室に戻って来た。
そしたら……
教室の雰囲気が良くない。
別に誰かがケンカやイジメをしてるというわけではなくて、教室に残ってる人達は普通なんだけど雰囲気だけが良くない。
隣にいる美亜ちゃんも感じてるみたい。なんとなく人がたくさんいるような感じだ。
「美亜ちゃん……」
「うん。なんか変だね」
入口で立ち止まってたけど、教室の中にいる友達に呼ばれて中に入った。
悪霊的な嫌な感じではしないから入ったけど、あまりいい感じじゃないなぁ。
神ちゃんも警告をしてこないから大丈夫だと思うけど、美亜ちゃんに何かあるようなら怒るからね。
『…………』
「英子?どうかした?」
「大丈夫。何でもないよ。行こう」
教室の後ろの方に集まっていたクラスの女子がこっくりさんをしてるみたい。6人いて中に同じ中学の娘がいて私達を呼んでるよ。
「服部さん、三条さん、一緒にやってよ〜、これ」
「なになに?」
そばに近づくと……ああ、やっぱりこっくりさんね。これならそんなにひどいことにはならないか。前にも中学時代にやったもんなぁ。
「服部さんと三条さんて霊感があるって有名だったじゃない?」
「そんなに有名だったんだ……」
「全校で噂になってたよ、実例付きで」
「「そうなんだ……」」
私達は中学時代に霊感持ってるって噂になってたのは一応知ってる。
更に私は神様憑きでも有名。実例というかいくつか逸話もあったりする。ちょっと恥ずかしいけど。
その事は有名になっていて、同じ中学の子がクラスにいるから知られるのは時間の問題だとは思ってたら本当にそうなった。近くの中学校にも噂が流れていたはずなんだよね。他の学校の子と繋がりがあってそっちでもトラブルを解決したから。
美亜ちゃんも霊感がある事が知られていて、中学時代から2人してそういうトラブルに巻き込まれやすいコンビになってた。それで仲良くなったんだ。懐かしい。
そして……2人して美少女祓い師とか言われるようになったみたい。
元気系って言われる私にクール系の美亜ちゃん。女子の方に人気があったからかそう思ってない。
「じゃあ、こっくりさん再開しようか」
こっくりさん……西洋ではテーブル・ターニングって言う降霊術みたいなオカルトな行為。小学生の頃から時々やった子達がいた話は聞くんだよね。実際中学時代にやった男子達がいて、それがあって美亜ちゃんと出会ったっけ。
大体好きな子が誰を好きか聞く事が多いみたい。
そんなこっくりさんを教室でクラスの女子が再開しようとしてた。そんな時に私と美亜ちゃんが帰ってきた。しかも、今一番聞きたい人達の身近な人なのでちょうどいいと思ってるんだろうな。
私と美亜ちゃん、後クラスのオカルト好きの子とその友達の4人でこっくりさんをすることになってしまった。
「服部さんって大輝くんや宮崎くんと仲がいいんだっけ」
回りにいた子が聞いてくる。なんだろう?同じ中学なら知ってる人がいるから、その人に聞けばいいのに。
「そうだよ。大ちゃんは兄貴だし、直くんは幼馴染だしね。ずっと仲がいいよ」
「宮崎くんと幼馴染っていつから?」
「0歳からだね」
「「「「「「え?」」」」」」
直くんの方が先に生まれてるけど、私達が生まれてから直くんと大体一緒だもん。もう家族と言ってもいいくらい。
「じゃあ、大丈夫そうだね」
「へ?こっくりさんにそんなの関係ないでしょ?」
「最近の研究ではそうでもないんだなぁ。身近な人が入ると情報の正確さが違うんだって」
「「へぇ~。初めて聞いた」」
そんな話聞いたことないんですけど。パパも大伯父さんからも聞いたことないんだよね。うちの家族みんなそういうオカルトが好きで。
でも美亜ちゃんも知らないみたいだからちょっと面白い。
「やっぱり好きな人のことだよね?」
「「「「「ねぇ」」」」」
女子が集まれば人気のある男子の話を、よくある好きな男子の好きな人を聞きたくなるのよね。
仕方ないとは言え、今人気のある大ちゃんと直くんの好きな人を聞くのは恥ずかしいかも。美亜ちゃんのことを考えると大ちゃんのは聞かないでほしいかな。
「先ずは宮崎くんのことから聞きましょうか」
「「「「「「うんうん」」」」」」
私と美亜ちゃん、あと2人が席について準備する。
定番のあいうえおやYes/No、鳥居が書かれたシートと10円玉は机に置いてあった。もう4人が10円玉に指を置いて……こっくりさんを始める。
始まりの祝詞を唱える。
そして……
「1年3組宮崎 直樹くんの好きな人を教えてください!」
最初は直くんの好きな人だ。多分分かるけど私は言わないよ?
この後に大ちゃんのことを問いかける事になってる。
中学時代から結構人気があった、兄の大ちゃんも幼馴染の直くんも。
それが高校生になって自己紹介の時、更に女子に注目を浴びた。2人共美形らしい、私はいつも一緒だから分からないけど。
その2人の最初の席が前後に並んでたから更に注目を浴びてた。
そして部活が始まると大ちゃんはサッカー部で、直くんは男子バスケ部でレギュラーになれるかもと話題になってるんだよね。そのせいで更に2年3年のお姉さん達からも注目されちゃってるんだよ。困るよね?
そんな2人の好きな人は誰か、今現在学校での一番気になることだった……
4人が指を置いている10円玉が徐々に動き始める。
最初は「は」……次は「つ」……「と」……「り」……「え」……「い」……「こ」
5分くらいかけて順番に文字の上で停止しながら移動していった。
うん、やっぱりね。こうなると思った。
「は、服部さん。『えいこ』だよね?」
「うん。そうだよ」
「「「「「「えぇぇぇぇ?」」」」」」
そうだね。そうだよね。そうなるよね。
### 続く ###