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04-1

《全く同じ者なんて存在しない。どんな者も性格、考え方、欲、才能など持っているものが違う。生きてきた環境が違う。それでも同じ世界で生きている。違うものが同じ場所で生きているからには衝突も必ず起こる。すべての理想を完璧に叶えることはできない。だからこそ、小さな幸せは最高の宝。一度しかないその瞬間を大切にしたい。》



 夜の闇に溶け込むような薄暗い雰囲気を纏ったその場所は、毎晩満月が見えると言われている。

俺はとある国の侯爵家の嫡男として生まれた。


 俺の家は国の中でも代々上の立場にある家で、領民からの評判が高く信頼も厚い。

 貴族としての責務を果たし、実際に領民の声を聞きに行き領地の開発を行い、国の発展にも貢献しどんなことにも責任感を持っている。おそらく周囲から見ても理想的な貴族だろう。


 俺の両親は、領民の信頼が高いことからもわかる通りとても良い両親らしい。自分の子どもには厳しく優しく、よく見てくれる人たちだった。それは俺も間近で見てきたため、本当であることは間違いない。


 そんな家に生まれた俺は、家の中でも一番初めに生まれかつ男児であったことから両親にとても喜ばれ、かつ期待されていたらしい。俺が生まれる前から彼らは俺のことを考えて、見ていてくれた。

 何を与えるか、何を一緒にやっていくか、何を伝えるか。


 これからのこの国にとって、この家にとって、多くの人のために生きていく貴族として必要となるもの、生きる者として必要なもの、その与える物の中に俺が生きていて大切だと思えるものができるように、あの方たちはいろいろなことを考えてくれていたらしい。


 それは生物が集団を作りそれぞれが役割を持って暮らしていく中で必要になるもの。家族が子に与えるべきもの。

 そういうものを彼らは持っていて、与える側だった。


 ーー


 俺はとある満月の日に生まれた。

その満月は不吉なものだと言われ、俺の国ではその日に生まれる者は"呪い"を持つと言われていた。


 それはよくある迷信の一つとされていて、その満月の日に生まれた者たちは他の者とは違う共通した特徴を持つことや、その日に生まれる者がまだその時代にはあまりいなかったこともあり、その満月に生まれた者は生まれてすぐ殺されることも少なくなかった。


 そんな日に生まれた俺に対して両親は不安もあったようだが、それでもわが子であることには変わらないということからとても大切に育ててくれていた。


 ただ長い歴史があるこの国の中で、そのような話が決して消えることなく続いているということに対して"呪い"への不安感がぬぐい切れなかった両親は、俺のことについてとある者のところへ相談をしに行っていたらしい。


それがすべてのはじまりだった。


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