03-5
学園にはとある噂がある。ある時期から何年もずっと続いている、決して消えることのない噂。
誰もその噂の出どころは知らず、いつの間にか広まっている噂。
その噂に信憑性はないが、研究所の人間が学園にやってくるのは事実。そのとき研究所へ誘われる者がいるというのも本当のこと。実際にそこで働いている者もいる。
ただ、その中でも誰にも知られていない特別な研究所があるらしい。その場所は選ばれた者のみが知り、特別な才能を持ったものだけが行くことのできる場所。
実際にその場所に行くまで選ばれたのかすらわからない謎多き場所。
まず学園を卒業するまでに研究所から直接勧誘される者は年に数人のみのため、それに選ばれることは名誉でありだれもが憧れるものだと言われている。
あくまでも噂で、実際にその場所に行った者と話したことがある者はいないため、真実なのかは分からない。
それでもその話が長年消えずに残っていることや、そもそも選ばれること自体すごいことであるため、いつしかその噂は才能を持つ者の代名詞として使われるようになった。
あるときそれに彼が選ばれた。私にちょっかいをかけてきていたあの彼が。
それはとくに何もない普通の日、いつも通りの学園生活が送られているある日。
研究所の者が彼をどこかに連れていく姿を見た。その研究者は、私の知り合いの中にはいない者だった。
私は昔から研究所に出入りしていて、他の研究所の者たちもある程度見たことがある。
どこで何の研究がされているのかも知っている。
だからこそ学園にやってきた彼らが国にあるどの研究所にも所属していない者だと分かった。
表向きに存在している国に認められた研究所の者ではないと。
ーーー
彼が学園から去り数か月が経とうとしていたころ。
周囲に誰もいない学園の廊下を歩いていたとき、私は白衣を着たにこやかな様子の彼らに声をかけられた。
ーーー
私は研究 所へーー




