03-1
《様々な人が暮らし、たくさんの種類の生物が存在し、多くの文化、コミュニケーション、技術が発展している。その中には、まだ見たことのないもの、見つかっていないもの、理想のものが多く存在している。それを手にするためには必要なものがたくさんある。
足りないものもたくさんある。ただ手にすることが幸福とは限らない。それでも生きていることは変わらない。》
私はとある国にある公爵家の一人娘として生まれた。
両親は、周りへ感情を出すのが苦手な少し不器用な人たちだった。父は常に無表情で寡黙、何を考えているのかわかりにくいけれど、とても博識で知らないことは分かるまで徹底的に調べる努力家だった。
それに対し、母はてきぱきとしていてしっかりとしているように見えるけれど、家では少しおっとりとしている優しい方だった。
普段の両親を知っている方によっては、二人は不愛想にも見えるかもしれない。
でも本当はとても家族を大切にしている優しい両親。それは二人を見てきた私が何よりも知っている。
寡黙な父は、何でも知っているが家族のことに関しては少しだけ不器用で、それを知っている母は父に身近な者たちとの会話の機会を作り、父の優しい性格を屋敷の者たちにも知ってもらえるようにした。
誰にも隙を見ず表情を崩さない母は厳しい人だと思われがちだが、母が強くて優しく、かわいらしい方だということを知る父は、母をとても大切にしそれを母はとても喜んでいた。
その様子を見てきた者たちは、彼らがとても仲の良い強くて優しい方たちだということを知っている。
そんな両親は私を溺愛しとても大切に育ててくれた。私も両親が大好きだった。
私が言葉を理解し始めたのは生まれてから3か月が過ぎた頃。
私は言葉を発するよりも先に認識し、文字を理解できるようになった。
何かを理解するということに興味を持ち、生まれてから半年を過ぎて自由に動けるようになると、屋敷内の図書館へ行きひたすら本を読み漁っていた。
私の家系は精神の発達が早い傾向にあり、また記憶力も良いため文字が書けるようになるころには図書館にある本の半分以上を完全に記憶していた。
そんな私を見た両親は、様々な場所へ私を連れて行き屋敷内だけではわからないことをたくさん教えてくれた。
両親の仕事についていき、領地の様子を見に行くこともあった。
そこで知りたいと思ったことは分かるまで調べ、本に内情報は両親や両親の知り合いの研究者や先生に話しを聞きに行った。
そんな風に過ごしていた私は、魔法に興味を持つのも早かった。
私の暮らす国は魔法大国で、魔法の発見、開発の最前線と言われている。
街中も多くの魔法の技術にあふれていて、民間的に使われている魔法も多い。
それを間近で見てきた私は、ただ見ているだけでなく自分でやってみたい、使えるようになりたいと思わないわけがなかった。
私の性格を知っている両親はそれを予想していて、私が完全に喋れるようになると魔法を教えてくれるようになった。
魔法はそれを扱うための技術、想像力、精神力、何よりもそのための脳の発達が必要不可欠だった。
あとは自分の実力に合う数をこなすのみ。それにより、自分に扱える力の量を知り、魔力は体になじみ、さらに多くの魔法が扱えるようになる。
一般的に魔法を使えるようになる年齢が8歳ごろからなのに対し、私は3歳になる頃には高位の魔法を扱えるようになっていた。しかし、そのことが表に広まってしまうと、悪目立ちすることやそれを狙ってくる者がいる可能性がある。
そのため私は、魔法を他の誰の目にも付かない屋敷内の場所で、両親や信頼のおける限られた者たちの前でのみ使った。
魔力の扱い方が完全になると魔法の研究も行い、名前を伏せた状態で様々な魔法の発展にも貢献した。
そのころにはすでに魔法が私の生きがいになっていた。