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05-3

 仕事でとある人間の子供の魂を回収することになった。それは主からの命令で、逆らうことはできない。俺についてくる彼女もその命令に背いたことはない。


 まず命令以外のことをするという意識がないのが彼らだから。そんな中、俺は意志を持っているし、普通に誰かを殺すことに対して抵抗の意識はある。


 だがこの馬車では俺が異端であり、役目を果たしていないなんてことがバレれば俺自身が消されかねない。または消されるよりももっと酷いことになるかもしれない。だから俺は周りと同じように、言われた通りの仕事をこなす。


 その仕事の中で、隙をつき救える魂をこっそりと逃すことぐらいしか俺にはできなかった。俺に意志があったとしても、俺が彼らと同じ種族なことには変わらない。主からの影響も強く受けている。到底俺一人で何かを変えることはできないような場所だった。


 そんなある日、いつも通り仕事をこなすために対象の元へ向かう。人間を殺す場合、集団で生活する彼らは誰かが消えた場合、特に気づきやすい。

 そのため彼らは対象の近くに紛れ潜み暮らして魂を狙う。魂を奪うことは役割であり、彼らの存在する理由。そのために造られた存在。


 俺もその存在の一つ。役割を果たさなくてはならない。そのため俺には彼らを救うことはできない。死を回避させることはできない。あくまでも彼らのもとに来る魂を減らすことしかできない。


 俺は調査がメインで、直接魂を回収することはほとんどない。彼らは役割について何か思うことはないため、意図的に俺が調査の役割に付くよう操作していた。

あらかじめ狙う対象を知っておけば、いろいろ手を打てる可能性が高くなるから。特に調査をする場合、対象と接触するため目印をつけやすくなる。


 そんな感じで一応俺はそのころ魂に干渉するようなことはなかった。



 ある日、調査の結果とある子供の魂を回収するということが決まった。いつも通り対象へ誰かが接触し、隙を狙って魂を回収する。今回は俺がその対象について事前に調査することになっていた。


 実際に世界へ行きその子に出会った時から感じていた。その子はとても似ていた。かつて人間として生きていた俺に。


 そして彼の夢を聞いたとき、俺はその子を救いたいと強く願った。魂の救済ではなく、彼らによってもたらされる生物としての死の運命からの救済。


 その子の願いは、”大人まで生きること”

大人になるまで生きて、過去の自分が羨ましく思うくらい幸せになること

その子は笑顔でそう答えた。


 それを聞いた俺は、彼らがその子の魂を回収する日、彼らの役割の邪魔をした。それによりその子が死ぬことはなかった。


 俺は役割を放棄したとして、時空の牢獄に閉じ込められた。決して内側から開けることのできない、無限の牢獄。外側は空白で何もない。



 まあいつかこうなるだろうとは思ってた

 彼らはただ役割を果たしただけだ


 彼女はどう思ったのかな

 彼女は他のやつらとは少し違っていた


 でもその目には何も映らない、歪な状態

 きっと彼女のように変わる者がいるのなら、彼らも何かを得ることができると思う


 けど彼らはとても数が多い

 まず主が存在する限り彼らが完全にいなくなることはない


 彼らを救える方法はないのかな


ーーー


 何もないその場所には誰もいない

 生きているものは何もいない


 俺らのような力的に上位の種族になると屍は残らず力は世界に還元される

 かつてこの場所に入れられた者がいたとしても、何も残らずひっそりと消えて行ったのだろう


 俺もおそらくそうだ

 この場所から出られずいずれ消えてしまうのならば、果たしてここに存在する意味はあるのだろうか


 ここには何かできることを探すこともできない

 それでも俺が生き続けたのは、かつての会話がずっと俺の中に残っていたから


 名前もなにも知らないあの子は幸せを知ることはできたのだろうか

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