04-7
牢屋の中の暮らしが始まって数か月が経とうとしたころ、外の様子を確認してくれていた彼から報告を受けた。弟たちが俺のところに来ていることが両親にばれたらしい。
あんなことを続けていればいくら彼らと接することが少ないとはいえいずればれることは予想していた。
それだけなら別によかった。だが問題はばれたということではなく、それに対して両親が彼らに手を出したということ。
両親は、今までどんなことがあったとしても叱責以上のことはしなかった。そこまでやってしまったというのならば、俺もただ黙ってこの場所にいるわけにはいかない。
いつも自分の持つ、周りとは明らかに違っていて誰かを傷つけてしまうことができる大きな力が嫌いだった。でもその時ばかりは自分の持つその力に感謝した。
俺は枷を能力で溶かし、牢を破って外に出る。俺を見張っている者は誰もいない。別に俺は罪人だったわけではなく、おとなしくしていたため完全にほったらかしにされていた。
しばらく何もしていなかった服や体をきれいにし、髪も簡単に整える。数か月振りの外は地下に行く前と大して変わらず、空は日が落ち始めて薄暗くなっていた。
外に出て息をつく間もなく、屋敷の方から聞こえる騒がしい音の元へ向かう。建物の方へ近づいていくほどその音は大きくなる。誰かを怒鳴る声、何かが壊れる音、誰かが泣いていて、それを庇う声、何が起きているのかは想像できる。
こうならないように色々してきたつもりだった。そうすれば誰も傷つかず、平穏に過ごせるのではないかと。”あれ”も諦めるだろうと思っていた。でも違った。
それは一番最悪の結果として現れた。俺がもっと早くこの場所から消えていれば、誰とも関わらなければ、何にも期待していなければ、誰かを憎んでいれば、何かが変わっていたのだろうか。
声の元へ近づいていくと彼らの姿が見えてくる。俺が弟たちの周りに炎を出すと両親は彼らから少し離れて動きを止めた。弟たちの方へ近づき、彼らの様子を見る。
何かに怯えていたような、驚いているような表情をしている彼らの顔や手には、強く殴られたような握られたような痕が残っていた。その痕を魔法で治す。
やはり俺はこの場所にいるべきではなかった。
「私に何かするのは構いませんが、彼らに手を出すのはやめてください。もし私が原因でそうしなければならないのならば、私がこの場所から去ります。たとえ力があったとしてもこの家をどうするつもりもありませんし、私の存在はあなた方にとっても邪魔でしょう。その代わり、彼らに危害を加えるのはやめてください。たとえあなた方が彼らを見るつもりがなかったとしても。
もしそれを破って彼らに手を出すのならば、その時俺はあなた方を殺します。」
ーーー
正直俺はこの家がどうなろうと別に構わない。父や母も家を没落させることはないだろうからね。
両親がお前たちを見なくても、屋敷にはお前たちを知っている者がたくさんいる。もちろん俺だってそうだ。でも俺はこの場所にいることはできない。
だからもし何かあったときは彼らに相談するといい。きっと手助けしてくれるから。
お前たちはやりたいことができる環境がある。すべてがそろっているわけではないが、挑戦することはできる。いろんなものを見てやりたいことを見つけて、大切なものを見つけて見返してやるんだ。そうすればもっとお前たちを正面から見て、認めてくれるたくさんの者に出会えるはずだからね。
だから、俺がお前たちのところに帰ってきたときにその話を聞かせてくれ。約束だからな
ーーー
この日俺は家を出た。相棒である”彼”とともに
もうこの場所に帰ってくることはないかもしれない、どうなるかは分からないが彼らとはまた会うことができると思う、そんな予想がする。
だから俺はこの選択を後悔しないし、彼らを信じているよ。
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04 第一章 aa end




