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04-3

 俺が2つになるころには、両親は完全に俺に会うことが無くなっていた。

 ずっと同じ屋敷にいるはずなのに、俺は両親とすれ違うことすらなかった。


 それは俺が両親の行動を予測して彼らの目に映ることが無いようにしていたからなのだが、しばらくそんなことを続けていると両親は完全に俺を存在しないものとして暮らしていた。


 そのころには俺の兄弟が生まれていた。

 他の兄弟は普通の日に生まれ、普通の貴族として育てられていた。


 それに対し俺は教育を受けることもできなかった。

 俺の世話を担当していた唯一の侍女だけが俺の話し相手で、彼女は俺に文字の読み方や書き方を教えてくれた。


 そのため俺は自分で屋敷の書庫へ行き、独学で様々な知識を得た。

 侯爵家と言うだけあり、屋敷の中にあるものから世界の様々なことを学べた。


 唯一救いだったのは、両親は俺が屋敷内を自由に行動することに関しては何も言ってこなかったこと。

 その代わりに両親の目に映ることはないようにすること、他の兄弟と積極的に会わないこと、屋敷の者とも必要なこと以外話さないこと、屋敷に客人が訪れているときは自分の部屋から出ないこと、屋敷以外の者には姿を見せないこと。

 つまりこの屋敷には存在しないものとして過ごせと言われたようなものだ。


 屋敷内のことが俺のすべてだった。

 それでも衣食住は与えられ、制限はされているが不自由だと思ったことはなかった。


 両親が俺に見向きもしなくなった最初のころ、俺は時間の許す限りを書庫で過ごした。

 書庫にある本はすべて読み、どこに何の本があるのか、どのページに何が載っているのか一言一句覚えていた。

 その書庫にある本が俺の世界を作り出していた。

 ーーー


 他の兄弟たちが大きくなり外から先生を呼んで教育を受け始めたころ、俺は屋敷内の様々なところに行っていろいろなことをしていた。


 美術品のある部屋に行き国の歴史を知り、温室に行き本の知識をもとに様々な植物の特性について調べ、厨房に突撃し料理の作り方や食材がどこの地域から届いているのかなどを聞き、屋敷内でできうる限りのことをした。


 本の知識を元に裏庭で魔法の練習をしたときは、加減が分からずとてつもなく大きな火柱を作り出して屋敷内が大騒ぎになった、なんてこともあった。

 ーーー


 最初は屋敷の者たちも怖がったり嫌がったりする様子を見せていたが、何ヵ月も同じようなことを続けていると俺がただ純粋に興味を持っているということを感じたようで、今まで話しかけてこなかった屋敷の者たちもいろいろと教えてくれるようになった。


 両親にばれないように偶然を装って話すことが多かったが、周りの者もいろいろ気を使ってくれていて、最近の外の情勢や今の流行なんかを話してくれたり、なにか余ったものがあれば分けてくれたりする者もいた。


 そんな生活は、普通とはかけ離れていたかもしれないがとても充実していた。


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