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完璧冷徹旦那様はもうイヤなんです!〜やり直し人生、次は死にたくありません!〜  作者: 星海 羽流
第2章.私に救えるものがあるならば…!
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18.隠し通路はどこでしょう

何も無かった。私には何も。

だから、逃げることも出来なかった。

逃げ場所なんて、どこにもなかったから。





ララをなんとか説得し、さぁ着替えようとまた歩き始めた時、ドンッと誰かにぶつかった。

謝る暇もなく、少年が走り去る。

頭の大きさに合わない大きな帽子を深く被ってくすんだシャツを着た男の子。


嫌な予感がして、ポケットに入れていた小さな小袋を探す。

金銭はララに託し持っているのは最小限だったけれど、それがないことに気づいて思わず振り返った。





「取られたんですか?!」



「取られたみたい…。追いかけましょう」




ほら言ったじゃないですか帰りましょう、と矢継ぎ早にいうララが私の発言に目を見開くのを無視して少年を追いかける。

グロウスリーの子じゃないかもしれない。

でももしそうなら、ここからのグロウスリー街への行き方を知っているはず。



グロウスリー街、別名見捨てられた街。

グロウスリー街で電気の通っている地域は少ない。またノストリーノ再極寒の辺境の地の隣にあることから寒く、基本的に天気は悪い。身を隠すためか、元々同じような建物の立ち並んだ住宅街だったその土地を活かし、建物や遮蔽物が入り組んでいる。


グロウスリー街に入口は無い。

気づいたら霧の中に迷い込み、薄暗く人の気配のあるそこにたどり着いている。


これくらいは基本的に誰もが知る噂話程度のこと。


つまり、貴族令嬢という立場でグロウスリー街に行くと公言することも難しければ、そもそもグロウスリー街へ入ることが難しいのだ。



だからこそ、この2日で準備し、何とかする必要があった。

グロウスリー街への入口を知る、このときを待っていたのだ。


所持金を全てララに任せなかったのも、スカートの少しの膨らみも、髪留めのリボンに着いた小さな宝石も、身分を隠す世間知らずなお嬢様である必要があったから。





「お嬢様、せめてこれを…!」





せっかく作った衣装を着る暇もないとは思わなかったけれど、ララにに渡されたマントをはおりながら動きの速い少年を必死に目でおい追いかける。


見知った屋敷で、マントで視界の悪くなった男に捕まったのだから、普段から身体能力の高い相手に追いつけるとは思っていない。

だけど、意地でも、着いていく。


私のこれからがかかっているんだから。



必死に走ってしばらく。

レストラン街の入口付近の路地裏、少年が入っていくとこまでは見えたけれど、姿が見当たらない。





「ララは、ここに来たことは?」





私の言葉に首を横に振るララ。

ここからは自分で探せって事ね。


クロット街の5つの枝の中で、最もグロウスリー街に近いのはこのレストラン街の隣、商店街路だ。

しかしわざわざここを通っていることを見るに、裏道は1つじゃないのかも。





「完全に行き止まりですね」



「…私は道にも空にも彼を見てない。隠れているか、下か。」



「下…?って言っても、穴も何もありませんよ?」





隠し通路だもの。肩を竦めて答える。

少年が見えなくなってくれたことで、呼吸を少し落ち着かせられる。


ゆっくり歩きながら、垂れ下がって地面に着いたツタをかき分ける。





「こういう所とか」





ツタに隠された石畳。

一見これまで歩いてきた道と変わらない石畳だけれど、指が2本ほど入りそうなヒビ。


追いかけられていることに気がついて慌てていたのか、少しズレたそこを見て、思わずニヤリと口角が上がった。






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