12.2日じゃ情報が足りません!
ノストリーノは確かに自然豊かな栄えた国。
しかし冬はほとんどの人が自宅から出ない極寒の国。
自然と相容れない地域のある、差の激しい国。
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2日、とは、なんて一瞬なんだろうか。
あの晩、アイリスの突然の思いつきから決まったクロット街へのお出かけ。
それまでになんとかグロウスリー街のことやクロット街の路地裏のことを調べようと記事や書物を呼んでみたけれど、あまりに知識不足だ。
ノストリーノ王国はクラウンド大陸で最も栄え、自然豊かな国だけれど、その自然とその地の土が相容れないことや、過去ノストリーノ王国が急激な発展を見せたことによる貧困層との格差の広がり、冬の寒さが酷いノストリーノにおいて、特に寒さの酷い地域など主にこれらによって現状が出来上がっているようだった。
正直な話、すぐにどうこうできる問題でないことは見て分かる。
けれど、どれも私たち貴族が、権力を持つ者が目を背けてきたことが大きな原因だと、私は思う。
ヴァイオレッテの大きな領地はヴァイオレッテを主として各公爵へ、さらに伯爵へと統治する権利を与えられる。
しかしそれでも統治する人のいない合間を縫った貧困街や、権利を持つ人がいながらも貧困から免れない人がいる。
悪夢では考えたことも無くのほほんと過ごしていたけれど、これは思っていた以上に大きな問題だったのかもしれない。
悶々と考え続け、気づけば2日後はあっという間だった。
「そんなに目立たないようにお願いね」
「うーん…だけどリリスお嬢様、そもそもお嬢様が放つオーラが!凄まじいので、目立たないのは無理かとぉ」
「おだててないで、貴族とバレない格好でお願い。それから、あれもお願いね」
私の言葉に、ララは分かりやすくゲェッと嫌な顔をする。
本当に準備するんですかぁ?なんて困ったように言うララににっこり笑いかけてもう一度、お願いね、と伝えておく。
クロット街は、丁度ノストリーノ王国の真ん中に位置しており、3等分に分け、公爵三家で領地を分け合っている。
その為、ヴァイオレッテ家の者だと気づかれて大きな問題は無いのだけれど、普通のお出かけがしたいと言った3つ年下の妹のために、平民スタイルを要望した。
いつものような装飾はなく、綺麗なチェックのスカートにブラウス、髪は小さなリボンでハーフアップと、あまり見慣れない自身になんだか少しワクワクした。
そうしてアイリスに手を取られ、各々の専属メイドとヴァイオレッテ騎士団から1人護衛を連れて馬車に向かう。
「なんていうか、馬車までしっかり準備してるのね」
「当たり前ですわ!家紋の描かれていない質素な馬車!」
ポイですわ〜!なんて楽しそうなアイリスに、そのまま楽しそうねと伝えておく。
さてさて馬車に乗りましょうと扉の開いた馬車の段差に足をかけようとしたところで、未だ手を取ったままのアイリスに引っ張られバランスを崩す。
あらまずい!なんて、体幹のひとつもないぐらついた体に目を閉じれば、ポスンっなんて変な音。
痛くないなぁと目を開けば、とてつもない近さにいるアランお兄様。
あぁそういえば、3人で行きましょうよ、なんて、言っていたなぁ。
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