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1−4 一回戦(2)

 よく見ると半透明に表示された仮想コンソールのインジケータが

少し伸びている。

これがヘイト値のインジケータなんだろう。

これが一杯になればダッシュ斬りが出来る…

それは彼女の槍より早く刀が届く程なのだろうか。

それはやってみないと分からない。

今は、どうやって攻めるか、

そしてその攻防でインジケータを増やす事を考えないといけない。

どう考えても彼女が突きを戻す時に前進するのが一番良い筈だ。

彼女の突きを村正の自動防御で受け流す、

そして彼女が槍を戻すのに合わせて接近しようとするが、

すると彼女は戻すのを中断した槍を斜め下に振り回してきた。

そうなると足を斬られない様に前進を止めないといけない。

私の動きの変化を察して、彼女の槍さばきも変わった。

突きの間にこちらの足元を薙ぐ様な動きが入る。

薙刀にはおスネ、という叫び声があるらしい。

そんな感じだ。

足元を斬る剣の流派といえば柳剛流がある。

私だってシバリョーの小説を読んだ事があるから知っている。

総司のライバルが柳剛流だった。

それを足さばきで避けて踏み込む話だった筈だ。

しかし、それを真似てみても一回しか通用しないだろう。

彼女にはなんらかの立会の経験と、

修行の経験がある筈だ。

そもそも最初から対処法など知っているかもしれない。

だから、前進、タイミングを見る、息継ぎの時間などを組み合わせて

意図を図らせない様にする。

彼女も連続攻撃はそうそう続けられないから、

息継ぎの時間は共用している。


 しかし、変化球は必要だ。

前進のタイミングを図っているだけでなく、

槍を振り払って前進しようとする事も見せておかないといけない。

だから、彼女の突きを受け流している最中に剣を押し上げてみる。

…が、力負けした。

とてもじゃないが、渾身の突きをかちあげる事など出来はしない。

彼女は全身で突き、薙いでいる。

刀よりリーチが長い利点はあるが、

相手に対処不可能な力と速度を槍の穂先に伝えるには、

かなりの体力を使っているんだろう。

鍛えてはいるのだろうが、限度はあるのではないか。

彼女もだいぶ肩で息をする様になってきた。

…が、鍛えていない私の足腰の方がだいぶ弱ってきた。

息を整えた彼女が私の鳩尾を突いてくる。

つまり、槍をかちあげられてその隙に接近されるのが嫌なのだ。

相手の関心をそちらに向けられた今が好機だ。

突きの戻しに前進のふりをする。

彼女が横薙ぎの槍を私の足元に振ってくる。

これを前に出している足を持ち上げて避ける。

体の前進はそのままだ!

槍は彼女の右側に流れてゆき、

私は槍が届かない彼女の左側に前進する。

そして最も力の入る、右から前への横薙ぎの振りで彼女の左脇腹を狙う!

その時彼女は左手を槍から手放し、

拳を握って私の剣戟を弾き返した!

まずい、返しの槍が来る…

バックステップで距離を取る。

彼女の左拳はどうなったのか…

よく見ると彼女の両手は金属製の篭手で覆われていた!

槍の振りが大きければ刀剣の間合いに入られることがある、

そうすると長物を振っている方が手数で不利になる。

その対策が篭手なんだ。

何て事…こんな事すら見えていなかったんだ。

思わず肩が落ちる。

表情にも現れていたのだろう。

彼女が久しぶりに言葉を吐く。

「それで終わり?

 上に弾くと見せかけて下を避けたのは良い狙いだったけど、

 刀で篭手に負けている様じゃ、

 修行が足りないわね。

 修行なんてしてないんだろうけど。」

侮蔑の眼差しを向けられる。

だって、殺し合いなんてする予定はなかったんだから!

そんな準備をしてる事って、そんなに偉いの!?

泣き言を言っても仕方がない。

「素人にしては頑張ったわね。

 練習相手にもならないけど。

 そろそろ終わらせてあげる。」

そう、彼女はウオーミングアップが終わったところ、

こちらはもう体力の殆どを使った後だ。

どうしよう…

もう只管防御を固めて、せめてもの意地を見せる以外にない。

悔しいよ…

同じ人間なのに、対等な人間の筈だったのに、

武器の使い方が上手なんて言う

普段だったらむしろ白い目で見られる様な人が

他人を見下すのが当然の世界、

それがこの世界の真実なんて…

私の思いなど暴力主義者には通用しない。

ここは弱肉強食の舞台なんだ。

彼女は腰を落とし、槍を引き、

私の右肩へ上向きに突いてくる。

私の力では槍をかちあげて相手の隙を作る事が出来ない事は

さっき確かめているから、

下を攻めるより上を攻めようとしたのだろう。

私は村正の自動防御に合わせてステップを踏むしかない。

でも、足の動きが鈍くなっているのが分かる。

斜め上に受け流した槍が引き戻される…

途中で彼女はステップインし、

槍が私の右斜め上から左下に振り払われる。

横から来る槍だ、不味い、受け流せない!

村正が私を斜め後ろに突き動かそうとする。

つまり、槍を刀で受けて跳ね飛ばされろと言うのだ。

風と同時に強い衝撃を受けて、槍と刀がぶつかったのが分かる。

村正は何とか私を守ってくれた…

その村正を跳ね飛ばされない様に両手でしっかり握っていられたのだ。

だけど、私は後ろに跳ね飛ばされ、土埃に塗れた。

強く打った腰も痛い…

いつかの格闘系女生徒の姿が心に浮かぶ…

もうジリ貧なのだろうか。

…不味い、追撃を受けて深刻なダメージを受けたら

それこそもう終わりだ。

急いで立ち上がる。

エイプリルを見ると、彼女も肩で息をしていた。

強気な発言で誤魔化されてしまったが、

彼女ももう連続攻撃は不可能な体力の残量なのだ。

何か攻め方があれば、逆転は可能な筈だ。

 調べてみると、そもそも柳剛流というのは柔術とか薙刀も教える流派の様です。

そりゃあスネを斬る訳ですね。


 今日のネットカフェ情報です。

「◯ンをなめるな!」というマンガが良かったです。

本格的なパンを焼く紹介はなかったのですが、

主人公がいろんな変な口をする描写が多くて、

それが主人公の心理を表していてとても可愛いキャラに描かれていたんです。

趣味にも依りますが。

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