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6−3 ベストエイト(1)

 金曜にはロジャー・ヘイスティングから会場への招待状が届く。

明日の会場はよりにもよって第2グラウンドだ。

騎馬隊の行進まで行える第1グラウンドに続く、

学院で2番目に大きい運動場だ。

つまり相手は大規模魔法の使い手なんだ。

本気で夜間に蛸壺やら塹壕やらを掘りに行きたかったが、

さすがに夜間に女生徒を入れてくれないだろう。

大規模魔法の恐怖に目が醒めて眠れない…

ぼうっとしたまま夜が明けるのを迎える。

土曜の午前中の授業は半日中船を漕いでいた。


 そんな土曜の夕方、第2グラウンド近くの更衣室で開始を待つ。

それはもう盛大に足も手も震えてしまう。

長距離からの牽制攻撃で近づけないまま

大規模範囲攻撃に見舞われる未来しか見えない。

頭の中がぐるぐると回るだけで考えが纏まらない。

そうして迎えの騎士がやって来た。

「時間です。」


「あら。」

第2グラウンドで対戦相手として待っていたのは、

少しクセのあるプラチナブロンドの髪を持つ、

よく整った顔の見慣れた女性。

「急にランニングを始めたりするから、

 何かと思っていたけれど、こういう事だったのね。」

それは私の実の姉、クレア・バークリーだった。


「両者はそれぞれ魔法防御を施され、致命傷を受ける事はない。

 但し、累積した傷と出血で死亡する事はあるが、

 神聖魔法で蘇生する事は可能だ。

 その場合はダメージの回復・再調整に数ヶ月時間がかかる可能性がある事を

 覚えておく事。

 両者、覚悟は決めたか!?」

「勿論。」

お姉ちゃんが短く宣言した。

私はまだ戸惑ってはいるが、

黙って負けるつもりはないのだから、宣言をする。

「はい!」

お姉ちゃんは火魔法師だ。

躊躇せずに牽制攻撃を続けるだろう。

その対応の為に武器の準備をしておく。

開始のセリフの前に左手で鞘を握り、

親指で鍔を押し出した。

「それではここに魔術姫トーナメント ベストエイト戦を執り行う。

 両者見合って…fight!」


「イブは王太子妃になりたいの?」

抜刀した私の10ft前に立つお姉ちゃんがそんな事を訊いた。

「そんなつもりはないよ。」

「そう、希望も無いまま5回勝ってきたのね。

 偉いわ。」

「それなりに頑張っては来たけど、

 勝ち上がったのは運と、この刀の力が大きいよ。

 私の力はあまり役に立ってない。」

「そう。それはそれで偉いわ。

 でもね、私はこのチャンスをものにしたいの。

 この国の女性の頂点に立てるチャンスが一回でもあるなら、

 なってみたいのね。

 だって、

 このままなら私は田舎領地を継ぐ人を婿にする為の生贄だもの。

 お父様もお母様もそれなりに大事に思っているけど、

 やっぱりバークリー家は私の足枷なのね。

 頑張れば私はもっと上に上がれる人間だと思うの。

 だから、あなたの面倒を見てあげるのも昨日で最後。

 私の踏み台として、あなたには死んでもらうわ。」

「…お姉ちゃん…」

お姉ちゃんの口が細かく動いた。

そして、5連のファイアボールが次々と私に向かって来た。

「いつまでも甘ったれのあなたの面倒を見るのはもう飽きたの。

 さっさと倒れてもらうわ。」

そうして3連のファイアランスが私に向かってくる。

村正を立てて全て飛散させる。

お姉ちゃんは少しずつ距離を取っている。

そして大人の背丈ほどのサイズのフレームランスを打ってくる。

これも村正を立てて防御する。

「全て終わったら田舎の領地も、お古の婚約者も、

 田舎者の両親も全部あなたにあげるから。

 あんなゴミの様なもの、私はいらないから。」

そうして私の四方をファイアウォールで囲む。

村正を右手一本で持ちながらぐるりと一回転する。

ファイアウォールは全て消滅する。

「お姉ちゃん、他に言うべき事はある?」

「一度殺される前に私の本音を聞きたいという事?

 そうね。

 物心付いた時にはあなたの面倒を見るように言われてきたわ。

 友達の家へ遊びに行きたくても行けなかったし、

 逆にあなたが付いて来たがって行けない事もあったわ。

 もう、ずっと前からあなたにはうんざりしていたのよ。

 私には似てないから友達に妹だと言うのも嫌だった。

 もう、本当にこれっきりにしたいのね。

 私が王太子妃になっても会いに来ないでね。」

「そう、それがこの世に残す最後の言葉で良いのね?」

「フフフフ、面白い事を言うのね。

 5回勝って来たのは褒めてあげるけど、

 世の中には決して勝てない相手がいる事を思い知ると良いわ。」

「そうね。教えてあげる。勝てない相手がいる事を。」

 クレアお姉ちゃんはラスボスではなかった!

…分かってましたよね?

ちょっと文章が短くってすいません。


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