3−3 三回戦(1)
三回戦の会場はまた第3球技場だ。
嫌な予感がするんだけど…
また魔法師対戦だと辛い。
2年や3年の魔法にどう対抗するか結局考えられなかった。
騎士がノックの後に控室の扉を開ける。
「時間です。」
そうして、第3球技場で私を待っていたのは、
あまり見かけない服装をした背は高いが痩身の女生徒だった。
彼女は、焦げ茶の上下を着ていた。
痩せている体にフィットしている服だ。
ベルト通しに金属色のベルトを巻いている。
グリップが左に付いているが、
鞘が見えない。短剣で戦うスタイルだろうか。
その下に見える太腿が太い。足技で戦うスタイルかもしれない。
ローキックを警戒して足元を気にしていると
いきなりナイフで攻撃されるかもしれない…
そして頭にはマスクを被っていた。
そのマスクには、被っている人の頭の目のあたりに大きな唇が描いてある。
ローリングなストーンのファンか?ちょっと違う絵に見えるが。
描かれた唇の間の黒塗り部分に穴が空いていて外が見えるのだろうか。
「両者はそれぞれ魔法防御を施され、致命傷を受ける事はない。
但し、累積した傷と出血で死亡する事はあるが、
神聖魔法で蘇生する事は可能だ。
その場合はダメージの回復・再調整に数ヶ月時間がかかる可能性がある事を
覚えておく事。
両者、覚悟は決めたか!?」
「はい。」
「勿論。」
相手は大分、腹が据わっている様な気がする。
「それではここに魔術姫トーナメント3回戦を執り行う。
両者見合って…fight!」
彼女は宣言の後、左のグリップを右手で掴み、
真っ直ぐ引き抜いた、
すると、ベルト通しに巻いていた金属色が動き、
ベルトに見えたものがグリップにくっついて抜けた。
何?鞭?真っ直ぐになってるけど何?
慌てて私も村正を抜刀する。
オープニングショットは彼女からだった。
あの武器が何か見分けがつかない事、
太めの太腿が体術系を鍛えた為なのかが分からないから
近づけなかったんだ。
彼女はあの両手剣程の長さを持った武器を持つ右手を引き絞り、
押し出す様に勢いよく前に突き出した。
投げるの?
唯一の武器を?
素人とはいえ、槍の突進は既に経験している私だから、
武器の切っ先が迫ってくる事だけは分かった。
ジャアーッと何かの摩擦音を立てて迫ってくるそれを
村正を寝かして弾く。
重い!なんかジャラジャラした振動がある!?
良く見ると切っ先の後に何かの金属が伸びて彼女の持つグリップに繋がっている。
鎖鎌みたいな物!?
私の左上に弾いたそれは、
伸び切ったところで彼女が引っ張り、
右側に流れてくる。
鞭の様に使う物なのか?
素直にバックステップして避ける。
ぐるっと目の前を通り過ぎて先端が戻っていくそれは、
金属の細かい部品が連なっている様だった。
中世世界にこんな武器があったのか?
ちゃきん、と音を立てて元の剣状態に戻ったそれを、
彼女は今度は左肩に剣を背負い、
右腕を袈裟斬りの様に振ってくる。
先端の動きが真っ直ぐじゃない!
何だこれ、何だこれ!?
曲がる方向は分かる。
左ピッチャーのスライダー状の変化の筈だが…
違う!遠心力で伸びてくるから、むしろシュートの様にも見える!
ジャアーッという威嚇音にも似た音を立てて迫るそれを、
サイドステップで大きく避ける。
伸び切ったそれを彼女は再度左側に腕を振って戻す。
縄跳びの紐が首のあたりを通る様なものだ。
大きく避ける以外に無い。
しかし、その時、前を通る物体が見えた。
剣が細かく分かれて真ん中の紐でくっついている様に見える。
まさか、これ、蛇腹剣!?
こんな物が実在するの!?
こんな分解された刀で人を斬れるの!?
…ああ、勿論、魔法で実現しているんだ。
理不尽の固まりである村正の自動防御やダッシュ斬りとか、
無限手裏剣とかを装備する私に文句を言う資格は無いが…
この動きに慣れる前に足が疲れ果ててしまうよ!
兎に角、あの武器のリーチ外に逃げる。
彼女がゆっくりと歩いて来る。
摺り足にする必要も無い。細かくステップを踏む必要も無い。
この距離は彼女の距離で、
日本刀などでは絶対に攻められない距離だからだ。
まずい、こうして逃げる方向を限定されたら、
リングのコーナーに追い詰められて
ラッシュで倒されるボクサーになってしまう。
急いで大回りで広い空間の方に逃げる。
でも、彼女は武器のリーチを想定して
私の逃げ場を塞ぐ方向に歩いて追い詰めようとする。
どうしようもない。
多分手裏剣を投げてもあの実体のある金属製の武器で防がれる。
つまり、村正の自動防御に賭けて突撃をかけるしかない。
蛇腹剣の絵を確認しようと検索したら、
釣り糸みたいなものに矢羽模様みたいなひらひらが張り付いているものを
振り回している少女キャラが出てきました。
…それ、相手を傷つけられないよね?
…いや、言いたい事は他にあるけど、
趣味は人それぞれだからね。
と言う事で、作中の蛇腹剣は軸が少し太めの設定です。
最大延長は20ftくらいで書いているつもりです。
また、相手が付けているマスクはアメリカ主将みたいな頭の上半分を隠すものです。
昭和の不良女生徒はマスクで口を隠してチェーンを振り回したらしいですが、
ただの都市伝説ですよね?それ。




