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1−1 ゲーム世界に転生した

 コレジャナイ、ってカタカナで書く意味を今回調べて知りました。

そんな作品です。

 普通に考えれば、前世の記憶を持って生まれてきたとしても、

15年も経てば殆どを忘れてしまうだろう。

それでも、私は自分がゲーム世界に転生した事を確信した。

だって、胸の前に仮想コンソールが出現し、

「Another player near here,

Do you fight with her?」

と表示されたからだ。

待って!このゲームのルールすら知らないのにいきなり対戦は困る!

お花摘み行ってるから対戦できませんモードはないの?

…良かった。あった。

今、離席中モードになった。

もうコンソールは私に対戦を勧めては来なくなった。

だけど、入学式前だと言うのに、

目の前で二人の2年生がバトルを始めようとしていた。

「あんたのその気取った顔が1年間どうしようも無く嫌だったのよ!

 ここでその憂さを晴らさせてもらうよ!」

これは吊るしの制服を着た平民らしき女生徒だ。

どことなく顔つきが水商売っぽい。

「それは奇遇ですわね。

 私もあなたの様な品位のない方と同じクラスで随分忍耐を強いられましてよ。

 この機会に暫く休学して頂きましょうね。」

これは豪華な改造制服を着た貴族令嬢だ。

たしかこの紋章はボーレット侯爵家だった筈だ。 

校舎の方から王国騎士の制服を着た男達が現れ、ルールを説明する。

「両者はそれぞれ魔法防御を施され、致命傷を受ける事はない。

 但し、累積した傷と出血で死亡する事はあるが、

 神聖魔法で蘇生する事は可能だ。

 その場合はダメージの回復・再調整に数ヶ月時間がかかる可能性がある事を

 覚えておく事。

 両者、覚悟は決めたか!?」

「とっくに決まってる!」

「勿論ですわ。」

二人の2年生はやる気だ。

多分「殺る」気だ。

「それでは魔術姫トーナメント1回戦をここで執り行う。

 両者、武器を装備しろ!」

貴族令嬢は錫杖を装備した。魔法使いだろう。

平民生徒はメリケンサックと装甲ブーツを装備した。格闘系だ。

「見合って…Fight!」

…相撲なのかボクシングなのかどっちかにして下さい…


『魔術姫』の単語があった通り、

この世界は『魔術姫は僕の花嫁part2』と同じ世界らしい。

『魔術姫は僕の花嫁』はVRゲームのプラットフォームで販売された

乙女ゲームだ。

乙女ゲームでVRゲームの癖に、

地味なカードバトルで勝ち抜かないといけない事が不評だったゲームだ。

そう、確か第2弾、part2のCMを見た事がある。

平民っぽい女生徒と貴族令嬢がバトルをする映像だった…

正に今の光景だろう。


 先手を取ろうとしたのは格闘系女生徒だ。

長距離から魔法を連発されたら完封負けもあり得るからだ。

ダッシュしてある距離に近づいたら、

急にスライディングを始めた。

魔法令嬢は相手の戦法を分かっていたらしく、

軽くジャンプしてスライディング・ローキックを避けて

そのまま格闘生徒の腹にキックを入れた。

格闘生徒は体を回して魔法令嬢を体からどけた。

魔法令嬢はバックステップして距離を取った。

魔法令嬢が心の準備を整える前に格闘生徒がダッシュして

殴りかかろうとしたが、

魔法令嬢は持っていた錫杖を格闘生徒に向けて突いた。

突きは格闘生徒の腹部に入り、突進は止められた。

腰を折りつつバックステップした格闘生徒に対し、

ステップインした魔法令嬢が更に錫杖により格闘生徒を突こうとするが、

格闘生徒は左にステップして突きを避ける。

そのまま格闘生徒は前進しようとするが、

魔法令嬢は錫杖で横薙ぎにして格闘生徒の横っ腹を叩き、

格闘生徒を薙ぎ倒した。

この令嬢は中々エグい。さっきから相手の腹ばかり狙っている。

おまけに相手は女子だから男子ほど大柄ではないが、

前進してくる高校2年生(前世なら)を錫杖で突き返し、薙ぎ倒す。

かなりの剛腕だ。

一方、格闘生徒はもう体中土埃で汚れているし、

腹部ばかり攻撃されてなんだか体勢が悪い気がする。

ボクシングで腹を叩かれると動きが鈍くなると言う。

そりゃそうだ。上半身と下半身を繋ぐ部分だから、

痛みで上半身の支えが出来なくなるんだから。

魔法令嬢も息が粗くなっているが、

格闘生徒はなんだか顔色が悪い。

腹式呼吸が充分出来なくなっているんじゃないだろうか。

格闘生徒は真っ直ぐ近づけば突かれ、避ければ薙ぎ倒される。

だから今度は姿勢を低くして近づこうとするが、

錫杖を下から跳ね上げられて顎を叩かれ、

跳ね上がった顔を狙われるかと両腕でガードしたところ、

魔法令嬢は錫杖の突きで格闘生徒のみぞおちを突いた。

格闘生徒はくの字に体を折り曲げたが、

それに対し今度こそ魔法令嬢は格闘生徒の横っ面を錫杖で薙いだ。

地面を転がる格闘生徒は頬を深く切られて流血した。

しかし、この対戦、フィットしていない。

攻撃のリーチの違いで一方的になっている。

つまり、そういうデモンストレーションを見せる事で、

プレイヤー達に武器のリーチの重要性を学ばせようという訳だ。

乙女ゲームをやる女の子達は『剣道三倍段』などというリーチの重要性など

知る筈もないからだ。

ゲームのデモとしてならこれも良いが、

それを再現させられる格闘系女生徒はたまったものではない。


 ここで魔法令嬢は錫杖をくるっと回して何やら呪文を唱えた。

彼女の全身が軽く光る。

なにやらエンチャントしたのだろう。強化魔法かな。

ここで体力強化などされたらもうこの後は圧倒的になる。

格闘生徒は立ち上がり、ダッシュしようとしたが、

それは最初の頃の様な勢いのない、ただの前進だった…

魔法令嬢は軽くサイドステップし、錫杖をスイングした。

それは格闘生徒をヒットし、

15ftも跳ね飛ばされた彼女はゴロゴロ地面を転がって…

もう立ち上がらなかった。

口から血を流して身動き一つしないでいた。

立会の騎士が彼女の意識を確認したが、反応は無かった。

だから騎士は勝敗判定をした。

「勝者、デビルランサー!」

なにそれ、登録名!?趣味悪〜い。

錫杖を持っているのに「ランサー」なのは、

槍のように使う戦闘スタイルから名乗っているのだろう。

修道士の様な格好をした男達が敗者を担架で運んで行き、

勝者は騎士と共にどこかに歩いて行った。


「大丈夫?」

横の女生徒から声をかけられた。

「え、何が?」

「青い顔しているから、気分悪いのかな、と思って。」

つまり彼女は私の心配をして声をかけてくれたんだ。

青い顔…そりゃ、するよ!

素人の私もプレイヤーなんだから、明日は我が身だよ!

とは言えず…

「だって、いきなり学校で喧嘩してるんだもの。びっくりするよ。」

「知らないの?魔術姫トーナメントの事?」

頭の中を掻っ攫ってみても前世の記憶以外で魔術姫トーナメントの話を

聞いた覚えがない。

「多分知らないよ。何、それ?」

「第1王子殿下がこの学院の2年に在学してるでしょ?

 あの方の婚約者を決める為に、在学中の女生徒の内、

 希望者および王家の選定者合計256人で

 トーナメント形式で最も優秀な女生徒を決めるの。

 優勝者は魔術姫と呼ばれ、将来の王妃となる訳なんだけど、

 そのトーナメントがこの入学式の日から始まり、

 毎週1回対戦する事が必要なの。」

まあ、前世の記憶の通りだね。

「でも、魔法使ってないじゃない?」

「最後に侯爵令嬢が強化魔法を使ったよ。

 彼女、有名な棒術使いだから、強化魔法だけで上位進出が見込まれてるよ。

 自らデビルランサーを名乗るくらい自信があるみたい。」

デビルは名乗りたくないよね普通。

きっと脳筋なんだね。絶対性格合わないよ私とは。

「ところで新入生?私も新入生なんだ。

 2組のエイプリル・フレイよ。」

「同じ2組の、イブ・バークリーよ。

 よろしくね。」

「じゃあ、教室に急ぎましょうか。

 遅れそうだよ。」

「そうだね。急ごう。」

 もうキャサリンの完結ブーストは終わったかと思って書き始めましたが、

今日もまだブーストしてる様ですね、エヘヘ。ありがとう。

でも空気読まずに新作投稿します。

5日投稿、2日休みの予定。

間延びした回を無くすのが目的です。


8/17 トーナメントの説明を少し追加しました。

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