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SPECIA  作者: うらら
7章 再発見
25/25

episode7-3

更新まっっっじで1年振りです!

頑張って内容を思い出しながら書いています。

スローペース更新になるかもしれませんが、何卒よろしくお願いします。

「右だ! ジン、あいつの弱点は右中心部付近だ!」

「了解!」

 C級侵略者。俺たちは休みの間の任務に出て、そいつの相手をしていた。この間見た奴よりは反応ものろく、戦いやすいな、と思う。今回のやつは大きな円柱状の形をしていて、目があちらこちら現れたり消えたりしている。相変わらずどうも気持ち悪い見た目に、俺は辟易する。

 戦闘を初めてから四日ほど経っているらしいが、人員の入れ替えも行っているためこちら側の勢力は常に有利なまま進んでいるようだった。

「やったっ!」

 誰かがそう叫んだ。それに気がついてふっと顔を上げると、パラパラと粉状になって消えていく侵略者の姿が見えた。ルカが俺に言う。

「あれが侵略者を倒せた時のあかしだ。体が崩れて、跡形もなくなる。今回はあの隊員がやったようだがな」

 と、俺たちの数十メートル先にいるであろうその人間を軽くみやりながらルカが言った。筋骨隆々、という感じの隊員で、その図体に見合わずはしゃいでいるように見えた。ルカが苦笑しながら俺に呟く。

「……名前までは知らんが……隊員のうちのひとりだろうな。侵略者を一体でも倒したというのは誇りだからな」

 男がこちらの視線に気が付きそうになっていたため、少しバツが悪くなって、俺は慌てて目をそらす。ルカが「帰るぞ」と俺に声をかけた。


「ジン。そういえば、上手いこと例のスケジュールが組めたぞ」

 例の……中央都市に行けるということだ。俺は息を飲む。

「ほ、ホント?!」

「ああ。ただ勿論任務をこなしてもらう為、だ。あくまで任務だということを忘れるなよ。……ああ、あと言い忘れていた。私も同行しろと言われた」

「えっでも……隊長を無闇に動かすのは良くないんじゃ?」

俺が心配になって聞くと、ああ、と苦々しくルカが言った。

「次世代の指揮体系を作り上げてかなきゃいけないからな。丁度いいんだよ。それで、内容だが……」

 俺は今度は唾を飲んだ。どれほど危険でも、真実を求めるためにはそれに耐える必要があるのだろうと思う。

「……子守りだ」

「はっ?」


 ……ということで、俺は中央都市の三階……『施設』のある階に来ていた。

具体的には『子供と触れ合うことによる次世代の意識育成、現状の教育現場の把握の目的を持った任務』ということらしい。……が……。

「はーい僕の髪引っ張らないでね!? ちょ、痛いっ」

「ジンさんおもしろーい」

「人で遊ばないようにねー!?」

 なんの手がかりもなく二時間自由奔放な子供たちに振り回されていた。あーあーと施設の先生が寄ってきて言う。若い女の先生で、苦笑しながら五、六歳の子供を抱えながら声をかけてきた。

「ごめんなさいね。こちらの教育が行き届いてなくって……」

「あはは……でもいいじゃないですか。伸び伸びしてて」

 これは本音だった。教育の現場で下手に大人に萎縮した子供たちがいるというよりもこちらの方が健全なように思える。女の先生は少し微笑んで言った。

「はい。我々も将来的に軍に入る可能性があるとはいえ、ロボットを育てたい訳では無いので……少なくともこの子達が豊かな感受性や個性を育てて欲しいと思って、教育をするようにしています」

 教育体制としては十分健全なようである。もちろんどの子にも怪我は見当たらないし、ある程度太っている子も痩せている子もいるが、体質の範囲内のようであった。子供たちの様子からも虐待は無い、と一目でわかった。ただ、みんなかなり幼い。聞くところによると、ここに居るのは五歳くらいの子供までらしく、それ以上の子は他のフロアか、施設や養子に出されるらしい。ルカの方をちらりと見ると、彼女も子供たちに振り回されているようである。隊長とはいえど慣れていないようだった。つい口元が緩みそうになる。

 ただ……俺は考え込む。ここに来れたのはいいが、抜け道らしき場所も、何かしらの暗号を入力する所も見当たらない。2105。考えてもわからないのだが、その数字を脳内で反芻する。肝心の手がかりが見つからないのなら、ここにいても一緒だ。俺は焦りを募らせる。

 俺たちが居るのはだだっ広い大部屋だ。床はタイル、天井は高く空を模している。そこにご飯を食べるところも、広場のようなものも、絵本のスペースもあり、それぞれのびのびと子供たちがすごしている。子供たちはここには三百人ほどいるらしい。角部屋のようで、あるのはガラス張りの窓と俺たちが入ってきた出入口、だけだった。

 万事休す、か。そう思っていると、目の前で三歳ほどの子供がつまづいた。慌てて俺は受け止める。

「大丈夫かー?」

「うん……ありがとう」

 涙目の大人しそうな女の子だった。うん、と俺は笑って言った。

「にしてもどうしてこんな何も無いとこ……で……」

 言っている途中に気がついた。その部分のタイルが、ほんの少し盛りあがっていたのだ。注目しないと、気が付かないほどに。心臓がどくんと跳ねる。

 俺はそのタイルに近づいて、コンと叩いてみる。と、中が空洞のようだった。念の為他の場所も叩いてみるが、明らかに感覚も音も違う。石でできているはずなのに、その気配を感じない。……ビンゴだ。

 ルカにそのことを小声で伝えると、ルカは少し驚いた顔をして頷いた。少し表情が硬い。

「……わかった。どうにかあとで潜入しないとな」

「そうだね……」

「……でもどうする、この子達がいるうちはむやみに動けないし」

 俺たちに興味津々で近づいてくる幼児たちをあやしながら、俺もうーんとうなる。

「そこなんだよなあ、子供たちを巻き込む訳にも……」

「とりあえずこの案件は持ち帰っとくか?」

「いや、下手に動いて警戒されると困るし……」

 もう一度、万事休す。考え込んでいると、膝の上にいた子供がグズりだした。一歳ぐらいの子だろう。どうしたのだろう、とあたふたしていると、そばに居た少し大きい、五歳くらいの女の子が言う。

「あーちゃん、眠くなっちゃったんだよね。もうすぐおひるねだからね、よしよし」

 あーちゃん。このぐずっている子の名前だろう。それはともかく。

「ねえ、お昼寝ってなに?」

 俺が聞くと、その五歳ほどの女の子はえっとねー、と前置きして話し出した。

「お昼ご飯のあとに、一時間ぐらい自分のお部屋にもどっておひるねするんだよー」

自分の部屋。ここは大部屋で、寝る時はそれぞれ別の数部屋に別れていると、確かに職員さんに聞いた記憶がある。……なるほど。いい事を聞いたかもしれない。俺とルカは、無言で頷きあった。たぶん、考えていることは一緒だろう。


「……ということで、そのタイルに躓いて、その子がコケてしまったんです。それでここがどうやら空洞になっているようで。事故に繋がる可能性があるので、調査しようと思ってて……」

 お昼寝の時間。俺とルカは、少し偽って職員さんに事情を説明した。そちらの方が不審に思われ止められたり、通報されることがないと思ったからだった。あら、と俺たちが話しかけた若い女性の職員さんが少し驚いて、その後不安そうにする。

「それなら、お手数を掛けるのは申し訳ないので、専門家に今度見てもらった方がいいですね……」

「ああいやそうではなくて! 私たちにもやれるので、大丈夫ですよ」

 ルカが慌てて遮る。職員さんの反応で察するに、きっと下に抜け道があるなどとは思っていないのだろう。もしもそのことを知っているならば、もう少し俺たちが調べようとするのを強く止めたり、この時点で通報、或いは邪魔を始めているはずだった。

ということは……情報統制がなされている。きっと、中央都市にいる全員が知っている情報というわけでもないのだろう。そうでなければ、こうはならない。

旭が言っていた、前あった抜け道。前は子供しかいないと思って少し分かりやすく抜け道を設定していたのだろうが、今回はこちらも実際にたまたまタイルに気がつくことが出来なければ発見できないほどの偽装の巧妙さだった。俺は気になっていたことを職員さんに聞く。

「あの、この部屋で不審な人などを見かけたことはありませんか?」

「不審な人……?」

「もしかしたらなにかの目的でここに細工をした可能性があるので」

「いえ……。中央都市の者以外は基本入れないようになっているので。例えば今回のように申請を受けた場合と、月一の定期調査以外には人は入りません」

「定期調査……」

「はい。教育が適切に行われているか、や設備の不備がないか、という目的で……。その時は基本的に子供たちには各自の部屋で過ごして貰っていますし、私たちも子供たちをそちらで監督しています」

 俺は納得して、「なるほど……」と相槌を打った。

 と、ルカがあの、と言った。

「ここ開けますね」

 と、タイルの少しズレている部分をひっかけて開けた。この下に、道がある……そう主あと、少しだけ緊張する。ギイ、という音がしてその内部が露出する。

……が、出てきたのはただのその下のコンクリートの床だった。

「……えっ」

「……床……ですね」

 職員さんはほっとしたような顔をしたが、俺たちは怪訝な顔になる。……失敗したのだろうか。突然、ハコが後ろから口を挟む。

「ビンゴ! じゃないのな」

「うわっ」

 驚いて声が出る。今日はあまり出てこなかったのに。ルカはこちらをみるが、職員さんは逆に怪訝な顔をしたので、「すみません、ハエが」と言って誤魔化した。そのまま御手洗に、と席を立つ。

 トイレに入り、ハコにおい、ととりあえず言った。

「お前、事情を知らない人がいる前では話すなってば」

「悪いって。でもハエ呼ばわりは酷くないか? ……で? どうするんだよ」

「どうするもなにも、完全にミスったな……また別の入口があったみたいだ」

「はあ? お前本気で言ってるのか?」

 本気で言ってるのか、とは、どういう意味だろう。ハコを疑問を持った目で見つめていると、はあ、とハコがため息を着く。

「なんでもない」

「な、なんだよ気になるだろ!」

「別にー? 最初に言わなかったか? 俺はお前の敵でも味方でもねーの。何でもは教えねーよ」

「立場上は味方って……」

「聞こえなーい」

 子供みたいだ。俺が呆れていると、まあ、とハコが言う。

「ヒント。ユーゴが言っていたことだ」

「……? それヒントって言うか?」

「あのなあ、俺がお前の味方では仮にあったとしても、だ。自分でなんも考えられないようなお子ちゃまの親ではねえんだぞ」

 聞こえてんじゃんか。そう文句を言いたい気持ちもあったが、確かに言う通りであった。このままだと俺はお子ちゃまである。考えろ。どこかにヒントがあるはずであった。ユーゴが言っていたことを、反芻する。そもそもユーゴといつ会った。確か、最後に会ったのはプロムで合っているはずで……。その時言っていたこと。いつだ? 会った時か、戦っている時か……。

「……あっ」


 俺が慌てて戻ると、ルカがうーんと唸っていた。

「たしかに空洞だと思ったんだが、やっぱり気のせいだったようで……。すみません、床戻しますね」

「はあ……」

 職員さんは困惑しているようだったが、あ、待って、と俺は制止する。ルカはどうかしたのか、と言った。俺は「ちょっと試してみます」とだけ言う。

 ユーゴの言っていたこと。応用。応用さえできれば、と言っていた。もしかしたら……。

 テレポートABを、床のタイルに向かって発動させる。テレポートABは、個人で発動させるにはAB消費が激しく、距離に消費量は左右される。どこにテレポートさせようか迷った末俺の横にテレポートするように。すると……タイルの下にあったコンクリートが外れ、床の下に穴ができた。先程までコンクリートに見えていた板は薄く、コンクリートに見せかけているだけだったようだ。……合っていた。

 ルカが目を見開く。

「……これは……」

「ハコにヒントをもらったんです。それでこの床のタイルの下になっていたコンクリートはフェイクで、テレポートABを使うことですぐに外れるようになってるって気づいて」

「よく気づいたな……なるほど、コンクリートで出来たように見せかけて実際はピッタリハマる蓋のような構造になっていたのか」

「あ、あの……」

 きっとこの下が隠し通路である。穴はどうにか一人分入れるようなサイズ感で、ここに入ればどうなるかは分からなかった。もしかしたら罠があるかもしれない。俺はそう考えてルカに言った。

「ルカ、ここからは俺だけで行くよ。何があるか分からないし、隊長のルカになにかがあったら俺は責任を取れないから」

 なっ、とルカは声を詰まらせる。

「私は隊長だ。隊員を守る義務がある。ジンを一人で行かせる訳には」

「頼むよルカ。これは『俺の』問題だ。ルカを巻き込むことはしたくない」

 ルカはぐっ、と言葉を飲み込む。言いたいことが色々あるのだろう。ただ、何を言われても、引く気はなかった。職員さんが、こちらの様子をおずおずと伺う。俺はそれに気づいて笑顔を見せた。

「あー、大丈夫っすよ。ここ後で塞いでもらうんで。でもちょっと何があるかわからないんで調査してきていいっすか。変な虫とかいるかも」

「ええ、でもそれなら許可とか……」

「大丈夫ですか! ありがとうございます!」

 聞こえなかった振りをして穴に入ろうとする。ルカは、何故かぐっと唇を噛んで、今にも泣き出しそうな表情だった。隊長とは言っても彼女は一人の少女だ、と改めて、感じる。

「大丈夫ですよ」

 俺はそう言い残して穴に飛び込む。

もしかしたら凄く地面から遠いところにある穴なのかもしれない、と見越して、骨折の覚悟もして、受身をとりながら飛び込んだ。飛翔ABの体制も心の準備も整えておく。しかしそれとは裏腹に……。

「滑り台かよ!」

 そう。滑り台のように俺は運ばれていっていたため、俺は脳内でずっこけていた。道中に罠がないかを確かめながら、少し勢いを殺しながら進む。ここを抜けたら。生唾を飲み込む。ここを抜けたら、きっと。

出口の光が、かすかに見えてきた。それを睨みつけながら、そこに向かって確実に進んで行く。

うららです。話がやっと終盤に突入しますね。

どのぐらいかかるか分からないですが、完結はさせますのでお手柔らかに。

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