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SPECIA  作者: うらら
6章 華麗なる武闘会
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episode6-3

 数十メートル浮上した俺とユーゴは、正面から向かい合った。対人戦闘は訓練を抜くと湊とやりあった時以来だ。俺が唾を飲むと、ユーゴがにっこりと言う。

「湊くん? だっけ。あんなに怖がっちゃって。身の丈を知ってるんだね」

「……いいからやるぞ」

「その前にルールを決めよう。シンプルに、先に相手を気絶させた方が勝ち、でいい?」

 なかなかなルールだ。俺は覚悟を決めて頷く。格上の相手だというのは重々承知だ。ハコが横から口を挟んだ。

「おい、ジン。ほんとに良いのか? こんな馬鹿みたいな勝負で決めちまって」

「大丈夫だ。……ここでやらないと、俺は多分一生後悔する」

 怪しまれないよう小声で返すと、ハコがふう、と息を着く。

「……仕方ないな。俺も全力でサポートする」

 覚悟は決まった。剣は元々万が一の時の為に携えていたから大丈夫だった。引き抜いて、相手を睨みつけた。ユーゴも構える。

「なんだかルイと戦っているみたいで、懐かしい」

「……そうか」

 どちらともなく、剣を振り上げた。カチンと重い音が響いて、剣の間を火花が散る。力が強く、押し負けそうになるが、一度引いて体制を整えた。

 剣どうしの応酬はしばらく続いた。攻撃ABを当てられかけたが斬撃で切る事ができた。やはりハコの力でAB攻撃を無効化することができる。

「へえ……やっぱりこの力面白い。君にも興味が湧くね」

 ユーゴはそう言うと再度剣を振り下ろした。俺は追いつかずに防御ABを使う。が……それを通してきた。

 防御ABというのは元来完璧なものではない、とは聞いていた。だがあっさりと破られたことに俺は驚く。剣が勢いよく振り下ろされて、俺は慌ててかわす。が、頬に傷が入ってしまったようで、ずきずきと傷んだ。

「避けるか。やるね」

 ちょっとはガチでやるか、とユーゴが剣を上に掲げる。すると、白い光の球が彼の頭上に生まれた。それは少しずつ大きくなっているようで、まるで……力を溜めているようだった。俺が驚いていると、ユーゴはにっと笑う。

「俺のスペシアさ。……ABを溜めて、放出できるってやつだね」

 俺は急いでその球を切りに向かおうとして、走る。そして飛翔ABを使って飛び上がり、その球を目掛けて剣を振り下ろそうとする。が……。

「甘いね」

 ユーゴはそう言うと、頭上に飛んだ俺の腹を目掛けて剣を刺そうとした。

「避けろ!」

ハコがそう叫んでくれたお陰で、間一髪の所で逃れるけれど、服が切り裂かれてしまう。そのまま体制が崩れたことに気がつく。まずい、と思った時にはもう遅かった。俺の目の前にある白い光は膨張しきっていた。俺は距離を取ろうと飛び退くも、うまく距離が取れない。

「またね、ジンくん」

 終わった……と確信した。目を瞑る……が、ガンッと鈍い音がしてユーゴが落ちていく。何が起こったか分からずにいると、下から怒号が飛んでくる。

「ジンーっ! 勝手に何してんだ!」

「……る、ルカ!」

 ルカが鬼の形相で下でユーゴを抱えていた。俺はほっとするのと同時に、とんでもなく怒られるだろうと覚悟した。そのぐらい恐ろしい形相だった。綺麗なドレス姿に似合わないぐらいに。


「……で、まんまと戦いに乗ったって訳?」

「はい……」

「馬鹿かお前は!」

 ルカから渾身のチョップを喰らう。下に降りた俺は膝詰めで説教されていた。ユーゴはもうとっくに目を覚ましてにやにやとその様子を見守っている。呑気なものだ。

「てっきり本物の不審者かと思って全力で攻撃したでしょうが! 仮にも作戦本部のトップに! そもそも危ないでしょうが勝手にそんなことしたら!」

「仮にもーってひどくない?」

 ユーゴが不満げに口を挟む。ハコも頷いた。

「ほんっと。あのときルカの助けが入らなかったらお前今頃どうなってたことやら」

 それを考えるとたしかに恐ろしい。気絶していただけではない。リサも連れていかれてしまっていたかもしれなかったのだ。頭に血が上っていたとはいえ到底許されることでは無い。

「……本当に……すみませんでした」

 唇を噛み締めてそう言うと、ユーゴが間に入った。

「んまっ、若気の至りだね。こういうこともあるさ」

「……ユーゴさん、とりあえず出席を許可します。お入りください」

「え? いいの?」

 俺とユーゴはポカンとしてルカを見る。ルカはきょとんとして言った。

「別に……なにか騒ぎを起こそうとしてるわけでもないだろう? 同学年だったわけだし別にいいんじゃないか……?」

 確かに。

 ユーゴは「じゃっお言葉に甘えて〜」と軽快な口調でその場をでようとして、おっと、っと戻ってきて俺に言った。

「気絶しちゃったけどお願い一個かなっちゃったから、フェアじゃないね。てことで君の条件も一つ叶えてあげる。……実戦形式の訓練をもう一度許可しよう」

「えっ……!」

 よし、じゃあね、とユーゴはにっこりと去る。先ほどのやり取りを聞いていたのだろうか、ルカは首を捻った。

「……結果オーライ……なのか……?」

「……うん」

「……いや、うんじゃない。お前は軽率が過ぎる。特に今回は危なかった。……よく反省しろ」

 ルカに正論を言われて俺は肩をがっくりと落とす。彼女の言うことはもっともだ。今回のことが原因で怪我や……リサという大きな損失に繋がってもおかしくなかったのだ。

「はい、じゃあ戻るぞ。立て」

「はい……」

 ルカに引っ立てられて俺は立ち上がって、ホールの中に入った。入ると、ワイワイとみんなが先ほどまでより盛り上がっており、何かと思う。と、アナウンスがホールに響いた。

『あと五分後からダンスパーティーを始めます。御相手の方と共にお待ちください』

 ダンス。マリンに誘われたやつだ、と思い出した。早くマリンを探さなければ。後ろを歩いていたルカに「じゃあ」と声を掛け、振り向いた。

 そのルカの顔はどこか寂しそうに見えた。気のせいなのかもしれないが。ダンスを踊る相手がいないのだろう。あの感じだと畏れられていて友達も……。そう気がついた俺は思わず彼女の手を取っていた。いてもたってもいられなかったのだ。

「俺と……踊りませんか?」

 ルカは目を見開いてから、きっと俺の方を睨んだ。

「マリンが誘っていただろう。そっちを優先するべきだ」

「いやまあ……で、でも何曲かあるんでしょ? なら踊れるから大丈夫だよ」

「なんで私なんだ」

 不機嫌そうな顔だ。ただ、俺は思わず漏らす。

「……いや、ただ、一緒に踊りたいな、と思って……」

 ルカはしかめっ面をしてそっぽを向いた。表情が読み取れずいると、ルカはため息をついて、呆れたような声で言った。

「お前は……ほんと……」

「ま、まずいかなやっぱり」

「……二人して一体何を話してるんですか?」

 後ろをむくとマリンが仁王立ちしていた。俺は心臓が止まるかと思うぐらい驚く。マリンがへー、と真顔で言う。

「先約を破るんですか、ジンさん」

「い、いやいやいや、そんなつもりは」

「……クズ! バカ! 弱虫! もう知りませんから好きにしてください! バカ〜!」

 そう怒鳴るなりマリンはどこかに消えてしまった。怒らせてしまったようだ。人混みの中に紛れてしまってもう見つけられない。追いかけようか迷う。と、ハコがひょいっと顔を出した。

「お前クズ男だな〜」

「は、ハコまでー……。約束破るつもりは無かったんだって」

「あのなあ、そういうことじゃなくて……。まあいいや、追いかけるつもりか?」

「う、うん……いや、でも」

 ルカの方をちらりと見やると、いたたまれなさそうな表情で、こめかみを抑えて言葉を発する。

「……私のことなんて今どうでもいいだろ」

「よくないよ!」

「なっ……あのねえ、今はマリンのほうが__」

『あと一分です!』

 脳天気なアナウンスが響く。

 ルカの言うことも最もだった。でも俺はどうしても気になってしまった。ルカが俺の背中を押す。

「早く行きなさいバカ」

「ルカまで!」

「いーいーかーら早く!」

 そう言われたので、俺は頷いて、「ごめん!」と言ってルカの所を離れた。



 優雅な曲が流れ出した。美しいワルツ。……それに似合わぬふくれっ面をしているのがマリンだ。

「……バカだねー、ジン」

「バカだなぁ、ジン」

「ほんっとバカですよ!」

パーティ会場の端で団子になっていたリサ……私とリヒトとマリンはそれぞれジンを罵倒した。ジンはマリンの言葉の真意に気づいているのかいないのか、とんでもなく無神経な行動をしているのだった。にしても他の女性を誘うというのは言語道断である。

「まあまあ、多分ジンはあのジンクスを知らないんだよ」

「にしてもですよ〜」

「ジンクスってなんだ?」

 リヒトが真顔で聞いてきた。はあ、と私はため息混じりに答えた。朴念仁どもだ。

「プロムで最初に踊った人と永遠に結ばれる……っていうジンクスだよ。本命がいない人はそれぞれ仲良い人誘ったりしてるみたいだけど……マリンは、ねえ」

「……うるさいですリサさん」

 なかなか酷い流れ弾を食らったが、図星だったようだ。私は笑った。

「まあ、ジンはそんなこと知らないからね。多分ただ誘われただけだと思ったんじゃない? それで気づかないのもひっどいけど……」

「……ほんとに……。あーもうジンクスなんて知らない! リヒトさん踊りましょう! 当てつけです当てつけ!」

「お前ほんとにそれでいいのか……」

 リヒトが半ば呆れながらも腕を引っ張られてついていった。ムードもクソもない。私は思わず笑ってしまった。と、そこにジンが来る。

「あ、来た。バカ」

「みんなしてひどくない? というか……マリンは? こっちにいたんじゃないの?」

「マリンならさっきリヒトとダンスに行ったよ」

「えっ……追いかけてきたのに……」

 ジンは驚いた顔をする。全くもって乙女心が分かっていないらしいので、私は彼にヒントを与えることにした。

「……ダンスパーティーのジンクスってのがあるらしいね。プロムで最初に踊った人と結ばれるとかなんとか」

「へー、そんなのあるんだ」

「そうそう……ってえ?」

 ジンが返したと思って頷いたら、私とジンの後ろに湊くんがいた。驚いて心臓が跳ねる。ジンは「湊!」と驚いて、私に聞き返した。

「そんなジンクスがあるの? それならマリンはそれ知らなかったのかも」

「は?」

「俺と結ばれる〜なんていくらジンクスって言っても絶対やでしょ、あの子。良かった、踊らなくて……」

 鈍感にも程があるだろ!と突っ込みたくなる私だったが、ぐっと堪えた。ここでマリンの気持ちを勝手に代弁する訳にはいかない。

 それはそうとして。

「湊くんはどうしたの? 警備の方は?」

「タイガが来たから代わってくれたよ」

「あっ、タイガに行かせちゃったか。そういえばさっき警備を代わりに行ったんじゃん。ジン、桜ちゃんと旭くんと交代しに行こ__」

「ああいやそれは良くて。僕リサに用事あってさ」

「え、どうしたの?」

 私も色々言えていなかったことがあるからちょうど良かった。色々調べた結果とか、さっきのお礼とか。そう考えていたのが吹っ飛ぶほど、驚く言葉を発せられた。

「……リサ、今から僕と踊ってくれる?」

「……へっ」

 驚いて声にならない声を発してしまった。私は焦る。

「ちょっ、さっきの話聞いてたでしょ?! そんな軽々しく……」

「軽々しくない。さっきの話を聞いた上で誘ってるよ」

 顔が熱くなるのを感じる。鈍感だとか、私も人のことを言えないかもしれなかった。ジンがすっとどこかにはけていくのが見えた。脳内で行かないで、私こういうの慣れてない!と叫ぶも虚しい。

「……やっぱりだめ……?」

湊くんはこちらを伺うように覗き込む。私はぐっと言葉に詰まった。何しろ、忘れかけていたがかなりの……イケメンだ。そしてそのキラキラ度合いに逆らえないほどには私も年頃の女子だ。

「……わかった。私も話したいこと色々あったし」

「ほんと?! ありがとう! じゃ、次の曲から踊ろう」

 ぱぁっと湊くんは笑った。驚きと、なにか別のもので心臓が暴れるのを抑えられないまま、私は彼に手を取られた。


うららです。

ラブコメ気味になってきちゃったな。

とても楽しい。

にしても私の予想してない展開にちょっとなってるな。キャラが勝手に動いてる。まずい……。

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