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SPECIA  作者: うらら
6章 華麗なる武闘会
20/25

episode6-2

 会場は学校を少し離れた大きなホールだ。WI地区ホール、というそのままの名称だが、そう言うだけあり様々な用途で使われる、大きなホール。コンサートや式典、今回のようなパーティにも使われることがある。

 そしてそういう場なだけあって、やはり建物はかなり立派だった。中は華美な装飾品もあるが基本的にシンプルで上品な内装だ。一歩外にでると大きな中庭が広がっている。俺は圧倒されつつも、どうにか皆と一緒にホールを見学できたところだった。

 俺は不安になってルカに耳打ちする。……ルカは未だ制服だった。大丈夫か。

「ルカ。本当に外の警備をあの三人だけに任せて大丈夫なのか? あいつらの体力的にも、普通に物理的にも……。こんなに広いのに」

「三人ともそんなにヤワじゃないだろう。警備員を雇っても良かったんだが、学校の出費は減らせれば減らせるほどいい。使えるものは使っとけって訳だ」

 うーん、と思うも、横から桜さんがそっと口を挟む。彼女は警備役だからかスーツ姿だった。

「お気遣いありがとうございます。でも私たちは平気ですよ」

 ぱっと顔を見ると微笑んでいる。なるほど確かに姫であるのだろう、とても上品で物腰が柔らかい。……この子が嘘をついたとは信じられないほど。

 あとな、とルカが添える。

「いちいち距離が近い。今はいいが……それこそ今からのパーティ……社会でそんなことをしたらマナーがなってないと思われるぞ」

「えっ……! すみません」

 いや、べつにいいけど、とルカがため息を着く。物珍しそうにきょろきょろしていたリヒトがそういえば、と言う。

「俺たちは何をすれば」

「出席だけでいい。べつに歓談とか、その他もろもろ、マナーを守りさえすれば自由にしてもらって構わない」

「その間学校の警備は……」

「大丈夫だ。先生たちにいつもより厳重な警備をお願いしているからな」

 ルカがそう答えると、リヒトは少し曇った顔をする。大した仕事ではない。それが不満なのだろうかと思っていると、タイガが言った。タイガは臙脂色のタキシードを着ていて、よく似合っていた。

「去年も思ったんだよね。在校生代表って有志じゃだめだったの? まぁたしかに毎年の仕事ではあるのかもしれないけど……」

「まあ……毎年そうだから。今年だけわざわざ変える理由も見当たらない」

「ふーん……まあいいか。役得みたいなもんだしね」

 タイガは苦笑する。色々思うところもあるのだろう。ルカが頷いて、指示を出した。

「というわけだ。まあ勿論なにかあれば動いてもらうかもしれんが……そうならないように警備も配置している。大丈夫だろう。というわけで設営を手伝え」

「え?」

 皆がきょとんとした顔をする。あー、とタイガ。

「今年は人も多いからすぐ終わるだろう。設営は在校生の勤めだ。……というわけで一時間で終わらせる。いくぞ」

 そういうことか……と俺たちは少し脱力する。つまり準備役というわけだ。そういうもんだよな、と思いながら、俺たちは準備を始めた。


 パーティの装飾が終わると、卒業生たちが入り始めた。その光景に安堵してリサが漏らす。

「つっかれた〜……」

 下手したら訓練より疲れたかも、と彼女は愚痴を漏らした。やることが多く切羽詰まっていたためか、気疲れしたせいか、確かにいつもより若干疲れていそうだった。しかし……。

「似合ってるね、ドレス」

「ああ、ありがとうね」

 軽く返された。彼女の雰囲気によく合うピンクのフリルが沢山着いた華やかなドレスだ。髪は綺麗に纏めてリボンの髪飾りを付けている。

「スカートふわふわしてるね」

「感想が雑だね……。フィッシュテールって言うんだよ」

「疎くて」

「でしょうね……まあジンはまだマシだよ」

「え?」

「さっきまだ着替えてないのかってルカを着替えさせたんだけど……まぁーあなたと同じぐらいには疎くて。そっちで疲れたんだよ……あ、来た。ルカ!」

 入口の方向からやってきたルカは、水色の品のいいマーメイドドレスを着ていた。背が低い彼女だが、それが目立たないスッキリとしたラインの服だ。短めの髪もアレンジしてあり、とても……綺麗に思えた。ルカは口を開いた。顔もうっすらとメイクをしているようで、もともと作り物のように整った顔立ちをさらに華やかにしていた。

「……ありがとう、リサ」

「いえいえ。やっぱりこのドレス似合ってるよ。可愛い。ね、ジン」

「え? ああ……」

リサに同意を求められたが、咄嗟に言葉が出てこず、少し詰まったが、きちんと思ったことを言えた。

「……うん。とても綺麗だね」

「当然! 私がセットしたもんねー、ルカ……ルカ?」

 ルカは硬直していた。心なしか少し顔が赤い気がする。ただどうやらそれは気のせいじゃなかったようで、リサが焦ったように話しかけた。

「どうしたの?! 体調悪い? あ、それともやっぱりヒール高かった……?」

「……いや。大丈夫。驚いただけだ」

 何にだろう。俺とリサが顔を見合せていると、後ろからマリンが話しかけてきた。マリンは赤いミニドレスを着ていて、可愛らしく華やかな印象だ。その横にいるタイガの臙脂色が調和していた。

「先輩たち……服似合いますね」

「えへ、ありがとう。私のセットなのよ」

 リサが照れたように言う。が、マリンはルカにキラキラした瞳で話しかけた。

「特にルカさん! 最高です! 女神ですか?!」

「え、いや、ありがとう……」

「落ち着いてマリン。ジンに何か用あるって言ってなかった?」

 タイガがすこし呆れた様子でマリンにそう言った。俺に?そう思っていると、おずおずとマリンが口を開く。

「えぇ……と、なんというか……」

「どうしたの? ジンが何かした? 殴ろうか?」

 リサがなぜか辛辣だ。慌ててマリンが否定する。

「あ、いやそういうんじゃなくて……もし良かったら、ダンスのとき踊ってくれないかな……って」

「え」

 俺、リサ、ルカの声が重なる。俺はちょっと面食らったけれど、とりあえず頷いた。

「……いいけど……?」

「ありがとうございます! では!」

そう言うとタイガを引っ張ってどこかに行ってしまった。「タイガ先輩……、あんな人いるのに……!」「だってマリン話したがってたでしょ。まさか__」……よく聞こえないが。

リサはにこにこと笑って俺に話しかける。……というより意味深な笑顔……にやにやに近いものだと思うが。俺はその表情の色が分からず困惑する。

「……何?」

「いやぁ、鈍感だねぇあんたも」

「そういうんじゃないでしょ。俺ぐらいしかいなかったんでしょ誘えるの」

「そうじゃなくてー……ってルカ?」

 ルカはどこかに行こうとしていた。後ろを向いたまま彼女は言った。

「……ルイ先輩に挨拶に行くから……」

 そう言うと、そのまま行ってしまった。俺たちは顔を見合わせる。失言でもしたのだろうか。とにかくよく分からないけど、後で聞いてみようと思った。


 パーティが始まって暫くして、俺とリサはルイ先輩を見つけた。あっと二人で駆け寄る。

「ルイ先輩!」

 彼はほかの友人たちと話していたようだったが、すぐに離れてくれた。紺色の燕尾服が良く似合う。そして友人がいたことにも失礼な話だが驚く。マリンの件も然りだが、なにかとこの選抜隊は隊の外で友人ができる機会が少ないというのは肌で感じていた。

「ジン、リサ」

「卒業おめでとうございます!」

 リサが明るく言うと、ルイ先輩はニッコリ微笑んだ。

「ありがとう、次は君たちだ。……任せたよ」

 俺たちが「はい」と返事をすると、ルイ先輩はまた微笑んだ。

「……アリアも来れたら良かったんだけどな。まだ寝てるんだよ。寝坊しすぎだ」

 ルイ先輩は少し寂しさの滲む声色で言った。……まだ目を覚ましていないと言う事実は、俺たちの中でかなり見て見ぬふりをされるようなことになっていた。触れてはいけないような気がしていた。

「……本当に。また……アリア先輩に会いたいです、私」

 リサが呟く。静かな空気が一瞬流れて、ルイ先輩が口を開く。

「じゃあ、俺はそろそろみんなのとこに行くね」

このままだと言ってしまう。慌てた俺はルイ先輩に言いそびれていた事を言った。

「あの、俺……ルイ先輩のこと、本当に尊敬してます。強くて、いつも穏やかで……。俺も先輩みたいになりたいです!」

 ルイ先輩は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしたが、その後すぐ笑いだした。何かおかしいことを言ってしまったか、と俺が慌てていると、ルイ先輩がフォローした。

「ごめんね。あまりにも……かなわないなって」

「?」

「ジン。君の強みはその真っ直ぐな心だ。大丈夫だよ。君なら……俺なんかよりずっと、もっと高くまで行ける。そして……世界を変える、平和にすることが出来ると思うんだ」

「……! ありがとうございます!」

「俺はもうちょっとほかのとこから見てるよ。いつでも連絡してよ。……じゃ」

去っていく後ろ姿に俺は叫ぶようにして言葉を伝えた。

「本当に! お世話になりました!」

ルイ先輩はひらひらと手を振って、仲間の方に戻っていってしまった。

リサがはぁ、とため息をつく。

「先輩たちの卒業なんて……。寂しくなるね」

「ってかいい先輩じゃねぇか。ルイって奴」

ハコまでそんなことを言っている。俺は頷いて返した。

「……ああ。ちょっと外出てくる」

「え? な、何で?」

 リサは困惑した様子だ。

「警備代わってくる。……なんだか、何もしてないの落ち着かない」

「ええ……? あ、ちょっと待ってよ、私も行く!」

 リサは困惑した様子だったが、俺が歩き出すと慌ただしく着いてきた。


「湊」

 重い扉から外に出ると、そこには湊が直立していた。えっと俺とリサを見比べる。

「ジン! リサ!? なんでここに」

「俺、代わるよ。なんかしてないと落ち着かない」

 俺が湊にそう言うと、ええ、いいよと彼は首を全力で横に振った。

「申し訳ないし、そんなキツくないから大丈夫だよ」

「いや、代わる」

「じゃあ私も桜ちゃんとかと代わろっかなぁ、旭くんと桜ちゃん何処にいる?」

「えーっと、中庭の方に……」

 今湊がいるのは正門で、ホールを取り囲むようにしてぐるっと庭が広がっている。そこのことを言っているのだろう。リサが動こうとした、その時だった。

 俺たちは唐突に声をかけられた。

「やっほー。後輩たち。元気してた?」

 予期せぬ登場に俺たち三人の体は固まった。

 そこにいたのは、アリア……ではなかった。スーツ姿に身を包んで、にこにこと胡散臭く手を振っているユーゴだった。本当に予期せぬ登場……それも今彼は作戦本部長という立場だ。それなのに……。

「何故あなたがここに?」

 俺が聞くと、ユーゴはにっこりとした顔を崩さず答える。

「もーう、そんな怖い顔しないでよ。俺はただ旧友たちのところに来ただけなのに」

「……招待などは受けていますか」

 湊が尋ねると、いやいや、とユーゴが首を振る。

「俺はここの生徒……今の三年の同級生だよ。入れるでしょ」

「入れません」

「なんでー」

「そういう……規則なので」

 湊があくまでもそう言うと、ふうんとユーゴは一瞬鋭い目付きをした。が、すっと元の笑顔に戻って、リサににこやかに話しかける。

「あ、リサちゃん……だっけ。久しぶり。ドレス似合ってて可愛いね」

「えっ……あ、はあ……」

 明らかに顔が引き攣っている。うまく笑顔を取り繕えていない。彼女はかなりユーゴが苦手なようだった。俺は助け舟に入ろうと思ったが、二人の間にすっと湊が割り込んだ。ユーゴはまた鋭い視線を彼に向ける。

「……何。俺今リサちゃんに話しかけてるんだけど」

 それもそうだ。湊は若干不機嫌なのが分かる顔で答えた。

「……なんとなくです」

「はあ?!」

 俺は湊の度胸に舌を巻いた。一応立場上は軍のトップだ。その相手にこれを言えるのはかなり肝が据わっている。湊はリサに小声で伝えた。

「リサ、中戻りなよ。苦手なの分かってるから」

 リサは小さく頷いてそそくさと中に入っていった。はぁーとユーゴがため息をつく。

「まるで騎士様だね」

「……何が言いたいんですか」

「あのね、君がそんな事をしても俺は君のことを『よく知っている』。君の本性も、過去もね」

 湊は目を見開く。俺は慌てて二人の話に割り込んだ。……記憶を湊が思い出しでもしたらことだ。

「ユーゴさん、とにかく許可がないなら今日は帰ってください」

「……んー、それはいいけど……。そうだ。じゃあこうしよう」

 彼はにっこりと笑って指をパチンと鳴らした。

「俺と君が対決をする。勝った方の言うことを聞こう。俺からの条件は『このパーティーに入らせること』それと『さっきの子を引き抜くこと』だ」

 さっきの子……リサのことか。引き抜く?俺が疑問に思っていると、ユーゴは笑みを崩さずに説明を加えた。

「あの子のAB量は明らかに特異だ。体質も含め、こちらで調べさせて頂きたい。AB量の抑制、未熟なところはあるけれど明らかに恵まれている体質だ。……あの子を本部まで引き渡してもらおう」

 俺が驚くと、湊が目つきをさらに鋭くして追及した。

「……本人は嫌がるはずです。こんな勝負で彼女をどうこうするのはフェアじゃないでしょう」

「そうかもね。でもそうするしかないんだ。忘れたかな? 僕は、軍のトップだ」

 強引にそうしないだけ感謝しろという事だろう。脅しに近い。湊は唇を噛んだ。

「大丈夫。君からの条件も呑むよ、ジンくん。言ってごらん」

「……『今日はここに入らないこと』以外に俺からも二つだ」

「ジン。こんな勝負受けるな。リサはきっとルカたちを呼びに行っている。大人しくルカたちが来るのを待って……」

 湊が制止しようとするが、俺は振り切って続ける。

「『リサも含め、選抜隊にこれ以上不用意に近づかないこと』それから『実戦形式の任務に戻すこと』だ」

「……なるほどね。不満は出ると思っていたけど……そんなに不満かい? むしろ君たちは安全なままでいられるのに。少なくともアリアみたいなことにはならない」

 未だに目を覚まさないことを揶揄しているのだ。俺は不快感を隠して答える。

「俺たちだけが安全なままでいても何も良いとは思えないな」

「……ふうん。まぁいいけど。それが君の出す条件ね。分かった、呑むよ」

 そう言うと、彼は手から剣を取り出した。一体どういう技術だ、と驚いていると、ユーゴは笑う。

「テレポートの応用だよ。応用さえすればなんでも出来る」

 そう言いながら彼はふわりと宙に浮いた。俺が怪訝な顔をしていると、彼は言う。

「早くおいでよ。下でやるのも忍びないでしょ。……『こっちで』戦おう」

 俺は彼を睨みつけて、飛翔ABを使おうとする。と、湊が俺の腕を掴んだ。

「ダメだ。挑発に乗るな。危ない」

「いいのか? 不戦敗だぞ」

 上から煽るような声が降ってくる。湊の言いたいことは分かっている、けれど。

「……大丈夫だ。俺が全部取り除いてくる」

「あっ……ジン!」

 俺は彼の手を振り切って、少し暗くなりつつ空と、余裕綽々のユーゴを睨みつけながら空に上がった。飛翔ABの使えない湊は、下で俺の名前を呼んでいた。


うららです。

久々のバトルシーン。わくわく。

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