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SPECIA  作者: うらら
4章 遥々狐たち
13/25

episode4-2

「……まず互いに名を名乗ろう。私はルカだ。特殊学校の選抜隊の隊長をしている」

「私はリサです!」

 ルカがそう言ったのにリサが乗っかって言った。俺も慌てて名乗る。

「俺はジンです」

「俺はハコだよー」

 ハコも聞こえていないのに自己紹介をしている。案の定それには触れずに女性の狐面が話を始める。

「そうですね、私は……」

「……その前にその狐面を外してくれないか。不気味でしかたない」

 ルカが仏頂面で言うと、「ああ。失礼しました」と女が言う。三人とも面を外した。

 女は色白で儚げな空気を纏った、上品な顔立ちをしていた。

「私は桜です。ええと……私は十七で、SU地区の王の娘……王女です」

「……王女……」とリサが驚いたようにつぶやく。WI地区には王はいない。政治は民主制だという話はいつかルイ先輩あたりに聞いていたから、驚く。王族がこんなところに……?

 俺と戦っていた背の高い男は、端正な顔立ちをしていた。と、あることに気がつく。彼の目の色が、左右で違っていたのだ。右が黄色で、左が青。珍しい容貌に少し驚いていると、彼が口を開いた。

「僕は湊です。十八歳、武家出身で、えーと……桜と、こっちの旭とは幼馴染です」

「俺の紹介を奪うなよ」

 もう一人の旭と呼ばれた男が若干呆れたように言った。ごめん、と湊が笑う。旭は涼し気な目元が印象的で、表情も相まって落ち着いた雰囲気を醸し出していた。

「俺は旭。俺も十七です。さっきも言ってたけど湊と桜の幼馴染です。俺はどちらかと言うと芸の一家の育ちだな」

 一通り終わったところで、桜が口を開く。

「……話を本題に。私たち……SU地区はこちらの中心都市やWI地区ほどではないですが、それなりに文化が形成され、平和に暮らしていたのですが……先日、その平和を保っていると言ってもいい私の父が何者かに殺されたのです」

 湊が沈痛な面持ちで俯く。幼なじみと言っていたし、王とも仲が良かったのだろうか。旭も心なしか暗い表情だった。

「……私たちからすると、SP地区の話……内乱があったばかりですので、どうしても誅殺を疑ってしまうのです。そこで問題が浮き彫りになりました。……圧倒的な戦力不足。現状私、湊、旭でどうにか妖……こちらでは侵略者でしたか。それを基本的に三人で解決してきました」

 ルカが口を挟む。

「ちょっと待ってくれ、三人でか? 確かにお前たちの実力はさっき見て分かったし、相当なものだろう。だが侵略者を三人でどうこうするなんて」

「勿論他の方のバックアップもあります。戦闘区域外からの援護射撃などもしてもらってますし。それに私の異の……ABは大半の侵略者にちょうどいいんです」

「とは言ってもだなぁ……」

 ルカはため息をつくが、強い否定はしなかった。つまり……「この人達なら有り得る」ということだ。桜が話を続ける。

「ただ、それが侵略者だけではなく人間も、となったら話は別です。私たちと同じようにスペシアを持つ人間もいる訳ですから、生半可な戦闘力では両方となると、太刀打ちできません。それも含め、私たち、ひいては他の人に伝えられるような戦術、戦法の伝授をお願いしたいのです」

「……待て、今SU地区はどうなっているんだ? お前がいなかったら誰が指揮を……」

 桜がにっこりとして答えた。

「弟です。男がお父様……父の代わりをした方が民衆の反発は少なくて済みます」

「じゃあ戦力はどうなっている? お前たちが主戦力なら、居なければ侵略者や内乱の危機が迫るのでは」

「弟が任せて、と言っていたので。彼のことは信頼しているんですよ、私も民衆も」

「……まぁ私が首を突っ込むことではないかもしれないが……本当にSU地区は大丈夫なのか? この状態でSU地区も壊滅しましたー、とかなったら取り返しがつかないぞ!」

「大丈夫です」

 桜の圧が強くなる。眼光が鋭く、俺たちは慄いた。桜は繰り返す。「……大丈夫です」

 ルカが黙り込むと、桜が続けた。

「……それに、不安定な情勢です。地区同士の繋がりも意識した方が良いのではないでしょうか。今までは不干渉で通っていましたが、その結果が二つの地区の壊滅と半壊。……どうですか、ここらで一つ、手を組みませんか」

 桜から差し出された握手に、ルカはため息で応じた。

「……とりあえず私たちの学校に付いてこい。仲間の意思も確認しなきゃならないから。……あの、ユーゴさん」

「ん?」

「……学園長に話は」

「ああ、『通る』よ」

 話を通せるという自信があるのだろうか、そんな言い回しをした。今回の件もユーゴの差し金なのだろう。

「……ルイさんの反応の理由が分かるな……」

 ルカが嫌味混じりに言うと、「お褒めの言葉をありがとう」とこれまた皮肉たっぷりで帰ってきた。


「……で、この人達を連れ帰ってきたと……」

「……はい」

「ルカはユーゴに乗せられるとは思っていたけど……また突飛だね」

 ルイが苦笑して眉間を揉む。マリンは「優しいルカさんはやっぱり素敵ですよ!」などと言っているが、他のメンバーは苦い顔だ。

 連れられてきた三人は少し居心地悪そうに応接室のソファに座っていた。タイガが言う。

「……こんな人数面倒みる余裕もないんじゃないか? ただでさえジンとリサが入ったばかりなんだし、断ることもできるんじゃ……」

「いい加減にしてくれ」

 リヒトが言った。強い口調に全員がそちらを見た。彼の顔は今まで見た事がないほど険しかった。

「ルカが次期隊長になってからめちゃくちゃだ。変な力を暴走させた輩とか、侵入騒ぎを起こした奴とか……そんなやつ即刻何かしらで処罰を与えこそすれ、選抜隊に入れるなんて言語道断だろ。挙句の果てには他の地区の奴だァ? 俺は断固反対だよ」

「……リヒト!」

 ルイ先輩が制止しようとするけれど、彼の言葉は止まらない。

「慈善団体じゃねぇんだ。俺達には使命も責任もある。半端な奴らをどうこうしてるほど暇じゃないのは分かってるだろ? ルカ」

「……ええ」

 ルカが刺された顔をして俯く。俺はいても立ってもいられなくなって口を挟んだ。

「俺のことはなんて言われても良いけど、リサは入るべき人材だろ。それにこの人達だって何も自分の利益だけ考えてるわけじゃないし、何より強い。それを鑑みても__」

「うるさい。お前は黙ってろよ、一人じゃなんの力もない雑魚が。そんなに言うなら今すぐ辞め__」

「おいリヒト!」

 今度はタイガも強い声でリヒトを制した。

 一人じゃなんの力もない雑魚……。皆にもそう思われていたのだろうか。迷惑をかけていた? ハコがいないと、確かに、俺は……。

 アリア先輩がリヒトを諭すように言った。

「あなたの言っていることが全部間違ってるとは思わないわ。だけど、ルカもきちんと考えた上で行動しているし、ジンもリサも今特訓して努力して、この間も頑張っていたでしょう? ……良いチームを作るには、コミュニケーションも大切なの。言い方が、なんというかあまりにも……粗雑過ぎると思うよ」

 今度はリヒトが顔を赤くした。つぶやくように言う。

「……ちょっと頭冷やしてきます」

 そう言って出ていった。三人はいたたまれない顔をしている。それに気がついたのか、ルイ先輩が言った。

「俺は賛成だよ。皆の話を聞いていると実力もあるようだ。SU地区との関係を築いて置くことは、今後のWI地区にとって悪い事だとは到底思えない」

 アリア先輩が続ける。

「……とは言っても私は反対かなぁ。この人達が信用出来るっていう確固たる証拠もないじゃないの。裏切られたりした時が怖いわ」

マリンが反論する。

「そんなことしたとして、SU地区にとってなんのメリットもないですし、それはないんじゃ……。私は賛成ですよ。こっちにいい影響もあるじゃないですか!」

 タイガが言った。

「それはそうだが……現実問題、時間、金銭のコスト面の心配もある。今は侵略者とかについてのことをするべきじゃない? その後、落ち着いてからでもできるだろうし」

 ルカも自分の意見を述べる。すこしいつもよりは自信がなさげだが。

「……確かにリヒトの言う通りなところもあると思う。だけど私は、放っておいちゃダメだと思う。戦力不足は地区にとって一大事だから、それを救えるのなら……協力すべきだと思う」

 しばらくその話を聞いていたのか、旭が言う。

「金銭的には迷惑をかけるようなことはしません。俺達もある程度のお金は地区から出してもらいました。時間的コストについては……たしかにかかってしまうかもしれませんが、無駄にはしません。だから、お願いしたいんです」

 その場にいた全員が黙り込む。外が暗くなってきていた。それを見てリサが言う。

「と、とりあえず今日は泊めませんか?! もう夜ですし」

「……そうだな。どこか部屋は……」

 ルカが聞くも、全員首を横に振った。少なくとも選抜隊が使える棟にそのような施設はないようだった。あっ、と俺は思い出して言う。

「……そういえば俺の部屋一人部屋ですけど……でも二人は泊められるかどうか」

 あ、私も一人部屋だ、とリサがつぶやいた。意外と一人部屋もあるのかもしれない。というか確かに一人部屋じゃないと寮を深夜にバレないよう抜け出すなんてできないだろう、と俺は密かに納得する。ただ、と懸念を口にした。

「ベッドでも、残り一個しかないな……」

「僕床で大丈夫です! ……けど本当にいいんですか?」

 湊が申し訳なさそうに言った。リサが返す。

「応接室で寝れないこともないけど、悪夢見るしやめといた方がいいですよ」

 湊は苦笑した。侵入騒ぎのことだろう。リサが続けた。

「甘えられるとこは甘えといた方がいいですよ。長旅で疲れてるだろうし」

「……ってかそもそも三人ともどうやって来たの?」とタイガ。

「飛翔ABを使って、二週間ぐらいかけて……」と桜が言った。そりゃあ流石に休めるところを貸すべきだな、とタイガは笑った。

「じゃあとりあえず……リサとジンは三人を案内してくれ。私たちはリヒトも交えてもう少し話す。……二人がいたら話しづらいだろうから、リヒトも」

 ルカにそう言われて俺たちは大人しく頷く。俺もあまり冷静に話せる気はしなかったからちょうど良かった。俺たちは応接室を出て、寮に向かって歩き出した。


「……さっきリヒトに言われたこと、ドキッとしちゃったよ」と行く途中で静かにリサが言った。ほかの三人には聞こえないぐらいの声量で。

「……?」

「私全然活躍できなかったの。この間の初任務。ちょっと見えたけど、ジンはすごかったね」

「まぁ、初めてだし……」

「でも……私それじゃダメだってわかった。私これから皆よりもっと頑張らなきゃなぁ……」

 ぼそっと呟いた。俺が何か言う前に、彼女は後ろを歩いていた三人に話しかけた。

「皆さんはスペシア使えるんですか?」

「スペシア……。ああ、特異能のこと。私と旭は使えますよ」

 と桜。湊が照れたように笑う。

「僕は恥ずかしながらそもそもABが使えないんです。生まれつきのものですけどね。だから剣技だけで……」

「えっ?」

 リサが驚いたように目を見開く。俺は対照的に納得していた。だからあの戦闘になったとき、一度もABを使わなかったのだ、と。リサは何かボソボソ言っている。

「……いや、まあ、そうか……でも……。……あ、ごめんなさいなんでもないです!」

「というか同い年だよね? 敬語じゃなくていいよ」

 と湊がニコニコと笑う。どうやらなかなか社交的なようだ。え、とすこし固まるリサを見て、旭が呆れ顔で突っ込む。

「無理強いすんなよ……。大体あっちからすると俺らは余所者だ。図々しいかもしれないだろ」

「あ、いや気にしない……で?」

 俺が言うと、旭は心配そうに「そうか?」と言う。なんとなく、三人ともいい人そうで一人安心した。


 部屋に二人を入れる前に、俺は思い出して、小箱を机の引き出しにしまった。ハコが聞く。

「なんで片付けたんだ?」

「なにかの拍子に二人が触っても良くないかな、と……。死ぬかもだし」

「確かにな……あいつらにも俺の姿、見えるようにしておくか?」

「……そうだね。堂々とハコと話せないのは損失かも」

 というわけで二人にハコを見せると、若干ビビられた後なんとなく受け入れられた。お風呂や食事をすませて、(湊は固辞したから床で)ベッドに入った。

 だが眠れなかった。リヒトや、ユーゴに言われたこと。それと、リサの言っていたこと。……実力のなさを、改めて現実のものとして突きつけられたような気がした。俺の中にあった甘さも、弱さも、見透かされたような気がした。

 旭は寝息を立てていた。湊は床で寝ていたが、やはり寝心地が悪いのかすこし寝苦しそうだった。

 その様子を慣れないような、不思議な気持ちで眺めていたら落ち着いて、眠りに落ちた。自分が思っていたより、疲れていたようだった。

うららです。

なんか書いちゃった。楽しいですね。

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