表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/34

22

「奥様!大変です!」


犬のように駆けてきたゼムリャが扉を勢いよく開けた。外は大雪で、部屋の中さえも暖炉があろうと寒いと言うのに。元気そうなその手に握られている封筒を渡されて開けると、内容に唖然としてしまう。


「グライフ王国で正式に、王子が私に謁見したいですって!?」


「封筒からしてとっても立派な人からのだって思いましたが、まさか奥様が翻訳大賞を取るなんて」


ゼムリャも隣から手紙を覗き込んで、嬉しそうに拍手した。寒空が広がる外の景色に滅入りかけていたけれど、もはや手はわなわなと震えていた。グライフ王国から来た一通の手紙は、私が訳した本が正式に国に認められるという報告。


今まで翻訳の仕事というのは男性がするものだった。そもそも言語学という学問は外交のために作られた部門であり、女性は男性に従属していることが礼儀とされる人間社会において、そういう教育は女には無駄である。という偏見がいまだに残っている。それが、私が女性で初めての賞を受賞することによって、大きく変わろうとしている。


「やったわ……これは、これは快挙よ!!」


興奮した私はそのまま廊下を抜け出すと、すぐに支度をする。


「えと…シンシア様?」


「ゼムリャ、早く準備するわよ。国が私を呼んでるの!」


冬の始まりは、心躍る授賞式からだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ