高校デビューは大失敗に終わったけど...?
はじめまして、「弓林」と書いて、「キュウリン」と読みます。
どうぞよろしくお願いいたします...!
さて、
拙い文章かもしれませんが、
ぜひ読んで頂ければと思います。
一話2〜3千文字で投稿していきます。
よろしくお願いいたします...!
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第一章『何もかもが初めての日に出会う』
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サイコメトリーとは、人の記憶が読める能力らしい。
でも、実際はそんな便利なものではない。
現に私は出来ることなら、この能力には消えて欲しいと思ってる。
世の中、ヒーローモノやら、異能モノ、異世界転生などで盛り上がっているが、何がいいのかさっぱりわからない。
わからないからこそ、使わないようにしている。
だって、まず能力には制限があるから。
私の能力は、あくまで「その人が見聞きした映像記録」を「そのまま視る」事しかできない。当時どんな感情で、視野に入っていない部分がどうなっていたかまでは分からない。
ーーーただ、他者の人生という映画を傍観できるだけ。
それも、ポップコーンとコーラを添えて、ムシャムシャ食べながら観る気軽さで。
そして、発動にだって条件はある。
相手に触れて、見たい記憶を探すんだ。
人の記憶世界は、まるで海のような感じ。真っ青で、その中を私は歩いて、記憶の泡=『記泡』に映る映像から見極め、選別して確認する。
何故、見極めた選抜が必要かって...関係ない記憶は極力見たくないから。
だって、プライベートなことでしょ?
好奇心は自分を殺すって、有名な言葉じゃないかな?
そう思いながら、今いるこの教室で、
私は見事にーーーー「ぼっち」を極めていた。
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「(...オワった)」
登校初日というのは、なかなか大切なもの。
そこで8割型、今後の人間関係が決まると言っても過言じゃない。
少しシャイで、大人しい方の人間だと自負してる私は、思い切って前髪を「オン眉」にし、THE元気っ子代表キャラを狙ったが......
「(自分から話しかけに行かないなら、意味なくない??)」
普通に誰も話しかけてくれなかった。誰もだ。
こう見えて、私はハーフだ。
オーストリア人の父と日本人の母の間に生まれ、髪は黒いが目は薄いグレーが混じった青色。
そこそこ、モテそうな要素は多いけど、なにぶん口数が少ない。
しかも、2039年の今、流行ってもいない「オン眉」をしてるのだから、相乗効果なんて言葉じゃ表せないくらい、マイナス値が加速してる。
ここで、明るそうな女の子達の集団が声をかけてきた。
女子A「えぇ!目青くない!?カラコン...?」
女子B「校則セーフだったっけ...?大丈夫?名前教えてよ!」
女子C「初日からめっちゃ飛ばすねw」
カラコンの件はよくある。これで私が金髪だったなら、ハーフと聞かれていただろうけど、あいにくとても綺麗な黒髪だ。
私「あっ、私ハーフなんだ...。名前は、朝日 美景...よろしくね...?」
悔しいことに、疑問もないのに疑問系のような語尾になってしまった。
女子A「あっ、よろしくー!ハーフなんだー!」
女子C「通りで!外国人っぽいと思ったんだよねー!どことどこのハーフなの!?」
ここまではお決まりのパターンで食い付かれる。
問題はこの後だ。ハーフのくだりが消えたら、何も話すことがない。
私には、趣味らしい趣味もあまり無く、部活でやってた吹奏楽部は、この高校には無い。
少しの間静寂が流れ、取り巻き達は「あはは...」と言いながら、言い放ったのがーー「前髪、短いね!」だった。
つまり、容姿以外で話題になりそうな箇所は、陽キャですら見つけられなかったというわけだ。最悪じゃないか。
私「あっ、張り切って切りすぎちゃったんだよね...ゴメン...」
女子B「えっ笑 何で謝るの?笑」
女子C「あはは...でも、ハーフって明るい子多いイメージだったけど、静かなんだね朝日さんは!」
苗字呼びだ、これはもうグループへの昇格は厳しい。
ーーーカーンコーンカーンコーン。
救いのチャイム過ぎた。けど、ホームルーム前の交流としては、何とも情けない結果で終わった。
そして、この後は事務的な授業が続き、登校初日にしてSNSすら交換されなかった。ハーフという絶好の要素すら活かせない自分に、心で滝のような涙を流しておいた。
こうして、初日はトボトボとした足取りで校門を出て、帰路に着いた。もちろん、1人でだ。
しかし、せっかくの高校生デビューなのだから、中学ではなかなかさせて貰えなかった、『寄り道』はしたい。
地図アプリを開き、近場にあるカフェを検索したら、1件...窓からの景色が綺麗な、坂の上にあるカフェを見つけた。
メンタルブレイク中ではあるけれど、そこは頑張りどころ。
帰宅ルート半ばから背を向けUターンし、坂道の入り口まで行く。
重い足どりに対して、初めての寄り道ということで、気持ちは軽やかだった。
私「はぁ...はぁ.......キッツ.....っ」
中々勾配のある坂だったが、何とか登り切った。肺が痛い中、息を整え、顔を上げると、小さなカフェがポツンと一軒だけ、左手にあった。右手には林があり、坂は更に上へ続いていた。カフェの周りは整備されているのか、芝生で囲まれていて、見晴らしが良かった。
私「(こんなに見晴らしが良くて、周りに腰ほどの草木しかなくて、住家も一個下のゾーンにあるとなると...土地代高そう)」
生々しすぎる感想と共に、若者が好きな映え的には最高にいいカフェだとも思った。なのに、列どころか店内はカランとしてる。入り口に置かれたハットを被った白いウサギは、頑張れば不思議な国のアリスに出てくるキャラクターに見えなくもない。
コンセプトカフェだろうか?
恐る恐る取っ手に手をかけ、扉を押したーーー。
カランッ カランーーッ
カウンターの奥にいた男性と目が合う。
(どこかで会ったことがあるような.....??)
思考を巡らせる間もなく、男性が発した。
男性「ーーッ!
ようこそ、カフェ『yours’(ユアーズ)』へ。」
優しいを具現化したなら、このような人になるのだろうと思わせるくらい、柔和で無邪気な笑顔。
センターで分けた前髪が片方は垂れ下がり、もう片方は耳にかけ、スッと切れ長の目がこちらを見ている。それはもうとてもスマートイケメンだ。おまけに、口元にホクロまであるときた。要素としては完璧。
だけど....、年齢的にも30後半か手前はありそうな、適度なホリの深さとシワがある。
これは...ーーーー
美景「これは...イケおじだ......っ!!」
男「えっ....イ...イケおじ???」
これが私と彼の初対面。
何もかもが初めてだった日に、起きたこの出会いが、
私の人生を想いもよらぬ方向へと動かすーー。
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第一章『何もかもが初めての日に出会う』ーーーーfin
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次回、第二章『アンティークショップカフェ《yours’》』