表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

文化祭

 文化祭、重要なイベント。俺の大学と陽樹の大学は同じような時期に文化祭がある。どちらも大忙しだ。


ある程度の作業が終わって一息ついていたら、杉山に声をかけられた。

 「なぁ、藤花。カフェやろうと思うんだけど、試飲して。」

 「俺は、実験台じゃない。」

 「わかってるって。危険なものは入れてないから。家帰ってから飲んで。」

渡されたのは、色がショッキングピンクの液体。明らかに飲んだらまずいとわかる。

 「返す。」

 「困るってお客さん。な?本当に大丈夫だから。親友に劇薬入れるわけ無いだろ。家で飲んで感想聞かしてよ。」

仕方ないか。陽樹と仲介してくれた貸しがある。


陽樹の方も文化祭で大忙しらしい。何やらメイドカフェをやるらしい。

 「なんか僕男だけどメイド服渡されて……。あんまりこういうの着たことないから似合ってるか見てほしい。」

絶対似合うに決まってる。


 「こんな感じだけど。」

可愛すぎる……。予想を遥かに上回ってくる。綺麗な模様をあしらった和服。頭の上に申し訳無さそうに生えている猫耳。赤らめている顔。すべてが絶妙にマッチして完成されている。メイドは彼のために作られたのではないかと思う。反則だろ、破壊力が凄まじい。流石にこれを公にさらすのは恋人として容認できない。

「に、似合ってるよ。す、すごく可愛い。で、でもちょ、ちょっとハレンチすぎるかな。俺はやめたほうがいいと思う。」

動揺を隠しきれない。

「うん、わかった。明日言ってみるよ。」

「あっ、でも俺の前だけでは見せてほしい。」

欲求が溢れてしまった。

「欲張りさんだな〜。」

そう笑って言って陽樹は振り返ると、後ろにしっぽがピンとたっていた。可愛すぎん?


 そういえば、俺も杉山から飲み物をもらっていた。何も入れてないって言ってたし一様大丈夫だろう。死にはしない。ほぼ一気飲みした。やっぱり大丈夫か、と思っていたら頭がだんだんぼんやりして、体が熱くなってきた。それになんだか陽樹に抱きつきたくなってきた。


「着替えてきた。て、大丈夫?顔赤いよ。風邪引いた?」

「へ?もうわかんない。こっち来て。なんだか体が熱くて溶けちゃいそう。」

俺は何も考えられずに陽樹にハグ、キスをした。その後は覚えていない。朝起きたらまた全裸そして隣に陽樹。もしかしてまたやっちゃった?

「おはよう。陽樹。」

「おはよう。諒太。昨日何かあったの?熱は治まった?すごく熱かったよ。」

ぜんぜん記憶にないんだが。


杉山に問い詰める。

「おい、あの飲み物はなんだ!?飲んだら体がおかしくなったじゃないか。」

「でも伊月とお楽しみだったんじゃないか?」

「……なんでそれがわかるんだよ。」

「実は、藤花くんが飲んだのは超即効性の媚薬でした〜。薬学部に入っていて良かったと思った瞬間やな。」

恥ずかしさに耐えられそうになかった。俺は杉山に殴りかかろうとした。

「落ち着けって。お前は気持ちよくなった。それで俺は結果がわかった。ウィンウィンだぞ。」

「俺は十分落ち着いてる。ウィンウィンだろうが俺を騙したことに変わりはない。」

杉山は笑う。

「首のキスマーク見えてるぞ。」

俺は慌てて首を隠す。


学園祭当日。俺は学園祭実行委員のため午前中は校舎内を点検しに回っている。午後からは自由だ。


陽樹とは校門前で待ち合わせしている。

「ごめん今シフト終わった。」

「お疲れ様。じゃあ、一緒に回ろう。」

学園祭デート。こんなことが実現するとは夢にも思っていなかった。

一緒にゲームをして、展示を見て、屋台で食べ物を買う。


一人で待っていると、

「ねぇ、そこのお兄さん。一緒に回らない?」

女子大学生が話しかけてきた。髪は茶髪できれいにカールしている。

「ごめん。一緒に回っている人がいるし、俺と回ってもつまらないよ。」

「いいじゃん。その子と一緒に回りたい!」

「いや、それはちょっと……。」

対応に困っていると、

「駄目って言ってるじゃん。ね、行こ。」

陽樹がそう言って、結構強めに俺を引っ張った。

「諒太はその、イケメンなんだからもうちょっと自覚持ってよ。」

怒られているのか褒められているのかわからない。


ああ、尽きることのない幸せをを感じる。ああ、こんな時間が続けばいいのに。

「藤花先輩すいません。思ってたより来客人数が多くて色々と手一杯で。今暇でしたら、手伝ってくれませんか?」

後輩が俺に声をかけた。確かに午前中も結構な人だったけど、午後ならなおさらか。手伝ってあげたいんだが、陽樹との約束があるし。

「僕の事はほっといてもいいから。手伝ってあげて。」

陽樹は耳元で囁いた。仕方ないか。陽樹をおいていくのはなんだか嫌だったが、大学のためだし。

「いいよ。手伝う。」

後輩は向日葵のような笑顔で感謝した。

「ごめん、陽樹。」

「いいよ。」

陽樹は手を振りながら見送ってくれた。


「ちなみに藤花先輩。さっきの人って誰ですか?めちゃくちゃ親密そうでしたけど。」

「秘密だよ。」


結局、仕事が片付いたのは学園祭終了間近だった。

「お疲れ様でした。本当に申し訳なかったです。」

「いやいや、大丈夫だよ。来年は頼られる側になるようにね。おつかれ。」

さて急いで陽樹を探さなくては。


「お疲れ様。」

陽樹は校門前で待っていてくれた。

「陽樹!本当にごめん。ほとんど一緒に回れなくて。」

「大丈夫だよ。大学で頑張ってたらそれで満足だよ。あと必死に頑張ってる姿……かっこよかった。」

疲れがすべて吹き飛んだ。回復力が半端ない。


帰ってくると、俺はすぐに沈むようにソファで寝てしまった。流石に陽樹に癒してもらっても身体的な疲れは取れなかった。

 

どれだけ寝ていたのだろうか。深い眠りから覚めると陽樹の膝の上だった。膝枕!

「よく寝たね。」

「ご、ごめん。俺だけ寝ちゃって。」

「良いよ。ご飯もう作ってあるけど。それともこのまま堪能する?」

「……堪能する。」

陽樹の膝枕をもっと味わいたい。その後耳掃除をしてくれた。幸福の一文字。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ