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三角

 俺の大学生活は、ほとんどは講義を受けて、その後、サークルに行くか、図書館に籠もっている。自習も兼ねているが、この大学の図書館は、歴史的な資料も多く、面白くてつい読みふけってしまう。

 驚きの事実なのだが、俺の自殺を止めてくれた彼女が同じ大学だったのだ。あのとき以来、連絡先は交換したが話すこともなく、そのまま過ごしていたから、懐かしい。

 彼女の名は、小原麗奈。俺の近くの高校出身。美人だと思う。体の一部の主張が激しくて、目のやり場に困る。けれど、とても話しやすい。彼女は俺の顔を覚えていて、話しかけてくれた。


「久しぶりだね。元気にしてた? あんまり連絡くれなかったから心配したよ。私も忙しくなっちゃったから連絡できなくてごめん。」

「こちらこそ。でも、君と話してから気分が良くなったから、あんな馬鹿な事なんかやったのを後悔してるよ。」

俺は彼女に命を救われたといっても過言ではない。

「ねえ、この後暇?どこかでご飯食べない?」

陽樹には、適当に食べといてくれと言うか。さすがに女の子の誘いを断るのは、男としてだめだと思う。据え膳食わぬは男の恥。


俺たちは、イタリア料理のお店へ行った。話をきくと、彼女は高校を首席で卒業していたらしい。

「すごく優秀だったんだね。気づかなかったよ。」

「冗談でしょ。賢そうにふるまってたはずなんだけどな。」

「でも、まさか大学まで一緒とは思わなかったよ。」

「有名な教授がいるのよ。その人の講義を受けに来たの。」

「へぇ、俺は図書館が良かったからあの大学にしたんだよ。いつも学校は図書館で選ぶことにしているんだ。本って保存方法が雑だとすぐ傷んじゃう。古い文書だったらなおさら。」

「まともだね。もっとチャラいと思ってた。」

「俺はどんなやつなんだよ。」

彼女はふふっと笑う。女性とこんなに喋ったのはいつぶりだろうか。高校時代は女子から話しかけられることはほとんどなかった。俺から連絡とかで話しかけると、みんなうつむいてうなずくだけだった。今でも理由がわからないけど。


「美味しかったね。」

「そうだね。俺ここに来るの初めてだったからこんなに美味しいお店が近くにあるの知らなかったよ。」

「外食はあんまりしないの?」

「家でご飯つくってくれる人がいるから。」

「あ、そうなんだ……。彼女?」

しまった。恋人がいること言ってなかった。

「まぁ、そんな感じ。」

「今浮気中だね……。」

「はは、そうだね〜。ン!」

突然彼女は俺にキスをした。柔らかい感触彼女の温もりを感じる。優しい。でも駄目だ。俺には陽樹がいる。離そうとした。すると彼女から一歩引いた。

「これが私の気持ちだから……。」

そのまま彼女は去っていった。呆然とした。頭が追いついていない。


 「ただいま。」

 「お帰り。割と遅かったね。」

 「ちょっと話し込んじゃって……。」

流石に陽樹に、キスしました、なんて言ったらもちろん自殺行為。

 「甘い香水の匂いがする……。」

ビクッとした。小原麗奈の香水がうつったのかもしれない。

 「女の子と喋ってたから……。」

 「喋ってるだけじゃ匂いはつかないと思うけど……?唇にもリップの色が残ってるけど……?」

陽樹の目が怖かった。光がない。心臓が踊っていた。どうする?正直に話すべきか?一か八か。

 「実は、高校時代からの女の子の友達と大学で会って一緒にご飯を食べたんだ。その後、突然彼女がキスしてきたんだ!」

 「ふーん……。」

嫌な汗が背中を流れる。嘘はついていない。陽樹は急に俺にもたれかかってきた。

 「僕以外には唇を渡さないで……。」

陽樹はうつむいていたが頬が赤らめいていた。そして

 「次はないから……。」

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